敗者が変えた世界史 下 リー将軍、トロツキーからチェ・ゲバラ

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562056842

作品紹介・あらすじ

古代から20世紀までの歴史のなかから、大志を抱きながらも敗れ去った13人を選び、史実を探りつつ、味わい深い筆致でこれら13人の運命を描いた。巧みな語りと、波瀾万丈のドラマが一体となった13章は、権力、歴史、後世の評価についての考察へと読者を誘う。

感想・レビュー・書評

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  • フランス人らしいエスプリの効いた言葉で、限られた紙数ながら、忘れがたい人物伝となっている。
    例えば、冒頭のコンデ大公の評伝はこう始まる。

    「21歳で華々しい武勲を立て伝説の人となった者は、その後どう生きるべきだったのだろうか。責務と名誉を望みながら、同時に反抗者であることを表明するという生き方をどうつらぬくべきだったのだろうか。裏切ることなく味方に背を向けるにはどうすべきだったのか」。

    ルイ14世時代のフランスの公爵など日本の読者には馴染みはないのだが、こんな書き出しで始まると読みたくなってくる。

    「一人の人生の運命を決する瞬間は、死と向き合う覚悟をする瞬間であり、死と向きあう決心をした者は、その企てが成功しようと失敗しようと英雄である」というのは、ゲバラが無謀なゲリラ活動に赴くのをやめるよう忠告したナセルに返した言葉らしいが、しばしば絶対的自由を夢見る無政府主義者と誤解されるゲバラを、著者は「純然たるスターリン主義者」と的確に評している。
    しかも「自殺的」な、と付け加えて。

    トロツキーという男を知るには、やはりこの紙数では少なすぎるし、すでに優れた評伝や小説が出ているのでそちらを当たるべきなのだが、執念深いスターリンによる迫害を、「復讐はよく冷ましてからじっくり味わう料理だ」とさらりと表現されると、背景を知れば知るほどこの短い言葉の意味がしみて来る。

  • 歴史上の敗者をテーマとした本の下巻。リー将軍、トロツキー、チェ・ゲバラと近現代史の有名所が揃い踏み。個人的には蒋介石の章が欧州視点の日中戦争観を感じられて興味深かった。

  • 下巻は更に時代が下り、ルイ14世時代の「コンデ大公」ことルイ2世=ド・ブルボン=コンデ、フランス革命時の「フランソワ・アタナズ・シャレット」、南北戦争時の「リー将軍」の後は20世紀に入る。
    トロツキー、蒋介石、チェ・ゲバラ、リチャード・ニクソンは、いずれも現代人であるが、それ故に彼らに関する情報は多く残されており、その中で彼らの成功と没落という面に絞って紙数の制約の中で書くというのは少々難しいようだ。つまり、何となく物足りないのだ。もちろん、彼らの失敗や没落の原因・要因に焦点を当てるように工夫されていることは分かるのだが、登場人物の全体像が見えてこない気がする。その意味で、下巻では、シャレットの話が一番面白かったように思う。ただ、それは、彼について何も知らなかったことが理由なのかもしれないが。

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