ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡

  • 白水社
4.10
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本棚登録 : 127
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095614

作品紹介・あらすじ

ピュリツァー賞受賞作!
 ISILの指導者バグダディがカリフを自称し、イスラム国(IS)の「国家」樹立を宣言してから四年。この間、有志連合の空爆を受けるなどして勢力はやや衰えたとはいえ、今もシリア・イラクの各地で激しい攻防が続いている。このISの前身である「イラクのアルカイダ」は2004年、ヨルダン生まれの悪名高いイスラーム主義者ザルカウィによって設立された。
 本書は、ザルカウィとその後継者を中心に、ISが生まれた背景から現在に至るまでを詳細に描いたノンフィクションである。街のチンピラがアルカイダとつながって国際的なテロ組織を主導するようになった背景には何があったのか。イラクのフセイン政権打倒に走った米国失策の誘因とは――。200人を超える関係者らの生々しい証言と精緻な裏づけにより構成され、丁寧な人物描写と複雑にからみ合った相関関係から、組織の構造や事件・事象の全体像を鮮やかに浮かび上がらせる。
 中東取材20年のジャーナリストが独自の人脈を駆使し、スパイ小説さながらの手に汗握る筆致でISの変遷と拡大の背景を描き切った、調査報道の白眉。

感想・レビュー・書評

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  • 2017年ごろにビル・ゲイツが、「この夏読むのにおすすめの本」としてあげていた本で、ピュリッツァー賞も受賞している一冊。その頃から読みたいと思っていたが、やっと読むことができた。イスラム過激派がなぜ生まれたのか、アメリカはイラクで何をしたのかがわかり、当時テロリストとして有名だったザルカヴィの姿もこの本を通じて色々なことがわかる。

    まず、ザルカヴィをテロリストの中で英雄として有名にしてしまったのはアメリカが原因なのだ。当時のブッシュ政権は、9.11の後、イラク政権ととイスラム教過激派とのつながりを疑っており、実際には全く繋がりが無かったのにも関わらず、当時のフセイン政権が危険とみて戦争を仕掛けてしまった。
    その時に、過激派の中のリーダーとして、脅威でも無かったザルカヴィを、国務長官自らが真偽が曖昧な状態に関わらず名指しで危険人物として世界に向けて発言をしてしまったのだ。

    結果として世界的に有名となった彼は、アメリカに戦争を仕掛けられ、実権を奪われたスンニ派の権力者たちとのコネを獲得し、逆にイラク情勢を不安定化させるテロを次々に仕掛けていく。

    彼が狙ったのは、アメリカを孤立させ、スンニ派とシーア派を対立させて、真のイスラム国家にするために内乱の聖戦を起こさせることだった。これは、実に見事に実現していく。

    逆に当時のブッシュ政権が、いかに都合の良い情報だけを取捨選択して戦争を起こし、現地に混乱を招いたか。他国に口出しをするにも関わらず、イラクをどうしたいかのビジョンはなく、権力者から力を奪った結果、秩序を保つための組織を壊滅させ、国を不安定にしてしまっただけなのである。

    何のための戦争だったのか?まさに、アメリカの失態が非常によくわかる内容だった。

    また、一方でザルカヴィの人間性も非常によくわかる内容でもある。彼は自分が英雄であるという大きな自尊心と、イスラムの教えに対して背いてきた過去に対する激しい罪悪感の二つを持っており、結果的にまさに「命をかける」ことを恐れない、徹底したイスラム原理主義者として周囲に一目を置かれる存在になっていった。
    元々はザルカの街でゴロツキであり、頭も良くなかった彼が、世界的にネットワークを作り、数々のテロを仕掛け、様々な国を巻き込んだ宗教戦争を起こしていったのだが、どうしてそこまで適切な戦略が書けるようになったのか?そこだけは解せないが、取材をベースにした事実の物語であり、まさに手に汗を握りながら読める一冊。
    戦争は、本当に誰が悪いとは言えないものだと感じる。

    とはいえまだ上巻、下巻も楽しみ。

  • 2020年11月15日読了

  • ニュースでは知れない、テロという一言では理解できない、人々の生い立ち、経験、それが積み重なってある現状。
    フィクション以上にことの運びがうつくしく、想像以上におそろしい現実。

  • ピュリッツアー賞受賞作。ザルカウィというジハーディストを中心にイスラム国の興亡を描いている。下手なスパイ小説より面白い。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou25601.html

  • イスラム国がどのようにして生まれ、どんな経緯で広がっていったのか。上巻では、ザルカウィというヨルダン生まれの指導者の生い立ちと、彼がイラクで徐々に勢力を拡大していく様が描かれています。
    この分野、個人的には全く詳しくなかったので本著は良い機会になりました。アメリカのイラク占領前に、ザルカウィはビン・ラディンから資金援助を受けていたんですね。

    テロを起こす側、守る側双方の目線で描かれるため、登場人物は非常に多いのですが、綿密な取材に基づいた記述は臨場感があって、一人ひとりのキャラ立ち(と言っていいのやら…)がハッキリしていて読み物として面白く読み進められます。さすがピュリッツァー賞受賞作品。

    読んでいて苦々しく感じたのは、アメリカがイラクで実施した政策のまずさ。(後からなら何とでも言えるのですが…)「衝撃と畏怖」作戦と称して戦術的には勝利したものの、現地の統治機構を破壊してしまって行政が成り立たなくなり、そこをザルカウィにつけ込まれてシーア派とスンニ派の対立構造、加えて米軍も含む三つ巴の争い状態が生まれてしまう。
    上巻で面白かったのはヨルダンの情報機関GIDの活躍。「赤い悪魔」なんて二つ名がついている人物もいて、テロ計画への対処なんかのエピソードも面白かったです。

    しかし本著、校閲不足の感が否めない。目を挙げると…ってどうやって挙げるんだ!似たような誤字脱字が5箇所以上あり、見つけるたびに集中力が削がれてしまったのが残念。

  • 本書を読めば、イスラム国(ISIS)がどのような経緯で出来たのかが良くわかる。
    ザルカウィと彼の死後のバグダディの活動が、膨大と思われる取材から非常に丁寧に記載されている。
    アルカイーダとの微妙な関係や、イラクやシリアの情勢不安をうまく利用したり、周辺国の思惑の裏をかいたりと、テレビ報道からでは決して見ることのできない真の世界がここには記載されている。
    断片的なテレビ報道だけで判断するのではなく、本書のような真実をいかにして世の中に広めていくかが重要だと思われる。

  • ヨルダン,イラクを経て,いかにしてザルカウィが力をつけジハーディストのスターにのし上がっていったかを丁寧に記述している.特にヨルダンの事情については知らなかったことが多く,負の連鎖が綿々と続く悲劇にやりきれなさを感じた.

  • イスラム国のできるまでを緻密な取材に基づいて検証している.ピューリッツァー賞受賞.上巻では主に「イラクのアルカイーダ」を創立したザルカウィの生い立ちも含めた動向を中心に描いている.

  • ブラック・フラッグス、BLACK FLAGS The Rise of ISIS、ピューリッツァー賞受賞作。タイトルの通り、イスラム国、Islamic Stateが台頭してきた歴史や背景を丁寧にまとめた良書。イスラム国、Islamic Stateを報道で聞く機会はあっても、詳しくは知らない人が多いと思う。このブラック・フラッグス、BLACK FLAGS The Rise of ISISを読めば、基本的な理解が得られると思う。

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著者プロフィール

1960年、米国ノースカロライナ州に生まれる。テンプル大学卒業。『ニューズ・アンド・オブザーヴァー』での業績により1996年、ピュリツァー賞(公益報道部門)を受賞。同年『ワシントン・ポスト』に移籍。以後、中東問題、外交問題、安全保障問題を専門とするジャーナリストとして活躍している。2016年、本書Black Flagsでふたたびピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。邦訳書に『三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』(太田出版)がある。

「2017年 『ブラック・フラッグス(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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