本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂

  • 原書房
3.13
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本棚登録 : 333
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562049691

作品紹介・あらすじ

希少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、
彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート! 
古今東西の本泥棒たちの驚きのエピソードも交えて描く、
古書をめぐる手に汗握るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 古書店から稀少古書を盗む男、それを追う古書店主の手に汗握る、ノンフィクション。
    そう、ノンフィクション!
    てっきりフィクションだと思って手に取ってびっくり。
    著者自ら、追う古書店主や被害にあった他の古書店主達、更に盗んだ本人にインタビューを繰り返していて、途中から著者自身も自分は大丈夫なのかと不安定になるほどのめり込んで書かれているので、とても面白い。
    ただ、タイトルから犯人はただ盗んだ本が好きで好きで自分のものにしたかったのだろうと思っていたのに、単に自分のステータスにしたかっただけで、これがあったら自慢出来るという稀少古書リストを持って物色する姿には幻滅しかない。
    いや、だめだけど!
    好きだって盗んじゃだめだけど!
    古書店主の側は皆、短い発言にも本への愛が溢れているので余計辛い。
    私は本は読めることが最重要なので、初版や装幀の凝ったものを集める気はないけれど、気持ちはある程度わかる。わかるよ!それを盗むとか!
    自分が持っていないものを売っている古書店主はずるいから盗んでいい、という犯人の論理はあまりに身勝手で幼稚でイライラしたが、これが犯罪者の心理か、と生の声に触れたのを貴重には思う。
    でも、犯人には冒頭の引用をもう一度投げつけたい。

    「持ち主からこの本を盗むか、借りて返さない男は……けいれんに苦しめられ、家族は皆、呪われてしまえ…… 」(中世の写本に記された呪いの言葉)

    盗まれたと届けても、たかが本だろうという態度を取る警察その他が描かれていたのも胸が痛かった。
    人の体の維持に関わるパンを盗むのは非道なことだけれど、本は人の心の食糧だ!必需品だ!同じくらい非道なんだよ!

    様々な本や作家の話もちらほら出るので、それも面白かった。
    ラスト付近の行き過ぎた愛書家の歴史は壮絶。

  • 実在する稀覯書専門の泥棒とそれを追う古書探偵。
    1冊の稀覯書を手にしたばかりに新たな世界に関わっていくライターの話。

    ノンフィクション。
    古今東西の稀覯書や古書泥棒に関するエピソードはとても面白かった。
    けど…。
    集めるばかりじゃなくて、本読もうや…。
    持ってると嬉しいってのは分かるけど、なんか歯痒いなぁ。
    語り手のライターが古書泥棒の表と裏に翻弄されて、作品全体が今ひとつまとまっていないようで読み難かったよ。

  •  う~ん、なんともスッキリしない本でした。煽り文句から想像した手に汗握る感はなく、著者が犯人にインタビューを繰り返しては、内面を推し測ろうとし理解できないと嘆き、徐々に彼に翻弄されているのではと危惧するばかりなので結局これといった結論がでず、尻切れトンボな印象。 
     只、古今東西のコレクター達の逸話や稀覯本のエピソードは面白く、こういった話を集めたトリビア本にした方がヨカッタのでは…なんて身も蓋もないか(笑)

  • 他人事だと思ってはイケナイ。。。

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    「希少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、
    彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート! 
    古今東西の本泥棒たちの驚きのエピソードも交えて描く、
    古書をめぐる手に汗握るノンフィクション。」

  • 思ったよりも、「愛」は感じられなかった。

    ギルキーは犯罪者なので、感情移入のしすぎは良くないのだろうけれど、それにしても、作者はギルキーをずいぶん突き放して見ているのだな、と思った。
    そもそも、ギルキーは、本を愛しているというよりは、稀覯本をたくさん持っている教養ある自分を愛しているのであって、古書店主たちとは違うわけで。

    ギルキーにはギルキーの論理があり、この世界が不公平で不条理であることは確かで、そこから、泥棒への道と諦めへの道との分岐点において、人は何を選ぶのか。

    本を所有したい欲求、もっと言えば、美しい本を所有したい欲求というのはある。それは本に限らず、美術作品においてもそうだ。そして、それを手に入れたことで、いつでも手に取れる状態になったことで、満足する、というのもある。誰かに見せびらかしたい、というのではなく、ただ自分の中の満足として。それが「愛」なのか、それとも、愛しているから多くの人の手に渡ってほしいと願うのか。

  • 2022年7月9日読了

  • 稀少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート!古今東西の本泥棒たちの驚きのエピソードも交えて描く、古書をめぐる手に汗握るノンフィクション。

  • 毎日足しげく通っている三省堂(買うとは言ってない)でたまたま手に取ってみて面白そうだったので、隣にある図書館で借りてみた。

    なんかもっと中世とか近世の話かと思ったが、2000年代のめちゃくちゃ最近の話であった。

    金目的ではなく単純に本が好きな人間がついつい本を盗んじゃうという実はに基づいた話。ドキュメンタリー的なものか。

    内容はまあ読んでくださいって感じだけど、こういう犯罪を犯す人間ってとにかくサイコパスというか罪悪感とかないんだなっていうのが犯人の言動からよくわかる。

    犯罪そのものよりも犯人のどこまでも自分は悪くないっていうスタンスの思考がなかなか衝撃的である。

  • ノンフィクション!

    読書家は、本の内容あるいは本を読むという行為が好きな者。一方愛書家(bibliophilia)は〝書籍〟という物体を愛する者。

    (P.18,20)
    「本とは物語の入れ物であり、そしてそうである限り、物体としての本は所有者の歴史の産物、記憶の容器である。」「本は内容を伝える手段にとどまらない。それをはるかに超える存在だ。」

    本を読むきっかけ・読んだ時の感情・読み終わった後のストーリー、全て思い出が詰まってますよね。またそれが誰かの手に渡り、つながっていく。それが500年の歴史を持っていたなら…その書籍は、確かに単なる物ではない。

    実際にいた本盗人にとっては、それが
    思慮深く先見の目をもった、お金と地位のある上流階級の証として存在していた。

    認められたかったんだろうなぁ。
    貧困にコンプレックスがあったんだろうかなぁ。
    自分の存在をあるがままで受け入れてくれる人が
    そばにいなかったんだろうなぁ。
    と思いました。
    とても心理分析的な内容で、私は面白かったです!

  • タイトルを見て感じたほど読んでいてわくわくしなかったのは、結局本泥棒が愛しているのは「本」ではなくて、「稀少価値のある古書を数多く所有している自分」なんだなあと、がっかりしたから。
    そこには、本に対する愛は感じられなかったな。

    それより、高価な稀少本を盗まれても警察に相手にされず、泣き寝入りするしかなかった古書店主が、名探偵ばりに推理をし、古書店組合で情報を共有し、遂に警察を動かすほどの活躍を見せる部分の方が面白かった。

    さらには、古今の愛書狂と言われる人たちの、ここのエピソードの方が面白かった。
    ということは、この本の構成に問題があるのかもしれない。
    だって、一番ページを割いて、一番読ませたかっただろう本泥棒の部分が一番つまらなかったんだもの。
    残念。

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