扼殺のロンド (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
3.36
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本棚登録 : 133
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562045457

感想・レビュー・書評

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  • ずいぶん前に「武家屋敷の殺人」を読んだきりの作家さん。この作品を読むと「武家屋敷~」に続く海老原探偵シリーズ第二作らしいが、キャラクターについてはすっかり忘れていた。

    こちらはとにかく密室、密室、また密室の密室オンパレード。
    第一の事件では、鍵が掛かった倉庫の中に衝突事故で車体が歪みドアが開かない車という二重の密室状態にあった二つの死体という厳重振り。
    しかも女性の方は腹が引き裂かれ内臓が抜き取られているという残酷さ、男性は何故か高山病が死因という不可解さ。
    第二の事件はやはり密室状態で見つかるが、何故か死体の頭部と手首に包帯がグルグル巻きにされている。
    第三の事件では誰もいない筈の密室で突然死体が現れるという奇怪さ。

    舞台となった姉川家の家族関係が何とも奇妙で、親密なところもあれば、家族が殺されたというのに普通に仕事をしたり遊びに行ったりという無関心さもある。
    家族の中にはアル中がいたり、植物状態で入院中の者がいたり、大学生なのに妙に子供っぽい子がいたり、過去にはトラブルもあったらしく、何か家族関係が事件の根底にありそう。

    この複雑怪奇な事件に取り組むのは小沢・笠木の刑事コンビと海老原という素人探偵だが、他の方のレビューにもあるように、海老原のキャラクターが好きになれなかった。海老原がやたらと小沢をからかい、それに小沢がキレるという毎度のやり取りが無駄にしか見えなかった。
    このキャラクターがシリーズの魅力を半減しているようで残念。

    肝心の密室トリックについては三件それぞれ違っていてバリエーションを楽しめた。
    しかし密室にする必要性があるのか疑問な事件もあった。
    一件目の、臓器が抜き取られていた理由と高山病で死んだ理由についてはなるほどだった。
    そこまでする?という部分はあるが、読み物としては面白い。

    事件の動機たる真相については横溝先生チック。何とも苦しい。もっと良い方法がなかったかなとも思うが、それがなければこんな陰惨な事件は起こらなかっただろう。
    タイトルでもある『扼殺』を何故犯人が拘ったかについても恐ろしかった。

    そしてエピローグとプロローグの繋がりについては、最初意味が分からなくて何度か読み返してようやく分かった。

    やり過ぎ感はあるが、これが小島さんらしさか。しかし探偵キャラとキレ刑事キャラはいただけない。

  • 移動する車中の密室はアクロバティックなトリックで、魅力的だったが、細部に渡っては、そんなんあるか!みたいな粗さがあり、伏線の張り方も唐突な感じがした。また、文章もガチャガチャしているのと、大事なとこに誤植があり推理に入り込めなかった。でも、不可能犯罪としての魅力がある小説。

  • 探偵海老原シリーズ。
    提示される謎はスゴイ。半分密室状態の車庫に突撃して大破した車から見つかった男女の死体。女性は臓器が摘出され男性は高山病を示し死亡。この状況にどんな解決をつけるのか強烈に引き付けられる。しかもそれに終わらず、さらなる事件が…。
    こう書くとものすごく面白そうなのだけど、読んでてバランス感の悪さが終始つきまとう。
    地の分では無駄な描写が延々と続くし、説明調の会話が多い割にはキャラがどれもこれも魅力が無い。
    最悪なのは海老原と刑事のまるで三流のコメディみたいなやりとり。センスが悪すぎて読む気が萎える。

    (現実的、必要性があるかどうかは別としても)これだけの謎を創出しながら、ストーリーそのものが退屈。
    キャラ(=セリフ)だけでもしっかり描ければ、ずっと面白くなるだけに、ホント、残念。

  • 06月-22。3.0点。
    探偵海老原シリーズ。親類同士が乗った車が、廃工場に突っ込み事故。助手席の女性は扼殺の上、内臓をえぐられ胃腸が無い状態。運転席の男性は高山病。なぞだらけの中、女性の親族にも、、
    密室続き。偶然にも近いトリックがあったり。まあまあ。

  • 題名にあまり魅力を感じられなくて後回しになっていた「探偵海老原シリーズ」二作目。
    理系にまるっきり疎い自分には、この大胆なトンデモトリックを考えつく作者にも、それを作中で解き明かす海老原にも只々感心するしかない。
    トリックは奇抜だが犯人と動機は恨みつらみの正統派。驚きというより悲しかったな。犯行を認めることはできないけど、もうそうなるしかない人生を歩まされて不憫で。
    最後何でこんなところで終わるんだろうと疑問だったが、そういうことか!その演出がまた憎い。でもちょっとしっくりこないモヤモヤも残る。

  • まあまあおもしろかった、けど一部気に入らないシーンがあったので★減らしました。
    いやあれはどう考えてもおかしいだろ…。
    ラストはご都合主義だけど犯人や動機はわりと好きです。まあこれが動機じゃなかったらあのシーンが丸々無駄だから気付かれやすい気はしますが。(私は登場人物紹介の時点で違和感を覚えました。そういうひとが多いと思います)
    背景とトリックはリアリティに欠けます。突拍子がないものも楽しめる人ならいいんじゃないかな?

  • 海老原シリーズ。密室にありえない状況の死体の説明をどうつけるのかと思って読み進めたが、まずまずの解決。海老原と刑事達のやり取りと、プロローグ・エピローグの繋がりもよかった。

  • 魅力的な密室殺人三連発でボリューム満点です。
    最初の「二重密室」は破壊力があります。 特に高山病にかかっていた理由はかなりインパクトがありました。後の二つも凝っていて悪くない出来でした。
    ただ、そもそも二番目と三番目の殺人は密室にする必要があったのか疑問に思いました。キャラクターの個性もやや弱めで物足りなさを感じました。

  • 又しても、逆転の犯人が最後のどんでん返しで登場。探偵はマイペースで要領を得ない。主役が刑事ではみ出し捜査で、推理する。
    物語がスムーズで読みやすい。論理に少し無理は有るし、謎解きがパズルになっているので違和感はあるが、ユーモアが効いていて面白い。

  • 海老原浩一シリーズ、2作目。

    第一の密室殺人のトリックは、現実的に可能かどうかは別としてよく考えたなぁと感心した。しかし、後の第二、第三のトリックは正直無理矢理過ぎるし、そこまで複雑にする必要性が感じ取れなかったのがウーンという感じ。事件背景の真相は意外性があって面白かったけど。あとはやっぱり、探偵の海老原がどうしても好きになれない(苦笑)他の刑事二人はイイんだけどなぁ。海老原一人だけが場違いな雰囲気なんだけど、どうしてこんなキャラにする必要性があったのか、2作目にしても分からない。結局、今作で一番面白かったのは、プロローグとエピローグの繋がりだったと思います。

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著者プロフィール

埼玉県生まれ。2005年、島田荘司氏との共著により『天に還る舟』(南雲堂)を上梓。2008年、『十三回忌』(原書房)で単独デビューを果たす。2015年、『扼殺のロンド』(双葉社)で第6回「駅の中の本屋さんが選んだエキナカ書店大賞」を受賞。スケールの大きなトリックと、どんでん返しを得意とする。趣味はリバーカヤックと散歩。ビールが大好物!主な著書に『怨み籠の密室』(双葉社)、『ブラッド・ブレイン1~3』(講談社)、『モノクローム・レクイエム』(徳間書店)、『愚者の決断——浜中刑事の杞憂』(南雲堂)など。

「2022年 『仮面の復讐者 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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