図説メイドと執事の文化誌

制作 : 村上リコ 
  • 原書房
4.12
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本棚登録 : 142
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562048557

作品紹介・あらすじ

18世紀から19世紀の英国では、全労働人口の約15%が家事使用人として働いていたという。
本書はヴィクトリア/エドワード朝時代の英国カントリーハウスで働くメイドや執事を中心に、無名の人々の暮らしぶりを、残された手紙や日記、帳簿、料理帳、ワインセラー帳、薬の調合ノート、あるいは「使用人規則」など膨大な資料から読み解き、「階下」の知られざる生活を今に示す。
ディケンズやクリスティ、ドイルの小説に描かれた背景世界に興味のある読者も、マナーハウスやカントリーハウスのインテリアに関心のある読者も楽しめる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ヴィクトリア朝~エドワード朝の貴族の館を支える執事やメイドといったいわゆる「階下の住人」を解説した本。
    当時の使用人の言葉や実在する館の写真が引用されていてわかりやすいです。

    残業当たり前、プライベートもなし、恋人さえ規制されるという何重苦にも思えて読んでいるだけでキツそうでした。
    手なんてこすりすぎて血がでるほどみたいだし。
    当時は膝への負担もすごくて職業病だったみたいです。

    それを受け入れられていたのは労働者階級の特に女性にとっては一番手堅い職業だと文化的に受け入れられていたんでしょうね。
    同じことをしても女性は男性のほぼ半分程度しか賃金がもらえなかったそうですし。

    世界大戦以後は女性は活躍の場を増やしていきます。
    それでも貴族は前時代的な考えを捨てないというところに頭の固さというか柔軟性のなさを感じたというか。

    でも一度はイギリスの貴族の館は行ってみたいです。

  • 18~19世紀の英国では全労働人口の約15%の人が家事使用人だった!?シャーロック・ホームズ全盛期でもあるヴィクトリア朝やエドワード朝時代のメイドや執事の人々の暮らしぶりがよくわかる
    https://twitter.com/booklogjp/status/250011747333861376

  • 第一次世界大戦後までのイギリスのメイドや執事について、あらゆる角度から解説されています。
    肩書ごとの仕事の違いや複雑な人間関係、テクノロジーの発展に従って変わる仕事、大戦がもたらした意識の変化など、読み応えがあり、とても勉強になりました。
    現在ナショナルトラストによって管理されている、昔の貴族のお屋敷の写真などもあり、当時の暮らしがイメージしやすくなっています。

    ◇おすすめポイント
     ・当時の暮らしぶりをイメージさせる写真や資料
     ・細かな項目ごとの詳細な解説
     ・翻訳がとても読みやすい

    ◇こんな方におすすめ!
     ・20世紀初頭までの貴族の暮らしに興味がある
     ・執事やメイドの仕事や暮らしに興味がある
     ・当時を舞台にした物語の背景を知りたい

  • 「ご主人様にかしずく」ような立場ではない、下層の家内労働者の仕事内容、生活の実態などについても触れられている本。

    想像を絶する重労働ですが(個人的には、単純に「重量物を運ぶ」といった仕事以上に、猟で仕留められた後、熟成の過程で蛆が湧いた鳥の羽根を毟るといった汚れ仕事が辛そうだと感じました)当時はお屋敷で働くことに一種のステイタスもあったし、下位からより上位の使用人に成り上がるチャンスもあったという意味で、辛いだけの仕事ではない側面もあったのですね。

    まぁ、煌びやかな世界に生きられる人はどの時代でも少数派ってことだな、とは思いました。

  • 逗子図書館

  • ヴィクトリア/エドワード朝時代の英国カントリーハウスで働くメイドや執事を中心に、無名の人々の暮らしぶりを、残された手紙や日記、帳簿、料理帳、ワインセラー帳、薬の調合ノート、あるいは「使用人規則」など膨大な資料から読み解き、「階下」の知られざる生活を今に示す。
    元々執事とか大好きで、かつてのイギリスの貴族の生活には興味があったのですが、華やかな表の面だけに注目していて詳しい知識は何もなかったので、使用人の生活がどんな風だったのかとても勉強になりました。廃れていったわけも、時代の流れとリンクしてなるほどなと。使用人というと単に嫌々つく仕事というイメージだったけど、当初は自分の生活を保障してもらえて出世するチャンスでもあったのね。写真がカラーで面白かったです。ただ結構単調で長いので、もうちょいあっさりでも良かった。

  • 床や調理器具を砂つけて磨くとか、さすが石の文化は違う。日本じゃあそれは無理だわー
    執事は使用人含め家全体の管理人(家によっては、家令もいる)で、フットマンは給仕ということがよくわかった。
    メイドは多くの種類にわかれていて、メイド頭、下ごしらえ、洗濯、掃除、奥様お嬢様の身支度の手伝い、ナニー……
    ナニーはビールたくさん飲まされてたそうですよ。今じゃアウトだけど、当時、ビールは工程上必ず沸騰が入るけど、水は危険だから。らしい。
    男の使用人も庭師、フットマン、御者、コック……
    それぞれに給料、居室というか寝る程度の暇しかないので寝室の待遇等、まったく違う。

    お邸の方々は、上の階に住んでいるのでアッパー・ステアーズ
    使用人は地下か屋根裏なので、ビロウ・ステアーズ
    こういう区分があるのだけれど、昔は使用人は常に主人の側に控えていて、いつでも用事を仰せつかったけれど、プライバシー概念が出来てからは、ベルを鳴らして呼ぶ方式になり。
    メイドの種類によっては、お邸の表側を一度も見たことがなく何十年……という人もいたらしい。
    銀器磨くのも大変。当時は暖炉、オイルランプの時代なので、すぐ曇ってしまう。
    使用人の使う階段と、お邸の方々の使う階段も分けられて、お邸の方々の目にふれてはならない! だから、お邸の方々が起きる前に暖炉の掃除したり(全室にあるも同然)、トイレの掃除したり。

    このころのトイレは、いわゆるおまる。
    チェンバーポット。
    お部屋で足したご用の入ったポットを抱えて、狭い使用人用階段をのぼりおりして捨てて、真珠のように磨き立てて戻すわけです。
    ヨーロッパ・トイレ博物誌(海野弘 新見隆 フリッツ・リシュカ 伊奈英次 INAX 第3空間選書1988)読んだときに見た立派な便器。
    青い花模様とか描いてあって、とても便器には見えなかった。
    ご婦人用の方がだいたい美しい模様だったような記憶。
    上下水道が流通するまでは使用人がこのシモのお世話をしていたので、水洗トイレの発達はかなり喜ばれたそうな。

    そういえば、平安時代の貴族もトイレは箱。
    男性側は尿筒(しとづつ)ってので支えてもらって、お庭に還した模様。
    なんの話集だったか忘れたけれど、日本最古のスカトロジー話じゃないかってのが載ってる。

    とある美しい姫君だったかに、想いをかけていた公達がいまして。
    懸命に恋文を送るけれど、まったく相手にしてもらえない。
    公達、思いつめて「彼女の中身はしょせん他の人間と変わらない。彼女の不浄なものを見れば、この恋も冷めるに違いない!」
    彼女の部屋から、女官がご不浄の入った箱を持って出てくるところを襲い、「さあ見てやれ!」と蓋を開ける。
    すると、かぐわしい橘の香り。
    公達は匂いを嗅いでたまらなくなって、小の方をすすってみる。香り高く作られたジュース。
    大の方をつまんで、食べてみる。何かおいしいものを練ったもの。
    公達は、「美しい人には隙がない……」とガックリしてしまう。

    というお話。
    そういう暴挙に出るだろうことをわかって用意させたっていう、その女性の頭のよさを語ってる。



    使用人文化が廃れたのは、彼ら彼女らを雇っておくのに税金が高くなったこともありながら、産業の発展と、戦争が原因だというのがおもしろかった。
    当時、ろくな産業がなかったころは、カントリー・ハウスというのは、地域の住民にとって、いい働き場処だった。
    (カントリー・ハウスは田舎とか領地、郊外にあるお邸。マナー・ハウスは都会のお邸。)
    労働は多いかもしれないけれど、食事はもらえる。寝床もある。お給料も少ないけれどある。うまくすれば、技術を身につけて、料理屋を開けるかもしれない。とかね。

    第一次世界大戦だったかあたりから、戦争が起こる。男手が足りない→貴族に「おまえのところの使用人に、兵士になることを薦めない」とおふれ→使用人を戦争に。
    まずこれで、男手が圧倒的に不足。
    次にメイド。
    兵器を作るためなどの工場が増えると、働き手が必要になる→メイドが働き手になる→メイド不足。

    メイドのお給料より少額でも、工場の労働は時間制限あり。お邸で一日中、いつでも呼び出しがあれば応じなければならないなんて、不自由さはない。
    戦争から戻ってきた男たちも、兵士として「貴族も平民も一兵士としては同じ扱いを受ける」=「人間として同じもの」という、それまで知らなかった価値観を学んできてしまったので、今までどおりの給料じゃ働いてくれなくなる。

    だから、どんどん人が減り。貴族は使用人が働くということを前提にしていた生活を維持できなくなり、その文化が消えてしまったと。

    p161
    オフィーリアの話がおもしろかった。
    画家ミレイの有名な絵に、女性が花咲く池に仰向けに浮かんでいる絵がある。何かを捧げ持とうとしたように、両手を水面に差し出して。
    あの美しい絵。

    1851年、ウィリアム・タイラーが、下部で石炭を燃やして温めるバスタブを考案。
    (それまでメイドが、お邸の方々の部屋に用意したバスタブに、沸かした湯をポットでもって何往復もして満たしていた)
    その翌年に、ミレイが、リジー・シダルをモデルに、何日もかけて、オフィーリアを描いた。
    完全に衣装を着込んだ彼女は、草花を浮かべて浴槽に横たわらされていた。その浴槽は、下からランプで温められていた筈だった。
    が、モデルは肺炎になり、画家は彼女の父親に治療代を払った。

    まだまだ、当てにならなかった模様(笑)

  • 図書館にて。ヴィクトリア朝〜エドワード朝の、使用人の毎日の生活ぶりが詳しくわかる。小説じゃないけど、具体的な仕事の様子が書かれているので、各部署の使用人たちが働く風景が目に浮かんで楽しめる読み物。
    第一次大戦後の人材不足や、労働者の意識の変化など、興味があったことも解説されていて、理解できてよかった。
    気になる所を読み返したいけど、買うには高くてちょっと迷う。

  • 現在はもうファンタジー世界の住人になりつつある家事使用人が多く存在した時代を、写真と資料、当時の建造物から振り返り紹介する本。当時の面白いエピソードを紹介する新書っぽい軽いつくりの本なので、面白いんだけど、創作の資料としてはちょっとものたりない感じ。(いや、これに出てくる一次資料をあたればいいんでしょうけどね)
    しかし現代にも通じる「便利なものがあるんだから使えばいいじゃん!」「設備投資より人件費の方が安いし!」の攻防が面白い。(働く方はたまったもんじゃないだろうけど)

    ここに登場する細分化された各職が成立しなくなったのが、第一次大戦で多くの男性使用人が軍隊に志願し(させられ)たせいというのが作者の考えらしいが、近代戦争で職業軍人以外の市民が戦争参加するきっかけとなったのが大量生産できるようになった近代兵器であることを考えると、いろいろなことがつながっているんだなぁと思ったことだった。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
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