わすれられないおくりもの (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

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  • Amazon.co.jp ・本 (26ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566002647

作品紹介・あらすじ

アナグマは、もの知りでかしこく、みんなからとてもたよりにされていた。冬のはじめ、アナグマは死んだ。かけがえのない友を失った悲しみで、みんなはどうしていいかわからない…。友だちの素晴しさ、生きるためのちえやくふうを伝えあっていくことの大切さを語り、心にしみる感動をのこす絵本です。

感想・レビュー・書評

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  • 大切な人の死と、あとに残された人々による思い出語りと心の整理という、絵本としては何とも奥深い作品です。

    個人的には、小学校入学直前の3月に母に連れられていった地元図書館で初めて自分で選んだ思い出の絵本でした。

    愛情の真理と輪廻を描いた佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」なみに深くて哲学的でもありますが、「死とその後」がメインテーマなので、より直接的な重さがあります。

    当時6歳の私がなぜこの作品を選んだのかは、正直まったく覚えていません。
    直近に身内が亡くなっていたわけでもなく。
    多分、絵柄に惹かれたのでしょうけど。

    でも、借りている間中何度も繰り返し読むほど気に入っていて、寝る時間を守らず、小学校入学前後の時期に重なっていたこともあって、母に怒られたことを思い出します。
    (入学直後の私は、学校から帰ると、ランドセルを背負ったままうつ伏せで昼寝をする子どもだったらしく…。まったく覚えてません)

    6歳の時には気がつかなかったのですが、この歳になって改めて読むと気づくこともあり。

    森のみんなが大好きで色々なことを惜しみなく教えてくれたアナグマが亡くなったのは、秋の終わり。友だちたちは各自の家で冬籠りをし、そして、春が来て外に出られるようになると、互いに行き来してアナグマの思い出を語りあう…。

    誰かを失った時の喪失感は、やはり深いもので。
    すぐには気持ちの整理がつかなくて。
    それを受け止めるには。
    一人静かに時間をかけて向きあうことも。
    誰かと共有することも。
    両方大切だし、下手に焦ったり、無理に気持ちを切り替えようと思わなくてもいいのかもしれない。
    そう思えたら、少しほっとしました。

    大人になっても、というか、大切な誰かと別れる経験を積み重ねる大人になったからこそ、読み返すたびに、一層、心に刻まれていく作品です。



    ※※※※※※※※※



    ここから先は、本作の内容とは関係ない、本当に個人的な思い出です。
    (無駄に長くなってしまいました。
    新型コロナウィルス対策のために長く閉館していた図書館が制限付きでも開館したニュースに嬉しくなって、いろいろ思い出して、つい…。今しばらくは混雑緩和のため訪問自粛による待ち遠しさもあって… つい書いてしまいました。)

    思い返せば、この「わすれられないおくりもの」を選んだ初図書館訪問がきっかけで、私は読書に目覚めました。
    その理由が、壁一面どころか室内いっぱいに置かれた本を眺めて、「これ全部ダダで好きに読めるんだ!」といたく感激したからという…(6歳児のくせにすでに貧乏性で可愛げがなかった…)。

    とにかく、それ以降、2週間に一度、小学校区外にあるお習字教室に母が運転する車で通った後で、「古い本返して新しい本借りたら、晩ご飯までに歩いて帰っといで。お母さんは晩ご飯の支度あるから先帰るわ」と、双子の片割れだった兄とともに二人、校区内にある図書館の前で降ろされるのが習慣となり、それが4年ほど続きました。

    私はいつも貸出上限の4冊を借りてしまうので、かさばると意外と重い本たちを抱えて途中で疲れて、図書館専用として使っていた真っ赤なキルトの手提カバンを何度も地べたに置いて休憩を挟みながら帰る羽目になるという、考えなしの子どもでした。

    なぜ寄り道して半強制的な図書館通いをわざわざさせていたのかを、高校生くらいの時になんとなく母に聞いたら、

    「勉強って、国語でも算数でも、教科書の文章を読むことから毎回始まるでしょ。
    だから本を読むことに抵抗がないようにしとくって大事かと思って。
    図書館ってお金掛けずにたくさん本読めるでしょ」

    とのことでした。

    当時は、その貧乏性な発想が、まさに私の母だなあ、と思ったものでした。
    でも、今思えば、色々な本を次から次へと気兼ねなく読めた経験は、とてもよかったと思います。
    おかげで、今だに図書館通いによって、未読の本や初体験の作家作品を気軽に試し、そこから得られる喜びや発見を、満喫できているので。

    (図書館は基本的に税金運営なので、厳密には「タダ」ではないですね。文中、品がない表現をして申し訳ありません。)

  • ずっと読んでみたかった。
    こんなお話だったんだ。
    自分が亡くなった後に楽しい思い出を語ってもらえるような人生を生きられたら幸せだなと思った。

  • 「アナグマは、死ぬことをおそれてはいません。死んで、からだがなくなっても、心は残ることを、知っていたからです。」

    自分の死よりも、残していく友達の悲しみを気がかりにする、年老いたやさしい物知りのアナグマ。
    アナグマは死んでしまうけれど、アナグマのことが大好きなみんなで、それぞれアナグマとの思い出話をしていきます。

    「みんなだれにも、なにかしら、アナグマの思い出がありました。アナグマは、ひとりひとりに、別れたあとでも、たからものとなるような、ちえやくふうを残してくれたのです。みんなはそれで、たがいに助けあうこともできました。」

    穏やかに死を見つめるアナグマの目線。
    アナグマの死について、思い出を語り合うことでやさしくアナグマがいたことと死んだことを肯定していくモグラやカエルやキツネやウサギたち。
    こんなにもあたたかく、大切に死を見つめる絵本の、なんと素敵なこと。
    文章も絵も、やさしい。
    もし死ぬならアナグマみたいに死にたいし、大切な人を見送る時には、この物語を思い出したい。
    出会えてよかった絵本です。

  • 贈り物ってそういうことかとしみじみ…
    作中の季節が冬から春なので
    その時期と被せると3月の別れと重なって
    より一層しみじみしそう…

  • 読書セラピーの本で「大切な誰かを亡くした時に読みたい本」として紹介されていた。とてもとても心に残った。死別に限らないけれど、もはや会えなくなってしまった人、会わなくなってしまった人たちが私に残してくれたものが、これもあれもと思い浮かぶのは幸せなこと。その人との関係が続いてるってこと。みんな私の中で生きていて、それが私の考え方や、大げさだけど生き方を形づくっている。だから寂しくない…はず!と思えるお話。父を思った。

  • 死が そんな遠くない。 身体はなくなっても 心は残る。 そう信じているから みんなには あまり悲しまないよう 言っておこう。〝長いトンネルの むこうに行くよ さようなら アナグマより〟・・・ この世から いなくなってからも みんなから慕われる・・・ この絵本の語りかけは、残された時間が少なくなった わたしへの とても大切なメッセ-ジとなりました。

  • みなさんはアナグマを見たことがありますか?
    わたしはこの絵本を見るまで、アナグマのビジュアル全体をよくわかっていませんでした。
    しかも「わすれられないおくりもの」のアナグマさんは、賢くてとても穏やかで、やさしいアナグマさんでした。

    「アナグマは、死ぬことをおそれてはいません。死んで、からだがなくなっても、心は残ることを、知っていたからです。だから、前のように、からだがいうことをきかなくなっても、くよくよしたりしませんでした。」(引用)

    心が残るとは、いったいどういうことなのでしょうか。
    しかも心が残ることを知っていると、年をとってからだが動かなくなっても、くよくよしないというのですから、「心が残る」とはなんだかものすごいことのように思えます。

    この絵本は小1の娘に読み聞かせをしましたが、やっぱり最初は「心が残る」ということが娘はわからなかったようで、きょとんとしていました。

    しかしそんな娘も、この絵本を読み終わるころには、わたしの腕をぎゅっと引き寄せて、じーっとお話を聞いていたので、きっと「心が残る」ということのかけらを、つかめたのだと思います。

    ゆっくりと余韻にひたりたくなるこの絵本。

    読み終えたときには、アナグマさんの残したものがきっと、あなたの胸にも宿るにちがいありません。

  • 読んだ事はないが、
    なんとなくぼや~っと(知ってる。)類の本が
    特に絵本には多い様な気がする。
    (表紙とタイトルのインパクトが強いのかな?)

    この絵本もそうだった。
    偶々私の元へやってくる事になった経緯は
    絵本の何かしらの部門で1位になっていた記事を目にした事。
    それを知った翌日、ブクオフにて
    躊躇なく手に入れられる値札をつけて現れた事。

    以上、
    なんてことないきっかけではあるが、
    結果的に今、この絵本は
    すでに家族の一員となって、ごろごろ部屋の一画で
    寛いでいる。(片付けなきゃ。^^;)

    タイトルからの想像される通り、
    絵本は死生観を語ったもの。
    死が齎す恐ろしさと深い悲しみの目を
    ちょっとだけ塞げば見えてくる、
    手の中に残っていた
    大切な人からのおくりもの、のお話。

    知ってる、とか知らないよりも
    読んで後、残ってゆく気持ち…
    大事ですね。うん。

  • かなしかった。

  • 子どもはこの哀感をどう受け止めるのだろう。

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