消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095263

作品紹介・あらすじ

弱小私大淘汰のメカニズムを明快に示す
 限界大学――恒常的な定員割れを引き起こし、人材的にも財力的にも大学を経営するだけの能力に欠ける、文字どおり弱くて小規模な弱小私大を、本書ではそう名づけた。
 しばらく横ばいだった18歳人口が再び減少傾向に入る2018年以降、私立大学の定員割れが加速し、経営困難校の公立移管や統合、閉校が相次ぐのは避けられないと見られている。本書は、戦後の教育行政の変遷や生徒を送り出す高校側の事情などを踏まえたうえで、統計データを駆使しながら、弱小私大のさらなる弱体化の背景と、定員割れの実態、そのメカニズムを明らかにしていく。
 18歳人口の再減少が目前に迫るなか、市場主義的な競争原理が導入され、いま「負け組」増加の条件が整いつつある。その結果もし大学が破綻したら、周囲に及ぼす影響は当の学生や教職員だけにとどまらない。本書には、そうした限界大学への道を避けるべく、組織改革や財務健全化に取り組み、成功した事例も紹介されている。教育行政学・教育社会学の蓄積による実証性と、高校・大学教育に長年携わってきた著者の経験が融合し、説得力に富んだ画期的書。オクスフォード大学教授(教育社会学)苅谷剛彦氏推薦!

感想・レビュー・書評

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  • まあ業界人としては想定範囲内で新たな発見等は意外となかった。
    著者は短大を四大化した大学に恨みでもあるのかな、何となく目の敵にしている感が端々に見受けられる。
    確かにこれらが今の大学界(中位層以下)を酷くしたというのは私もそう思うが。

  • 定員割れ私立大学は99年以降急増、08年以降は半分近い。18歳人口半減。学部・学科構成の見直しやキャンパス整備を怠った経営者の限界でもある。

    今は大学多すぎ感がありますが、過去に、莫大な収入源だった時期があったのだと、時代の変遷を思い出しました。

  •  学生の側の視点が、もう少しあれば。

  • 限界大学の中でも「短大」に焦点を当てた稀有な本。しかし、短大に個人的な恨みでもあるのか、かなり厳しい指摘が目立つ。

  • 本書の帯にある弱小私大が淘汰されるメカニズムを統計データを駆使しながら明快に示した画期的書ではない。エッセイであろう。ケースの事例も少なく、分析や根拠の使用も浅い。教授会、理事会の経営について、中立的ではなく、主観的かつ偏った視点で書かれている。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  試練に立たされる弱小私大
    第2章  どのような大学が定員割れしているか
    第3章  混乱の「ゴールデンセブン」とその後
    第4章  短期大学とはなにか
    第5章  短大以上・大学未満
    第6章  新たな大学像
    第7章  弱小私大と高校
    第8章  弱小私大の生き残る条件
    第9章  「限界大学」の明日

    <内容>
    「限界大学」とは、20%以上の定員割れを続けている大学。つまりつぶれそうな大学のことだ。そして著者の分析によると1980年代の第二次ベビーブームの頃に短大が改組したり増設したりしてできた大学で、理事会が親族経営や教授会が短大の頭(短大でしか役に立たない授業や経営)以上には働かない学校のことだ。文科省がようやくテコ入れをしているが、2018年問題で多くが消えていきそうな感じである。いちおう第8章では対応策が書かれているが、理事会や教授会が旧態然としてて改革の意思がなければ消えていくのだろう。
    高校側の教員はその辺を見極めないといけない。

  • 短大から大学になったところの下のほうってどうなってるの、どうなるの、どうするのがわかる本。うーん、こりゃ大変だなあ。先生業の中でもこの辺は結構見えてないところなんじゃないだろうか。
    2018.4再読。なんでかな。もう一度読みたくなった。

  • 定員割れする弱小私立大学の研究。定員割れ大学の多くが短期大学由来であることから短期大学に関する解説が多かった。短期大学由来の私立大学に定員割れが多い理由がよくわかった。
    一方、ベストプラクティスと言える非常にうまく経営されている私立大学の解説もあった。共愛学園前橋国際大学、松本大学、武蔵野大学がそれだ。学者による学術書ではないので読み物として面白かったかな。

  • 少子化・18歳人口の減少に伴う大学全入時代を迎え、大学の淘汰・消滅という事例もちらほら目にするが、これからますます大学の廃校が増えていくようだ。今でも、将来に展望が見えず、消滅予備軍の大学は多くあるということで、本書は、これを限界集落ならぬ限界大学と呼んでいる。
    著者は、各種のデータを基に、これらの限界大学の特色・共通点をあぶり出している。その中には、日本の学制の中で中途半端な位置付け・成り立ちを持つ短期大学の存在や、長期展望を欠き高等教育機関であることの意味を考慮しない理事長・理事会のあり方などが含まれていて、中々興味深い。他方で、外形的には破綻予備軍になりかねないながら、意欲的・積極的な取組みにより一定の成果を上げている大学の事例も紹介されている。
    大学閉鎖が起きたときの最大の被害者は学生であり、これから大学進学を迎える学生やその保護者にも、大学選択の一環として有用な内容であろう。

  • ぜんぶゴールデンセブンのせいだってのが限界大学の本音なんでしょう。もっと速く退場すべき大学がゴールデンセブンというバブルで延命したけど、頑張らなくちゃ消えるよって本でした。真っ当な結論ではある。

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著者プロフィール

1952年 新潟県の農家に生まれる。
1977年 東京学芸大学教育学部卒業。東京都の小学校教員になる。
1983年 月刊『たのしい授業』創刊号(仮説社)で仮説実験授業を知る。同じころ八王子市の書店で偶然見つけた板倉聖宣『未来の科学教育』(国土社,現在は仮説社から刊)は〈人生を変える1冊〉となる。以後30年に渡って小学校で仮説実験授業の実践と普及につとめる。
2013年 退職。東京都の「新人育成教員」の職につき,現在に至る。
 『たのしい授業』誌に授業記録や論文などを多数発表。仮説実験授業研究会会員。

「2015年 『空 見上げて 「新人育成教員」日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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