台湾生まれ 日本語育ち (白水Uブックス)

著者 :
  • 白水社
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本棚登録 : 51
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560721339

作品紹介・あらすじ

三つの言語の狭間で育った東京在住の台湾人作家が、自らのルーツを探った感動の軌跡。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作の増補新版!

感想・レビュー・書評

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  • クレオール文学というものがあって、
    あのエキゾチックが内包された、
    悲しみと楽観のマーブル模様を楽しみつつも遠くに感じていた。

    ただ、この温又柔のエッセイはまぎれもなく
    日本にもクレオールと同じものが存在しているということを
    優しげに提示している。

    植民地化が良いことであったなどということはありえない。
    ただし、その結果をポジティヴに引き受けていくということは可能であるし
    可能であってほしい。

    国籍などという帳簿上のことが
    しかし、重要になってしまうこの世界の中で
    今立っている場所と発される言葉を尊重できるような
    環境を育てていかなくてはいけない。
    思いのほか脆いものであるから。

    「我住在日語」(わたしは日本語に住んでいます)
    というのは中国語訳でのタイトルらしいが、
    誇らしさを感じるとても良いタイトルだ。


    >>
    幼稚園の砂場で、どの日本語なら口にしていいのか混乱していた五歳のときと同じように、十九歳のわたしは大学の中国語の授業で、どの中国語なら「正しい」のだろうかと緊張していたのである。(p.45)
    <<

    台湾生まれであるから、北京語の普通話とも違う言葉でそれが
    彼女を二重に責める。

    >>
    戦後、大陸で「山崎」から劉」に改姓したときの恵美ちゃんの曾祖父は一〇〇年も経たないうちに、自身の曾孫が日本の学校に入り、しかも「日本育ちの台湾人」から中国語で日本語を教わることになるとは想像できただろうか?(p.130)
    <<

    こうしたことは戦争があったからだと思うのは誤りで、
    仕事で移住する人も多い現状では戦争などとは無関係に類似したことは起こる。
    だからこれが端的に悪いことではないし、
    ポジティブに引き受けられるかが問題なんだ。

  • 台湾人の両親を持ち、幼少時に日本に移住して日本で育った著者が、自分の生い立ちや経験から、日本ー台湾ー中国をめぐって国や言語(母国 or 国語とは?母語とは?)について考えたことをつづったエッセイ。

    台湾が著者のアイデンティティの1つの核としてあるのが面白かったです。
    というのは、台湾では、日本が支配していた時代は「国語」は日本語、そして今の「国語」は中国語、それとは別に日常生活では(著者の周辺では)台湾語が使われているということ。そのことにより、親族の中でも、何を「国語」として育ったかも違うし、そのあとどのような言葉を合わせて使用しているかも世代によって、また、置かれた環境によっても違う。(私自身はあまり意識してこなかったけれど)そういう複雑な環境が台湾にはある。
    物心ついてからそういうさまざまな言語が混ざった「日本語」(著者の言うところの「ママ語」)を嫌だなぁと思っていた著者が、最終的に「ママ語」で育ってよかった!と今では思っている、というのはとても素敵なことだなぁと思いました。そういう否定的では無い意味での”混ぜこぜ”を愛していける世の中になっていけるといいんじゃないかなぁと改めて感じました。

    また幼少時からずっと日本で育っているにもかかわらず、国籍は中華民国で、日本では選挙権はなく、台湾では選挙権がある。そういったアイデンティティと権利のねじれのようなものをひしひしと感じました。国籍とは、母国とは、についていろいろと考えさせられ、自分の意識で柔軟にそういうものを選べる制度が、世界でできていくといいんだろうなぁと感じました。

    ことばやアイデンティティについて考えるときに、また立ち戻りたくなるであろう、素敵なエッセイでした。

  • 面白く読んだ。
    そういえば小説の方を買おう買おうと思っていてそのまんまだったな……ということを思い出した。

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著者プロフィール

温 又柔(おん ゆうじゅう)
1980年台北市生まれ、台湾籍の小説家。台湾人の両親のもとで生まれ、3歳から親の仕事の関係で日本に住まう。法政大学国際文化学部卒業、同大学院国際文化専攻修士課程修了。
2009年「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作となり、作家デビュー。2016年『台湾生まれ 日本語育ち』で第64回日本エッセイストクラブ賞受賞。2017年『真ん中の子どもたち』で第157回芥川龍之介賞候補。2018年、新刊『空港時光』を発行。

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