芸術家列伝2ボッティチェルリ、ラファエルロほか (白水Uブックス1123)
- 白水社 (2011年7月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560721230
作品紹介・あらすじ
イタリア・ルネサンスの美術を知るうえで最も重要、かつ読み物としての面白さを兼ね備えたヴァザーリの『芸術家列伝』は、ダンテの『神曲』とならぶ古典として知られている。その中より後期ルネサンスを代表する六名の画家の伝記を収録。
感想・レビュー・書評
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ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574)の著した芸術家の伝記集『画家・彫刻家・建築家列伝』の抄訳。
イタリア芸術の最重要文献とされ、芸術家の生涯をアウトラインに、その人物の製作した作品をヴァザーリが同じクリエイターの視点で解説しながら進む。それほど難解ではないので、『史記』の列伝を読む感覚で気楽に読めばいい。古典文学のエピソードをパクったと思われる記述や、信憑性が薄く「講釈師見てきたような嘘を言い」の感がぬぐえない部分も多いとはいうものの、ジョルジョーネのようにこの文献でしか消息が分からない芸術家もいるので、歴史的に重要な文献であることには変わりない。それにしてもヴァザーリ先生の取材力+執筆力の凄まじさよ。しかもこの人、物書き専業じゃないし。
翻訳については、語のレベルでは「サンタ・マリーア・ノヴェルラ寺」のように、現在通用している表記とは異なるものを採用していたり、文章レベルでは、原文の構造が透けて見える訳文の印象を受ける。これは訳者の経歴や本書の元になった『ルネサンス画人伝』が出版された年代(1982年)を考えると、時代なりの翻訳文だと思う。
詳細に付けられた訳注も読みごたえがあり、歴史文献の注釈が好きならこちらを楽しむこともできる。本文中に出てくる作品は、現在の所蔵先が明記されているものも思いのほか多く、時代をサバイブしてきた美術の厚みに圧倒される。ただ、そういう芸術家でも、個人向けに制作した作品の多くが失われているのは想像に難くない。
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2018.10―読了