電気自動車は本当にエコなのか サプライチェーンの資源争奪戦から環境破壊まで
- 原書房 (2024年11月21日発売)
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感想 : 8件
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784562074808
作品紹介・あらすじ
アフリカの子供たちが手掘りしたリチウムが、電気自動車をめぐるサプライチェーンの第一歩だった。そして中国の巨大電池工場に投資家たち……。世界中を取材したジャーナリストが一大産業の真の姿を警鐘とともに訴えるベストセラー上陸!
感想・レビュー・書評
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今年読んだ本で読む価値があると思った本、個人的に暫定1位。偉そうな言い方になっちゃったけど、、
まずこの本を読んで電気=温室効果ガス削減と安易に考えてはいけないなと思った。表面上ではそう見えていても、その過程でかえってガスを増やしている可能性もあるためだ。このような環境的なデメリットはよく聞く話だが、私にとって盲点だったのは倫理的な問題も孕んでいることだ。
まずこのEV需要の高まりはリチウムをはじめとした金属の普及だが、これは世界の偶然と偶然が生み出した産物であること、
そして20世紀に発展途上国が先進国と同等な権利を持てるように成立した今日の世界が、結局は都合の良いように利用されてしまっているという皮肉が、この本から読み取れた。
元の英語タイトルがThe winners and losers in the race to go greenだけど、まさに競争が描かれている。
最終的には著者はヨーロッパで自給自足的なサプライチェーンを築かなきゃいけないって言ってるけど、ロシアと外交的、軍事的に緊張した関係にあるから、まだまだ解決には至らないのかなぁと思う。とはいうものの、この大きな問題にどう対処すればいいのか検討がつかない私もなんだけど、、
持続可能な社会にむけた世界的な動向を、今まで考えたこともなかった視点で批判的に論じている画期的な本だった。
近年電気自動車の需要が高まっているが、その原材料であるリチウム、コバルト、ニッケル、銅をはじめとした金属の発掘、生産が倫理的な問題の引き金になっていることに筆者は言及している。
こうした問題を解決するためには、原材料の調達を海外から輸入するのではなく、ヨーロッパで完結するようなサプライチェーンにすべきだと言う。
どういった問題があるのかについては、
温室効果ガスを削減しようとしても、結局EVの製造過程でCO2を排出してしまういわゆる炭素のモグラ叩きゲームだったり、子どもを炭鉱夫として働かせる児童問題、
金属から発生する有害物質による人体への健康被害、
など電気自動車生産にあたっては多くの倫理的な問題をはらんでいる。
こうした問題を解決する手段のひとつに、深海の海底火山で金属を採掘するという動きが見られるようだ。しかし、海の底に生態系を形成している生物の多様性を損なわせてしまう可能性があり、科学者はそういった行動に慎重になっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
骨太な本である。最終プロダクトで環境評価をするのではなく、プロダクトを生産する流れ、サプライチェーンや、根本となる元素を辿り、グリーン社会を形成するためにはどのような思考が必要なのかを提示してくれている。
このバッテリー狂想曲は一過性のものなのか、はたまた持続可能なのか。
世界は複雑で、変化するし、過去の人間の大罪の結果は消すことができない。だからこそ、慎重に考え、選択していくしかない。 -
↓利用状況はこちらから↓
https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00572446 -
1. バッテリー材料の需要と資源争奪:
EV普及には大量のリチウム、ニッケル、コバルトなどの鉱物が必要となり、その需要は急増すると予測されています。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、リチウムの需要は2030年までに30倍、2050年にはさらに増加する可能性があります。
イーロン・マスクは、テスラの目標達成には「現在世界で生産されているリチウム総量の4倍が必要になる」と述べており、リチウムの豊富な埋蔵量に期待を示しつつも、その確保の困難さを示唆しています。(「しかしテスラの目標を実現するには、現在世界で生産されているリチウム総量の4倍が必要な光景になるだろう。悪くないじゃないか。素晴らしい」とマスクは力説する。「地球にはリチウムが大量に存在する。最高じゃないか」)
文献は、かつて石油を巡って中東が分割された時代から、資源争奪の構図は本質的に変わっていない可能性を示唆しています。(「これらの鉱物を採諸国がかつて石油が必要というだけで中東を分割した時代から多くの点で進歩できないままだ。」)
2. 中国のサプライチェーンにおける支配:
中国は、EVおよびバッテリー関連のサプライチェーンにおいて圧倒的な地位を確立しています。政府による巨額の補助金などの産業介入により、中国の電気自動車産業は急速に成長しました。(中国のEV産業への政府の助成金は約600億ドルに達しています。)
リチウムの採掘・精製においても、中国企業が大きな役割を果たしています。天斉リチウムのような企業は、世界の主要なリチウム生産者であるチリのSQMの株式を大量に取得し、その支配を強めようとしています。
バッテリー材料の精製においても、ガンフォン社は水酸化リチウムの中国最大のメーカーであり、その高純度の水酸化リチウムはテスラの強力なバッテリーに使用されています。(「ガンフォン社は水酸化リチウムの中国最大のメーカーで、同社の水酸化リチウムは極めて純度が高く、テスラの非常に強力なバッテリーに使われている。」)
コバルトに関しても、コンゴ民主共和国における採掘や、華友コバルトのような中国企業によるサプライチェーンの構築が記述されており、中国への依存度の高さが示唆されています。(コンゴでは、手掘りの採掘者によって採掘されたコバルトの90%以上が投資家や中国の企業に売却されていました。)
3. 環境破壊と人権問題:
バッテリー材料の採掘は、環境に深刻な影響を与える可能性があります。アルゼンチンの塩湖におけるリチウム抽出は、地下水の枯渇や生態系への影響が懸念されています。
コンゴ民主共和国におけるコバルトの採掘は、児童労働や安全対策の不備による死亡事故など、深刻な人権問題を引き起こしています。(コンゴでは、学校教育を受けていない起業家陳華友が設立した華友コバルトの鉱床で、数十人が死亡する事故が発生しています。)
鉱山開発に伴う住民の強制移住や、鉱山からの排水による環境汚染も報告されています。(華友コバルトは、コンゴのカソロ鉱山周辺の住民を強制的に移転させました。また、鉱山から流出した廃石(尾鉱)が下流で少なくとも7キロにわたり広がり、環境破壊を引き起こしています。)
4. 資源の再利用と新たな技術への期待:
使用済みEVバッテリーの再利用(リユース)やリサイクルは、資源効率を高め、環境負荷を低減する上で重要な要素です。クインタ・エナジーのような企業は、使用済みEVバッテリーを再利用し、エネルギー貯蔵システムとして活用する取り組みを行っています。
新たなリチウム抽出技術の開発も進められています。イーロン・マスクは、ネバダ州で食卓塩からリチウムを抽出する計画を明らかにしています。(「テスラはネヴァダ州にすでに1万エーカー、およそ40平方キロメートルの土地の所有権を獲得しており、そこで食卓塩からリチウムを抽出する計画をしているというのだ。」)
深海に存在する鉱物資源の開発も、将来の資源供給の選択肢として議論されていますが、生態系への影響など、慎重な検討が必要です。(深海には陸上よりも多くの生命が存在すると言われています。深海ノジュールの採掘は、生態系に長期的な影響を与える可能性が指摘されています。)
5. EV導入のジレンマ:
文献は、EVが排出ガスを削減する一方で、バッテリー生産におけるエネルギー消費や環境負荷、資源調達における倫理的な問題など、新たな課題を生み出していることを指摘しています。
EVの推進は、化石燃料への依存を減らすという目標に貢献するものの、新たな資源への依存を生み出す可能性があり、そのサプライチェーン全体を持続可能なものにするための努力が必要であることが強調されています。 -
原題 The winners and losers in the race to go green
レアメタルの醜い環境破壊と争奪レース
中国の深い関わり
柴田譲治の作品
