1688年―バロックの世界史像

  • 原書房
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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562037902

作品紹介・あらすじ

1688年。ルイ14世、康煕帝、ヘンリー・モーガン、ニュートン、ピョートル大帝、井原西鶴、松尾芭蕉、皇帝アウラングゼーブ、ライプニッツ…縦割りの世界史では交わることのない彼らが生きた、ある一年-地球は、人間の生き方を根本から変えられると信じたさまざまな英雄や悪漢たちがひしめく、絢爛豪華(バロック)な時代だった。世界中が近代へ生まれ変わろうとする一年を、バルザックのように生き生きと活写し、歴史の見方を一変させるユニークな世界史。ワシントンポスト紙他絶賛、世界10ヵ国で翻訳出版されている話題の作品。

感想・レビュー・書評

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  • 多くの歴史上の人物が登場する。ニュートン、ルイ14世、ピヨトール大帝、井原西鶴、ライプニッツ、康煕帝、それにオレンジ公ウィリアム。これらの有名人にまじって、無名の人々も大勢登場する。それらの人々は直接関係する場合もあるが、そうでない場合の方が多い。しかし、皆ある一点で結ばれている。その一点とは…。

    1688年。受験生なら名誉革命の起きた年と答えるだろう。参考書にはそう書かれている。普通、歴史とは時間軸によって構成されている。国家の単位で書かれることが多いから、1688年といえば、イギリス、あるいはオランダについては記述の対象とされるが、それ以外の国や人々が、どこでどんなことを考え、何をしていたのかは知ることができない。

    考えてみると、これは不思議なことだ。1688年当時、地球の反対側の出来事を知ろうと思えば、一年はかかったと考えられる。しかし、それでも同時代に人々が世界中にいた事実は変わらない。東インド会社の船は世界の海を航行していた。世界はばらばらに存在していた訳ではない。
    今までも、西洋の歴史の本を読んでいる時に、日本の歴史とは比べることはあった。しかし、世界史上の人物や出来事と結びつけながら読むことができなかった。事件は点であり、それを地球儀の経線のように北極点から南極点までを時間で区切った一本の線で表したものでしかなかった。経線と経線は結ばれることがなく互いに無関係に記されていたわけである。

    この本の面白さは、その線を横に結んだところ、つまり経線と経線を横に結ぶ線(緯線)を引いたところにある。各国、各都市を結ぶ緯線をどこに設定するのか、それがいちばん問題だったろう。著者が見つけた一点が1688年だった。「バロック」とは、もともと歪んだ真珠を意味する言葉である。均整のとれた状態を美しいと見る古典的な美学に変化が起こり、複雑で動的なリズムを持ったものを美しいと感じる見方が登場した。その時代の美的様式を表す用語として使われるようになったものだ。

    この時代がどのようにバロックであったかは、ここに書かれた人々の物語を読んでもらうしかない。こんな歴史書を待っていた、という思いを持つ人が多いのではないだろうか。ピヨトール大帝や太陽王ルイについては、それまで何かで読んだことがあるかもしれないが、当時『文芸共和国便り』という小冊子が急速に発展した郵便制度の普及によって世界各地に読者を持っていたことを知る人は少なかろう。

    ロッテルダムに住むピエール・ベールがその編集長兼主筆であった。「読書と思索から生まれた成果を、自分と同じく地味な出自で、地方の環境に身を置く人びとにも広めること」を天職と考えたベールのような人々が、世界中にいた。自分の知り得た知識を広めるために私財をなげうって、自著を一人で出版しようとしていたのである。

    この時代、世界は生まれ変わろうとしていた。アフラ・ベーンが『オルノーコ、高貴な奴隷』を出版したのも1688年であった。男性支配からの女性解放を訴えたこの作家のことを、後にヴァージニア・ウルフは書いている。「すべての女性はともにアフラ・ベーンの墓に花を降り注がなければならない。女性に心の内を語る権利をもたらしてくれたのはまさに彼女なのだから」

    通信網がこれほど発達し、世界中が蜘蛛の巣状に結ばれているというのに、何故現代世界はこうまで暗く感じられるのだろう。1688年という時代にも読書をし、ノートをとり、自分の考えを人に伝えようとしていた人がいることを知り、勇気づけられた。今の時代や世界の在り方に元気をなくしてしまっている人に特にお薦めしたい。

  • 1688年頃の世界史を横断的に並べていく、という試みはとても斬新。
    では、並べてみてどうだったの?とうのは、読み込んで自分で整理しないと分からない。一般読者としては、1688年の世界像はこれだ!というものをうまく図にまとめて欲しかった。

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