ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語 (エクス・リブリス・クラシックス)

制作 : 白崎 容子  尾河 直哉 
  • 白水社
4.33
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本棚登録 : 49
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560099049

作品紹介・あらすじ

タヴィアーニ兄弟のオムニバス映画、『カオス・シチリア物語』をご覧になっている人はもう少ないかもしれない。日本で公開されたのは、一九八五年のことであり、鈴をつけられた「カラス」のシーンからはじまり、地中海の小さな島の白い砂浜での最後のシーンまでシチリア島ならではの美しい映像が印象的な映画である。この映画のもとをなす六つの短編の原作者、ピランデッロはイタリアを代表する劇作家・小説家であり、ノーベル文学賞を受賞している。本書は、二〇〇を超える彼の短編の中から、映画のもととなった六つの短編を中心に、シチリアの風土とむすびついた寓話性の高い作品を選んで、今日にも通じる世界的な文学者ピランデッロの世界を紹介しようとするものである。

感想・レビュー・書評

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  • 『戦争だろうが地震だろうが、ひとつ天変地異なり大惨事が起これば、生命なんてあっという間にふっとんでしまいます。しかし、ほどなくすればまたもどってくる、なにごともなかったかのように。それは、生命が、いかに過酷ではあってもこの世のものだからです』-『登場人物との対話-母との対話』

    実も蓋もないという表現は使い古されているにせよ、この短篇集を短く言い表そうと思えばやはりその言葉をまずは思い浮かべることになる。だからと言って、その言葉が使われる度に引き出されてきた負の感情を、ここに込めるつもりは微塵もない。短い物語の中に敢えて起承転結を求めることはないのだから。きれいな物語はないけれど、ここには人の本性が溢れている。

    人の本性は過酷さの中で鍍金が剥がれて表れる地金のように見えてくる。そのことが何度も何度も繰り返される。そのことが必ずしも心地よいとばかりは言い切れないが、いたずらに扇情的な話が展開する物語を読まされるよりはずっと落ち着いて読むことができる。しかもこれらの物語が大地に根差した物語であることは直感的にも理解され、その為か頭の余計な部分を肥大化させながら物語を受け止める必要がない。徐々に物語を聞く耳が立ってくる。開いた身体が染み込むようにその物語を聞いている。

    ここには、乾いた土地と、照りつける太陽と、貧しさが溢れている。にも拘わらず、いやだからこそ、人々は感情豊かで、その表情は鮮やかな彩りとして褐色の大地の中で躍動する。その対比は、最初の内こそ微妙な諧調の違いとしてしか認識できないのだが、ひとつひとつ読み進める内に感受性の解像度がそこに焦点されてダイナミックレンジが、ぐいっと広がってくるのを意識することになる。

    だからといってその先に何か広がりがあると感じる訳ではない。それなのにずしりとした印象を残した物語はどれも終わってしまったようには思えず、いつまでも意識の周囲を徘徊する。出て行ってしまった息子を待つ母は今日もそこに居て手紙を待っているだろうし、自殺をし損ねた男は今日も後悔を重ねながら生きているに違いない。生命は、確かに儚いもののようでありながら、実のところずっと図太く生き永らえるものなのだということが、しんしんと伝わる。そのことが心地の良さに深い所で繋がっている。

  • シチリアのノーベル文学賞受賞作家ピランデッロの短編集で、第一回須賀敦子翻訳賞をいっしょに受賞した『月を見つけたチャウラ』に続いて読んでみました。
    そちらのレビューにも書いたけど、私ノーベル文学賞作家の小説を読んだのは川端康成に続いて2人目、このピランデッロのほうが面白かったです。
    翻訳者のみなさんのおかげかと思います。

    こちらのカオス・シチリア物語は、映画化されて、ヒットしたらしい。
    その原作を翻訳したいと思った白崎容子さんと尾河直哉さんが、さらに五編ずつ翻訳したものが掲載されています。
    映画も見たいです。

  • タヴィアーニ兄弟の映画が大好きで、小説も買ってみた。背中にのしかかる単調な生活の重みに耐えながら、ひそかに夢想を抱えてじっと生きている、そんな人たちの姿が浮かび上がってくる。特に興味深かったのは最後に収録されている「登場人物たちとの会話―母との会話」。リアリスティックな他の収録作品とはちょっと風合いが異なり、息子の出征に心乱れる作者が自分の作りだした幻影と会話を交わす、幻想的な作品だ。影が語る、「いかに並外れていようと、現実は現実に過ぎません。うつろいゆくものです。それを超えることのできなかった個々の人間を巻き込んで過ぎ去っていきます。しかし、生命は、つねに変わらぬ欲求、変わらぬ情熱、変わらぬ本能とともに留まります」という世界観が興味深い。「あなたは、そうとは気付かずに、心の奥では生きていて、えも言われぬ人生の喜びを味わっておられるのです。逆境はどれも、思考するから耐えがたいものとなるのだけれど、それを受け入れられるようにあなたを支えてくれているのは、こうした人生の喜びなのです」。この言葉こそ、ピランデッロの作品の底に流れている態度のように思われる。
    それにしてもあの鮮烈に美しい映画の映像が忘れられない。どこかで再映やらないかしら。

  • [ 内容 ]
    タヴィアーニ兄弟のオムニバス映画、『カオス・シチリア物語』をご覧になっている人はもう少ないかもしれない。
    日本で公開されたのは、一九八五年のことであり、鈴をつけられた「カラス」のシーンからはじまり、地中海の小さな島の白い砂浜での最後のシーンまでシチリア島ならではの美しい映像が印象的な映画である。
    この映画のもとをなす六つの短編の原作者、ピランデッロはイタリアを代表する劇作家・小説家であり、ノーベル文学賞を受賞している。
    本書は、二〇〇を超える彼の短編の中から、映画のもととなった六つの短編を中心に、シチリアの風土とむすびついた寓話性の高い作品を選んで、今日にも通じる世界的な文学者ピランデッロの世界を紹介しようとするものである。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 読了。新宿区立図書館。生涯に200以上の短編を残したピランデッロの短編集。表題の映画で用いられた何本かに幾つか加えたもの。イタリア、特に南部イタリアの貧困と階級社会、無知や無学。気狂い、半分野生のような人間。老い、苦しみ。寓話的ユーモアを散りばめつつもほとんどがバッドエンドあるいは救いを提示されぬまま終わる。怒り、叫び、悲しみ。しかし政治の主義に依っておらず普遍的、自然、現実、クール。

  • タヴィアーニ兄弟の『カオス・シチリア物語』を観たのは4半世紀以上前の暑い夏の午後。
    今はない六本木WAVE地下のシネヴィヴァンでのことだった。
    シチリアの自然と土地に暮らす人々、流れる時間の独特の世界。
    長時間のオムニバス映画にすっかり引き込まれ、以来長い間マイベスト5の座を占めている。
    その原作の短編集が今年になって出版された。
    遠い夏のスクリーンを思い起こさせる素晴らしい本だった。
    私と同じようにタヴィアーニの映画に魅せられた2人の訳者と、白水社に感謝。

  • タヴィアーニ兄弟の映画の中では一番好きです。。。

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    「タヴィアーニ兄弟の映画「カオス・シチリア物語」の原作を中心に、シチリアの風土と結びついた寓話性の高い作品を収録。」

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