図説図書館の歴史

  • 原書房
3.90
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本棚登録 : 141
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562047444

作品紹介・あらすじ

古代の粘土板から羊皮紙、印刷物、そして現代の情報デジタル化まで。200点にのぼる多彩な図版とともに、図書館5000年の歩みをたどる。日本の国立国会図書館をはじめ、50を超える世界の図書館案内も付録。

感想・レビュー・書評

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  • 古代から近代に至るまでの図書館の発展をたどる一冊。
    フルカラーの図版が200点も載せられ、文字も大きく読みやすい。
    著者が米国人だからか欧米中心の記事で、米国の図書館史には120頁超もさいている。
    日本の図書館についてはわずか1頁程度の記述でそれも決して良い書き方ではない。
    ちゃんと勉強してから再発行してほしいくらい。

    図書館史は人類の歴史と共に歩んでいるため戦争の記述は避けられない。
    そしていつの世も勝利者の論理で歴史は変わる。
    図書館の破壊と本の略奪は合法とされ、宗教戦争の絶えなかった16,7世紀のヨーロッパは奪った書物の置き場としての図書館が次々に建てられた。
    しかし平和な時でも本は被害に遭う。雨漏り、カビ、紙魚、そして何より火災。

    図書館の発展に尽くした多くの人の名前も登場する。
    米国の図書館数が最も増えるきっかけをつくったカーネギー(1835~1919)は、実に自己資産の90%を生涯で寄付しているという。
    絵本の紹介では触れられなかったが裕福な実業家を妬む者も多く、労働者たちは頻繁にストをおこし「図書館など建てるお金があるなら自分たちに分配しろ」と迫ったらしい。
    新しいものはいつの世も人々の理解を得られない。それがたとえ図書館でも。
    カーネギーは利用者が自由に使えるように開架方式をうったえたひとでもある。
    それ以前の図書館は、職員が頼まれた本を持ってくるまで利用者はゲートの外で待たされていたのだ。

    メルヴィル・デューイ(1851~1931)の存在も大きい。
    図書館員育成のための学校を創設し、デューイ十進分類法を開発するなど図書館学の偉大な先駆者として今なお地位を確立している。生徒に女性が大変多かったということも嬉しい話。

    しかしカーネギーをもってしてもなし得なかったことがある。
    本書には最後の最後になってわずかに記載されているが、図書館での人種差別を撤廃できなかったことだ。黒人用には「カラード・カーネギー図書館」として設立したらしいが、蔵書もごく少なかったという。
    撤廃に向けては、公民権運動が本格的に動きだす1950年半ばまで待たなければならなかったということになる。
    しかし、ルイス・ミショーがハーレムに本屋を開いたのは1939年のことだ。
    それがどれほど先駆的なことだったかと、今一度思い直してもいる。

    中世ヨーロッパの章で面白い記述を見つけたので載せておこう。
    本泥棒の被害を恐れて本は通常鎖に繋がれていたが、更に損傷に遭わないように写学生たちは「呪いの言葉」を巻末に書き加えたらしい。
    大変な忍耐の末に書き上げたのだから気持ちは分かるというものだ。

    「(この書物を)他者の手にゆだねたる者よ、バビロンにいるすべての神がそなたを呪わんことを!」・・そんなコメントが書き記されている。
    今読むと笑い話だが、当時は地獄の火を願うことこそ最大の防御手段だったのだ。
    他にも「鍋で焼かれるように」とか「刑車で押しつぶされるように」とか、かなり強烈だ。
    万引きで書店が潰れるという現代。この言葉を護符のように店内に貼ったらどうなるかな。

    巻末に世界の図書館が約50ほど紹介され、日本からは国立国会図書館が登場。
    偉人たちの言葉も多く載せられ、現代の私たちへの警句のようだ。
    図書館の本を読めるのは決して当たり前ではない。
    守り育てる気概がないと簡単に失われると、歴史が教えてくれる。
    本書で物足りない方は「本の歴史」「読書の歴史」「江戸の本屋さん」「図書館と江戸時代の人びと」等をお勧め。
    図書館の通史について概略を知りたい方、ぜひどうぞ。
    (24日に中ほどの記事を付け加えました)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      ローカルな話を一つ、、、「大阪府立国際児童文学館」は縮小され、「大阪府立中之島図書館」も潰されかけました。
      そう言うコト...
      nejidonさん
      ローカルな話を一つ、、、「大阪府立国際児童文学館」は縮小され、「大阪府立中之島図書館」も潰されかけました。
      そう言うコトをする輩を選出しちゃいけない。調子の良い言動に騙されてはいけない。目覚めよ!大阪人!
      2020/11/23
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      そんなことがあったのですか。。。絶句。
      レビューを載せたばかりでそんなことを聞くとは。
      潰したいならパチンコ屋さんにしてく...
      猫丸さん。
      そんなことがあったのですか。。。絶句。
      レビューを載せたばかりでそんなことを聞くとは。
      潰したいならパチンコ屋さんにしてください。あんなもん、いらん。
      2020/11/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      そうなんです、、、
      「『大阪の中之島図書館廃止』との報道 橋下市長に「壊さないで!」と抗議殺到 J-CASTニュース
      ...
      nejidonさん
      そうなんです、、、
      「『大阪の中之島図書館廃止』との報道 橋下市長に「壊さないで!」と抗議殺到 J-CASTニュース
      https://www.j-cast.com/2012/06/20136400.html?p=all
      2020/11/23
  • 西洋を中心に古代から現代までを網羅している、図書館史の学術書です。
    豊富な図版が理解を助けます。
    知識を保存し提供する任務は太古から変わらず、そして終わりはありません。
    古代の図書館に憧憬し、現代の図書館に魅力を感じられる一冊。

  • 確認先:八王子市立生涯学習センター図書館

    図書館の横断的な歴史の検討というのは実は少ない。というのも「図書館の歴史」というのは基本としては近代的な図書館のサービスの歴史でしかない風潮があるからだ。特に日本の場合は戦後の日野の呪縛(日野市立図書館の初代館長が築きあけた貸出サービスへの過剰な神話化の事を指す)からか、海外比較が一種タブー化されたとも言え、本書にはそのタブーが裏返しのように反映されているとすらいえるだろう。

    というのも、本書において欧州・北米以外の記述が非常に少ないのは一読してすぐさまわかることだが、そのなかでアジアは若干多めに記述されている本書にあって、東アジアが登場してくるのはおおむね江戸期以降にあたるが、それでも中世・近代初期の日本の図書館の存在が見えないのだ(辛亥革命における日本の図書館の功績については記述されているが)。

    一方で本書を読むと、日本で見られる公共図書館への一極集中が必ずしも世界的な潮流になりきれないということ、公文書や会員制図書館、そもそも図書館の権威と価値体系が大きく異なることに気づかされる。図書館「奉仕」という言葉は今でも神話のように位置づけられるが、日野が構築した「奉仕神話」がまったくの幻想(あるいはロマン主義)であり、「奉仕」が立脚する思想や倫理の必要性を痛感する思いでもある。

    ああ、そういえば、「図書館=学習対応の公的書斎」という発想が一笑に付される発想があったことも本書を読んで痛感したこと。版元にはぜひとも「図書館思想の歴史」とか「図書館建築の歴史」とかの出版をぜひとも期待したいところである。

  • 世界史で習った戦争の裏には図書館や修道院の本の略奪があった。かつてはネットが無かったからより知識の収集には貪欲になっていたのか、はたまた書籍の量が権威の象徴なのか。数ページ毎に図や資料があったお陰で飽きずに読み進められた。

  • 図書館のことだけじゃなくて写本のこととかパピルスからの変遷とかかなり広範に扱われててよかった。巻末の世界の図書館の紹介も読んでてかなり楽しかった。

  • 3969円購入2013-03-19

  • テーマ史

  • 「誰でも利用できる図書館」は、たいへんありがたいものなのだと実感。

  • 思っていた以上に写真が美しく新鮮でした。

  • 読書日:2014年6月4日-11日

    古代から現代と順番に図書館の歴史が解ります。
    古代Egypt,Roma等,
    特にUSでは建国と共に図書館も歩んでいたと感じました。

    US人のデューイがこんなにも有名だとは知りませんでした。
    大学で図書館学を学んだ時は数行しか紹介されてなかったので。
    また、カーネギー氏とフアナ イネス デ ラ クルスの図書館に対する情熱が印象強かったです。

    また図書館だけでなく印刷技術や紙の歴史も知れて、
    好奇心が刺激されました。

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