シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち:近世の観劇と読書

著者 :
  • 白水社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560096000

作品紹介・あらすじ

王女や作家から市井の観客・読者まで
 現代でこそイギリス文学の「正典」として称えられているシェイクスピアだが、はじめからそうだったわけではない。むしろ、どちらかというと教養のない作家と見られていた。
 そのシェイクスピアをイギリス文学の金字塔に押し上げたのは、学者や作家、舞台のスターや演出家、イギリス文化を広めようとした政治家や教育者だけの業績ではない。作品が今でも世界中で親しまれ、映画やテレビドラマになっているのは、多くの無名の人々が劇場でシェイクスピアを楽しんできたからだ。そしてそこには、確かに女性たちがいた。偉大なシェイクスピア研究者として知られる人々の大部分は男性だが、16世紀の末から、芝居を見、作品を読み、それについて考える女性たちは存在していた。批評・研究史の初期にさえ、女性の働きがあったのだ。
 本書は、フォリオへの書き込みや手紙などの分析、18世紀にあったファンの一大イベントの記録を通じて、16世紀末~18世紀半ば頃までの時期、著名な作家や宮廷人から一読者、一観客にいたる女性ファンが、シェイクスピアの権威の確立にどのような役割を果たしたかを見る。

感想・レビュー・書評

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  • 姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/SS00107347

  • 【書誌情報】 
    著者:北村 紗衣
    装幀:柳川 貴代
    定価:2,800円+税
    出版社:白水社
    出版年月日:2018/03/23
    ISBN:9784560096000
    版型:4-6
    頁数:310
    https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b352017.html

    【目次】
    目次 [003-005]

    序論──わたしたちが存在していた証拠を探して 007

    ◆第一部 十七世紀における劇場、読書、女性 021
    第一章 十七世紀イングランドの観劇 023
     第一節 ロンドンの芝居小屋事情 023
     第二節 芝居に夢中 027
     第三節 シェイクスピア劇の中の女性観客 037
     第四節 宮廷のシェイクスピア 048

    第二章 読み書きする女性たち 055
     第一節 本の広がり 055
     第二節 女性の蔵書 060
     第三節 シェイクスピア刊本の女性ユーザ 064
     第四節 執筆する女性たち 069

    ◆第二部 王政復古期の女性とシェイクスピア 087
    第三章 王政復古演劇と女性 089
     第一節 王政復古演劇とは 089
     第二節 十七世紀後半の刊本 091
     第三節 ロンドンの女性たち 092
     第四節 ロンドンから離れて 094
     第五節 イングランドを離れて 103
     第六節 宮廷人のあだ名と詩 107

    第四章 王政復古期の女性作家たち 114
     第一節 マーガレット・キャヴェンディシュとその一家 114
     第二節 アフラ・ベーンと女性劇作家たち 128
     第三節 ジュディス・ドレイクとイングランドにおけるフェミニズム 143

    ◆第三部 十八世紀の女性たちとシェイクスピア・ジュビリー 155
    第五章 読書する女性たち 157
     第一節 家族に贈るシェイクスピア 157
     第二節 女性によるシェイクスピア研究 170
     第三節 新しい刊行物の中のシェイクスピア 186

    第六章 十八世紀の女性観客たち 196
     第一節 芝居の規則はお客様が決める 196
     第二節 シェイクスピア・ジュビリー祭 201

    終わりに 225

    謝辞 [229-230]
    図版一覧 [78-79]
    文献一覧 [37-77]
    注 [7-36]
    作品索引 [5-6]
    固有名詞索引 [1-4]

  • さすがwikipedian、というか、博士論文だからという方が大きいか。
    いまの同人界隈であったり二次元ファン層みたいなコミュニティがシェイクスピア作品に対して近世時期に既に築かれていたんだぞ、という話。自分に引き寄せやすい話題だったからか、ぐいぐい読み進んでしまった。これ、新書化ないし文庫化されてほしい…。

  • 北村氏のツイッターをフォローしており本書を知った。映画や演劇が好きな女性=同志としての観点が嬉しい。「ファンとして芸術を楽しむ女性は、取るに足らないことに心を奪われていると軽視されやすいが、実際のところ、楽しみを追い求める人々が芸術の普及と保存に果たしている役割は計り知れない。」シェークスピアのみならずエンタメは女性ファンが支えているのだ。
    著者は、初演からカンバーバッチに至るまで、ハムレットは人気俳優が演じ女性が喜んで劇場に通ったからこそ現代も盛んに演じられているのだという。うん、今年のコクーンで岡田将生が主演なのでチケットが取れなかったのだが、仕方がないんだな(笑)

  • 『これはシェイクスピアがどのようにイギリス文学の正典として価値を高めていったか理解するための重要な手がかりとなる一方で、気付かれないかまま失われてしまいがちな女性ファンの歴史を回復することでもある。ファンとして芸術を楽しむ女性は、取るに足らないことに心を奪われていると軽視されやすいが、実際のところ、楽しみを追い求める人々が芸術の普及と保存に果たしている役割は計り知れない。』


    大学の同級生の作品。
    本を“所有”し受け継いできた時代があったんだなぁ〜、そんな時代の女性によるシェイクスピア受容の歴史の研究。
    なかなか、地味でマニアック。
    作品でも触れられてるけど、ディカプリオ主演の『ロミオ+ジュリエット』俺も北海道の映画館で観たな。
    今でも映画と観劇が好きなおじさんになったけど、彼女はシェイクスピア研究をしているなんて不思議なものだ。

    ちなみにシェイクスピアで一番好きなのは、当然、宝塚月組のロミジュリ。龍真咲と明日海りおのロミオとティボルトの役替わりは今観ても最高。

  • ちょっと意外に思ってしまう、、、

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    女性たちはいかにシェイクスピアを受容し、その正典化に影響を与えてきたか。18世紀までの観客や作家、宮廷人などの関わりを見る。
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b352017.html

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著者プロフィール

英文学者、批評家。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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