- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562052981
作品紹介・あらすじ
三助、屑屋、活動弁士、赤帽、バスガール、倒産屋……。
今では姿を消した、懐かしい昭和の職業全115種を
仕事内容から収入額、労働時間まで網羅し、すべてイラスト付きで紹介。
汗と知恵で激動の時代を生き抜いた人たちの記録!
感想・レビュー・書評
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「杣人(そまびと)」について調べようと、手に取った本。
いやぁ予想以上に面白くて、つい何度も読み返してしまった。
図鑑の形式なので、開いたどのページからでも読めるのがありがたい。
タイトルには「昭和」とついているが、どうしてなかなか、職業の盛衰が日本史・文化史の一面とも言え、形を変えて連綿と受け継がれているものも数多く、大変勉強になった。
丹念な取材と読みやすさに星5つではとても足りない。6個でも7個でもさしあげたい。
本書でいう「昭和の仕事」とは、昭和を象徴するもの、昭和に消えた仕事、昭和に全盛期を迎えた仕事、など150種類である。今では見つけることが困難なものもいくつもあり、初めて知るものもたくさんあった。
最初に書いた「杣(そま)」もそうだし、「カストリ雑誌業」「新聞社伝書鳩係」「おばけ暦売り」「大ジメ屋」・・・・「テン屋」「オンボウ」や「羅宇屋」にいたっては、???となる。
「靴みがき」は今も有楽町・交通会館前広場の風物詩として華麗に生き続けている。
お揃いのハンチング帽とお揃いの黒ベストに蝶ネクタイ、しかもこれが大人気の靴磨き集団だ。(宮城まり子さんもびっくりされることだろう)
子どもの頃「大きくなったら何になりたいか」と親に聞かれ、「チンドン屋さん」と言って叱られたことなども懐かしく思い出した。なっておけば良かったと、しみじみ。。
そして隆慶一郎さんがこよなく愛した「道々の輩」も、この時代には生き生きと活躍していたことをあらためて知ることにもなった。
中には詐欺師もいて、「泣きばい」などと呼ばれている。
これは寅さんが札幌大通り公園で船越英二さんとグルでやっていた「万年筆売り」だ。「ばい」とは「売」のこと。(源ちゃんがやっていた寺男も登場する。)
こんなものまで職業の範疇にいれるなんてと思われそうだが、貧困が生む詐欺まがいのことは案外日常的だったのではないかな。詐欺師は[3丁目の夕日]にも登場する。
では豊かになった今は詐欺師は存在しないかというと、むしろより巧妙・悪質になり、しかも組織化している。そもそも豊かになったとは、どういうことだろう。
この本を読んでいると分からなくなってくる。
貧しく不便な時代、そこには何かひとつ買うにでも会話があった。地域社会というものもあった。
ぬくもりや感情を交換することが、生きることそのものだったのだ。
合理化を求め、ひたすら早く希望のモノが手に入るのは、そんなに良いことなのだろうか。
私たちの祖父母の世代が心底望んでいた時代に、本当になったのだろうか。
「昔は良かった」という雑な総括論で締めくくる本ではいし、私もそういう受け取り方は毛頭していない。
見開きの2ページにひとつの仕事の紹介。成り立ちと歴史、仕事の内容などが簡潔に説明され、左ページにはシンプルな線のイラスト入り。
当時の給与データも記され、参考文献も載っている。
興隆を誇った仕事が何によって消え去る運命となったか、考え始めるとキリがない。 -
先日読んだ『戦前尖端語辞典』と内容が被っている所もあり、またフィクション作品等で既によく知られている職業も多かったが、それでも初耳の職業も幾つもあった。既知のものも、歴史や実態などは詳しく知らなかったものがほとんどだったのですこぶる勉強になった。
古いものは江戸や室町の時代からほぼ変わらずあった仕事というから驚きだ。
為政者が変わり、世の中の価値観が大きく変わっても、人々の暮らしを支える庶民の仕事は大きく変わらなかったんだということを気付かされる。
前書きで著者はこれらの仕事が消えてしまったことに一定の理解を示しつつも、現代は「体温」が失われてしまった、と嘆いている。
確かにそういう面もあることは認めるけど、紹介されていたものには違法性の高いもの、人権侵害的なもの、貧困から抜け出せないが為の悲哀に満ちたものが多く、寧ろ「今は残っていなくてよかった」と思えるものが多かった(勿論現代は現代で社会的問題のある仕事はあると思う)
以下、特にへーってなった仕事
新聞社伝書鳩係
ロバのパン
棒屋
おばけ暦売り
天皇陛下の写真売り
テン屋
ミルクホール
三助
伯楽
オンボウ
代書屋
損料屋
ドックかんかん虫
屑屋・バタ師・よなげ師 -
昭和の仕事の記録を残す本。115種を収録。
・運輸の仕事・・・赤帽、押し屋、車力屋、灯台職員、木炭バスなど。
・林業・工業・建築・水道・金融・不動産の仕事・・杣、炭鉱夫など。
・情報・通信の仕事・・・カストリ雑誌業、新聞社伝書鳩係など。
・製造・小売りの仕事・・・文選工、毒消し売り、ロバのパンなど。
・飲食店の仕事・・・カフェー、テン屋、ミルクホールなど。
・サービス・その他の仕事・・・ジンタ、損料屋、ニコヨンなど。
2ページ見開きに、その仕事の概要と詳しい説明で1ページ目。
イラストとデータ(収入・代金・人数等、仕事によって異なる)、
蘊蓄と参考文献が2ページ目という構成。
昭和における「賃金・物価の遷り変わり。コラム2篇。
主な参考文献有り。索引有り。
がっつりと読み込んでしまいました(^^♪
“昭和の仕事”・・・江戸時代、いや遥か以前からある仕事。
昭和初期には消えてしまったけど、時代の象徴のような仕事。
その時代の仇花のような仕事。戦後の混乱期の仕事。
近代化や技術発展で消えてしまう、または細々と残っている仕事。
それらのほとんどに、現代の仕事以上の人の繋がりを感じました。
徒弟、奉公、修業、同業集団、客との会話。濃厚な対人関係に。
遥か昔、大きな箱を背負って来た富山の薬屋さんを思い出し、
懐かしかったです。楽しい人だったなぁ。
さすがに、混乱期の詐欺な仕事にはぞっとしましたが。
また、文学や映画、楽曲に登場する職業も多いので、
調べる上での参考資料にも使える内容だと思いました。 -
赤帽、貸本屋、天皇のご真影屋・・・大正、昭和の前半くらいまでは見られたが今はなくなってしまった多くの職業を見開きイラストつきで紹介した興味深い本。
個人的に一番インパクトがあったのが「新聞社の伝書鳩飼育係」。イノベーションというのは一にも二にも「コミュニケーションと軍事」だったのだなと(伝書鳩はもとは軍用で民生転換されたもの)。丹精込めて育てた鳩を「予備」も含めて5羽を同時に放ち、全部帰ってくるのが一番の喜びだった、とか妙に胸に迫る。昭和30年代までは残っていたらしい。
一つ気になったのは、「昔は貧しくても地域の会話があった。現代が忘れてしまったものがここにはある」というよくあるタイプの総括。
例えばスラム街の空き缶拾い、大学時代、開発経済学のゼミでフィリピンのスラムにホームステイしたときに実際たくさんいた(スカベンジャーと呼ばれる)。別に失われた仕事ではない。確かに大家族で思いのほか明るかったが、かと言って仕事でのコミュニケーション(?)を楽しんでいたわけではない。
当時も今と同じく人生は生きづらいものだっただろうし、リア充アピールはうざかっただろう。そして、ちょっとした会話で知らない人と心が通う瞬間は楽しいものだっただろう。
過去を理想化する小道具としてのノスタルジーに安易に浸ってはいけない、そんな感想も持った一冊であった。 -
イラストは正直上手とも思いませんでしたが、絵があるとないとでは理解がまるで変わってきますね。この手の本を読むと現代の世の中の見え方も変わってきます。
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●三輪タクシー。昭和24年大阪で。料金が半額なので半タク。→トゥクトゥク
●炭鉱夫。江戸末期から昭和30年代迄。危険な仕事のため、政府の官営事業となってからは監獄の囚人に採掘を行わせた。地下300メートルほどの現場に向かう。1日に3メートル掘り進めていた。
●カストリ雑誌。昭和25年くらいまで。粗悪な紙で作られたエログロ嗜好の大衆娯楽雑誌。
●蹄鉄屋。馬は酷使されると、蹄が痛んでしまう。U字型の蹄鉄を蹄に吐かせることで、損傷を防いだ。明治時代陸軍がフランスやドイツから指導を受けて培った。
●おばけ暦売り。旧暦と新暦を併記した暦を使って売る。明治6年に政府は西洋の暦に合わせた。明治5年12月2日が明治6年1月1日になった。
●天皇陛下の写真売り。
●泣きばい。倒産したなどと泣きながら嘘の身の上話を披露し、同情する通行人に品物を売り付ける詐欺商売。
●都内最後の三助だった橘さん。平成27年現在、三助を見ることはできない。
●チンドン屋・ジンタ。美しき天然。
●伯楽。馬専門の獣医
●エンヤコラ。女性の日雇い労働者→ヨイトマケの唄で。
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カチカチ、切符を切ってもらう、汽車や乗合バスのバスガールさん、暖かみがあり嬉しかったです。エレベーターガールさん、最高のおもてなしですね(^-^) 富山の薬売りさん、お疲れ様です。ロバのパン、サンドイッチマン、チンドン屋さん、ある意味「華」がありました。靴磨き、下から客を見上げるとその客の人生や生き方が見えるとか・・・。屎尿汲み取りの方、お疲れ様でした。昭和の仕事、すべからく、コミュニケーションで成り立っていたんだと思います! デジタル、IT、平成で失われたのは「会話」ではないでしょうか。令和では「袖すり合う縁」の復活を!
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紙芝居屋、傷痍軍人、富山の薬売りなど、懐かしい。殆ど知っている。というか、話が通じる人は、少数。
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古い小説や風俗記事を読む際の何となく分かるけど、詳しくは分からないという職業が盛りだくさん。参考になる。
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昭和の消えた仕事というより、今ではもうない、若しくは少ない仕事を紹介している本。調べ物には良い。見開きで解説とイラストが付いていて、索引も付いているという。
消えたといえども、社会の変化や技術発展で代替手段が出たから消えたというのもあれば、一時期話題になっているので仕事となったものもある。特に詐欺系は後者が大きいなと。名前は変わったけど、実質変わらないものもある。<仕事>はやっぱり人がするものだかあ文化的背景や社会背景は切り離せないなと改めて。
おお、なにやら興味深い本を読まれましたね。
>ぬくもりや感情を交換することが、生きることそのものだ...
おお、なにやら興味深い本を読まれましたね。
>ぬくもりや感情を交換することが、生きることそのものだったのだ。
>合理化を求め、ひたすら早く希望のモノが手に入るのは、そんなに良いことなのだろうか。
全くもってその通りだと思います。
昨今、日本の技術力神話の日本すごい!という話がありますが、実際のところは、長く庶民の暮らしが国の大きな支えになっていたのではと思います。
nejidonさんのおっしゃるように、アメリカ的な価値観はそもそも合わないのではと疑念を抱いています。
スーパーや大型ショッピングモールの登場で商店街の町並みはグッと勢いを失いました。
日本は庶民こそ大事なのに。
AI技術の登場で職業はますます少なくなるようです。その時このような本の価値はいよいよ高まってくると思います。
コメントありがとうございます!
このようなレビューにコメントをいただけるなんて、とても嬉しいです。
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コメントありがとうございます!
このようなレビューにコメントをいただけるなんて、とても嬉しいです。
はい、それはそれは興味深い本でしたよ。
今回は図書館で借りたものですが、いずれ購入して傍に置いておこうと思います。
メディアの「日本すごい!」は、もう食傷気味です。
いくら最先端にあるような技術・企業に見えても、いつかは消えゆく運命かもしれません。
スポットを当てるべきは、汗と工夫と知恵で時代を生き抜いてきた庶民の方ではないかと、私も考えます。
そこには人と人の関係があり、人を介して仕事をするから人を大事にしていたのです。
人を大事にするから、人の作ったモノも大事にしたのではないでしょうか。
もちろん、昔が良いという単純な話ではありませんよ。
見落としがちな大切なものが、この本の中に息づいているように思います。
こちらの商店街もすっかり勢いを失って、今やシャッター街となっています。
かつての活気があふれた町は、もう戻らないのでしょうか。
少し貧しくならないと、誰も本気で考えないのかもしれませんね。残念なことですが。