幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
3.78
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本棚登録 : 477
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562047963

作品紹介・あらすじ

大人気の刀城言耶シリーズ最新書き下ろし長編!

戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた三人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。
誰もいないはずの階段から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込むなにか……。

感想・レビュー・書評

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  • 刀城言耶シリーズ。
    戦前、戦中、戦後の遊郭を舞台に、緋桜という名の花魁と、連続する謎の身投げ事件にまつわる怪異が描かれる。
    言耶の謎解きが、あくまで合理的に考えればこういう解釈もできる、という程度のもので、一応解決はするけど、ラストでやっぱり幽女の呪いだったのかも…という余韻を残して終わるところが、さすが刀城言耶シリーズです。
    今回は、ホラーもミステリもどちらも控えめな感じでしたが、遊郭での花魁たちの暮らしや過酷な労働条件、遊郭へ売られた悲しい身の上などの話がとても読み応えがあり、遊郭の歴史を描いた小説として興味深く読みました。

  • 歴史ホラーミステリー単行本。
    【刀城言耶シリーズ】
    昭和初期から戦後に至る遊郭を舞台に、歴代花魁「緋桜」を中心に起きた不可解な事故をめぐる物語。
    遊女の日記として廓の辛い日々が綴られ、女将の証言、作家の絶筆と、シリーズとして展開が少し異なり、本格的に言耶が登場するのは最終盤。
    歴史時代物として重厚なミステリー作品と感じた。

  • 初の刀城シリーズ

    とにかく装丁がコワイので、惹かれました

    内容は花魁の話で、戦前〜戦後の遊廓が舞台となっています。
    なかなかよく調べてらして、ミステリーやホラーとして以外にも、タメになりました。

    花魁たちの深い悲しみや、理不尽さ過酷な労働条件なんかが、胸をうちます。

    最後、うやむや感に似た読後感がありますが、ホラーって案外そんな感じでおわったほうがいいのかも。
    詠み手の想像力が、膨らんで。

    読みながら、頭の中で吉原炎上を思い浮かべていました。

    緋桜さんは、名取裕子で

  • いつもの三津田さんのようなおどろおどろしいオープニングでなく、まったりとのどかな女の子の手記からのスタート。
    とはいえ、読み進めるうちに哀しい遊女の日常と、そして不可思議な自殺・・・いよいよミステリーか?

    最後まで読むと一つ一つが伏線となっていてもう一度読みたい気分に。いや、怖いからもういいか・・・

    読んでいる部屋の蛍光灯が、パチパチしてきた。替えたばかりなのに。本から何か得体のしれないモノがにじみ出ているかのように。
    ふと窓に目をやるとそこには・・・「!!!!」

  • 遊廓を舞台にした物語が、あまりにも上手すぎ。
    時代背景、人間模様が見事。ここが良すぎて、そして書き込みすぎか。
    結果としてミステリーの度合いが弱くなってしまっている。
    ミステリーの醍醐味が薄いので、トリックは納得できるものだけに非常に残念。

  • 戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた、三人の花魁が絡む不可解な身投げ事件。
    誰もいないはずの三階から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込む何か・・・。

    という、刀城言耶シリーズ新作長編。
    これはよかったなぁ。

    戦前「金瓶梅楼」、戦中「梅遊記楼」、戦後「梅園楼」と名をかえ営業された三軒の遊郭。
    そこで感じられた「モノ」と、繰り返される三人の花魁の身投げ事件。
    非常に不穏な空気の中、展開される不可解な出来事。
    これらが花魁の日記、女将の語り、作家による記事、といった3部構成で語られ、第4部でようやく言耶による謎解きがなされます。
    これまでと違っているのがその構成で、言耶が直接遭遇した怪異ではなく、遺された資料などから事件を読み解く形になっています。
    これが大成功。

    馴染みのない遊郭という世界について、非常に興味深くじっくり読むことができ大満足。
    そのため世界にすんなりと入ることができ、起こる怪異についても、さもありなん、という気にさせられます。
    これまでの作品ではホラー部分の投げっぱなしが気になったりすることがありましたが、今回は妙に納得。

    こういった構成のためこれまでのシリーズの登場人物が直接登場しないので、初めての方でも楽しめるはず。
    ぜひ読んでみてほしいなぁ。

  • 民俗ホラーとミステリの融合でおなじみ刀城言耶シリーズ長編の六作目。相変わらず背筋をぞくぞくさせてくれます。これまでのシリーズとはだいぶ趣が異なり、いわくありげな村ではなく遊廓が舞台。戦前から戦後まで度重なる不可解な身投げ事件を扱い、複数の視点から、三代にわたる遊廓の内実と遊女たちの生活を生々しく描く傑作ホラーミステリ。
    第一章の遊女の日記に綴られた体験談は、実に秀逸な怪談でありながら、田舎から家族のために遊廓に売られてきた花魁の悲哀を描く見事な文学作品にも仕上がっている。正直、二章からは蛇足とも思えたくらい一章で満足。
    謎解きの妙やどんでん返しを楽しむよりも、遊廓という独特の世界や、なんともつかみどころのない不可思議な事件の雰囲気を素直に楽しみたい作品ですね。
    題材が題材だけに、性的表現はばしばしでてきますが、いやらしくはなかったですよ。

  • “刀城言耶”シリーズ第六長編。三津田さんの刀城言耶シリーズを読むのも久しぶりだ。どのくらい久しぶりなのかというと最後に「生霊の如き重るもの」を読んだのが2012年6月だったので10年以上前だ。久しぶりに刀城言耶が登場(失礼!)したら懐かしく感じた。さて本書。シリーズ中では異色作であるといわれる。個人的には第一部「花魁」が凄すぎてミステリ部分である第二部~第四部がかすんでしまった様に感じた。第一部で借金のため年若くして遊郭に売られる少女が花魁へと変わっていく様はエロくもあるが同時に悲哀に満ちている。とにかく第一部のリーダビリティは凄いが、この部分はこの作家でなくても書けるものだろう。はっきり言えば他の参考資料を用いれば筆力があれば書けるような。むしろ三津田さんの持ち味が発揮されるのは第二部以降だ。だが・・・その後のミステリ部分はシリーズの中でもやや落ちるクオリティに感じた。残念。全体を見れば第一部と第二部以降のバランスが悪くなってしまったかな。でも遊郭の歴史も知れたし読み物としては悪くなかった。詳細→
    https://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou14508.html

  • 今回も面白かった。
    ページ数も560ページ程あり、読み応えがある!

    9割が遊廓の話で刀城言耶はラストにしか出てこず、他の作品とは少し変わった作風。

    戦前・戦時中・戦後の時代の遊廓について書かれており特に第一章の緋桜の話が非常に長い!
    やけどここでいう花魁になるまでの過程や、なってからの心情が興味深くもあり、非常に悲しくもあって引き込まれた。

    刀城言耶が出ないのに面白く一気読み。
    また第一章のラストでは、ハッピーエンドで本当に良かった〜と思った。この時点では。

    第二章、第三章と読んでてうっすら1代目緋桜は、その後幸せに暮らしてるかしらと思ってたので刀城言耶の解説は悲しすぎて、緋桜が不憫で仕方がない。

    今回の作品は読んでて犯人やトリックをほぼ考える事なく完全に忘れてた。
    むしろ幽女とは?!の事に気を取られすぎた〜

    そして、遊女たちの悲しさや辛さが読んでてなんとも言えなかった〜



  • 歴史物、当時の風俗に興味のある方におすすめです。
    ただ「怖い」という話ではなく、全編通して薄ら寒い気配が漂っています。最後の現実的な推理に関して「そういうことかぁ」と唸らせるところがさすが三津田信三作品です。怖さに欠けるという感想も見受けられますが、私には丁度いいです。時代を跨ぐ構成もノスタルジックで素敵。

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著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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