イーヴリン・ウォー傑作短篇集 (エクス・リブリス・クラシックス)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560099094

作品紹介・あらすじ

没後50年記念出版!
 「良家の人々」
 ひどく不名誉な状況でオックスフォード大学を退学になったヴォーンに、ある仕事が舞い込む。それは、さる公爵の孫息子の大陸遊学に、チューターとして1年ほど同行するというものだった。どうせぶらぶらしているし、悪い話ではない。そう思い引き受けたヴォーンだったが……。
 「勝った者がみな貰う」
 貴族のケント=カンバランド家の当主が第一次世界大戦で戦死、未亡人が家を取り仕切っている。長男はオックスフォード大学に進学させるが、節約のため、次男は無名のパブリックスクールに進学させる。やがて次男はオーストラリアに追いやられ、そこで大富豪の牧場主の娘と恋仲になる。未亡人は長男とその娘を結婚させようと画策するが……。
 20世紀のイギリス文学を代表する小説家の一人であるウォーは、短篇も数多く書いている。そこに描かれた人間の悲哀や滑稽さは、自らの苦い経験から生まれている。本書には、巨匠ウォーの辛辣な諷刺とユーモア、ブラックな笑いが冴えわたる作品を15篇厳選して収めた。初訳4篇ほかすべて新訳、自筆の挿絵6点掲載。

感想・レビュー・書評

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  • 最高。皆さんあとがき読みました?「プルーストの訳者の秘書になる話が舞い込んだが結局なくなり、失意の余り入水自殺するも、クラゲにさされ断念」。学生の頃の出来事で、クラゲがいなかったら我々はこの楽しい文章を読むことができなかったわけですよ!こういう世界観大好き。本人達は大真面目なんだけど、必死さがおかしい。いつまでも心に残り、ふとした瞬間に何度でも思い出す。1つ1つの短編がそんな感じでとても貴重に思える。やはり私はハッピーエンドが苦手なんだな。人の不幸を向こう岸からニヤニヤ楽しみます。

  • 滝を愛でる様に悲劇は鑑賞したい。
    これら悲喜劇が見事に決まればその落差とフォルムの美しさは正に滝の様、優雅でさえある。オチが途中で判明するのは寧ろ滝の向かう先が滝壺である故の必然。

    「良家の人々」「ベラ」「昔の話」「見張り」など素晴らしく、特に「昔の話」「見張り」の書き出しの、簡潔な中に一つの世界が潜む描写は短編好きには判る見事な美術品。

    表紙の写真そのままの捻くれた可哀想な人間性。最初から持ち過ぎていた為に、生きることは失う事でしかない。ああ、素晴らしくイヤな奴。
    名作「回想のブライズヘッド」における、チャールズやセバスチャンや、その他の愛すべき人物の面影が随所に浮かぶ。
    まあ、まずはこちらより先にブライズヘッドを読んで欲しいんだけどね。

    サキが好きな人にはオススメ。

  • 起承転結のあるエンターテイメント的という訳ではないので慣れるのに時間がかかったが、シニカルでナンセンス、どこか悲しげで独特な魅力がある。「現実への短い旅」「アザニア島事件」「ラヴディ氏のちょっとした遠出」「気の合う同乗者」が特に良い。

  • イーヴリン・ウォーは本当に面白い。イギリスのブラックユーモアここにあり。独自編集の短編集なのでファンには嬉しい。表紙のスカしたイケメンはウォーなのだね。

  • 様々なタイプの作品が楽しめる短篇集。「ディケンズ好きの男」や「ラヴデイ氏のちょっとした遠出」「気の合う同乗者」といった作品にゾクゾクするような恐怖を感じますし、「ベラ・フリース、パーティーを開く」にはコミカルな中に悲哀が感じられる作品です。いずれの作品にも共通するのは、ウォーの描く人々は素直じゃないということ。これがまた読者も身につまされ、ウォーの作品にはまる原因なのではないでしょうか。

  • やっぱりイーヴリン・ウォーはすごい!読み応えのある短篇ばかりを集めた1冊。著者の若いころの肖像写真(表紙)にため息がでるが、本文中ところどころにウォーがオックスフォードの学生新聞のために制作したイラストとか、兄のために作った蔵書票のデザインも収められている(けど詳しい説明はない)。ウォーの作品はいろいろ読んでいるつもりだったが、こんなに絵心もある人とは知らなかった!どれもスタイルが違っているが、それぞれにとても独創的で、味があって、とても気に入ってしまった。どんなところで発表されたのか、ちゃんとみてみたくなる。
    肝心の小説のほうは、家族のなかの噛み合ない会話とか、近所の人々のつまらない諍いとか、人の陰険さとかを、淡々としたストーリーのなかに克明に描き出していて、静かなホラーのよう。そしてときどき、ものすごくぐっとくる一文が出てきて、魂をわしづかみにされます。オススメです。

  • いけ好かない表紙が気になり読了。あくまでも"そこそこ"ブラックで抑えているのが白水社らしい。起承転結が割とはっきりしているものが好きなので気に入った作品は以下の通り。孤独な老婆のひらめき「ベラ・フリース、パーティーを開く」、探検家を志した男の悲惨な顛末「ディケンズ好きの男」、異国へ行っている間彼女と誰も結婚させないよう託された犬「見張り」、お父様の面倒を見ている男は正常なのでは?「ラヴデイ氏のちょっとした遠出」、こちらの方がより同短編集収録作「勝った者はみな貰う」というタイトルがぴったりだと思うイギリスの古き良き風景を守らんとひと騒動する「イギリス人の家」、フランシス・アイルズの某作を思い出す「戦術演習」。当時の人々の生活を冷笑的に見ている作者の姿を、またこんなこと書いてると温かく見守る一冊。

  • イーヴリン・ウォーの短編集。『訳者あとがき』を読む限り、独自編集になる……と思う。
    ウォーの作家生活の中から、割と満遍なく収録されていると思われるのだが、何処を読んでも『イーヴリン・ウォーらしさ』が凝縮されているのに驚いた。作品によって様々な顔を見せるタイプの作家だと思うが、短編は『皮肉屋のウォー』が顕著だと思う。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=7834

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著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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