アベルの島 (児童図書館●文学の部屋)

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566010727

感想・レビュー・書評

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  • この本の終わりが気になって気になって、どんどん読み進める人は多いだろう。ネタバレになってしまうので、多くを語ることは避けるが、夢のような、それでいて現実感のしっかりした児童文学だと思う。

  • 私の子どもが小学校低学年のときに「ロバのシルベスターとまほうの小石」を読ませた。私も読んだが、奇想天外なストーリー展開と、主人公をぎゅっと抱きしめたくなるようなハッピーエンドとで、その本の作者のウィリアム・スタイグが好きになった。
    子どもはいま小学6年生になった。夏休みの課題としてこんどは同じ作者の「アベルの島」を読ませようと思い、私が先に読んだ。

    ページ数は「ロバのシルベスター~」と比べると格段に多く、本文が169ページもある。小学6年生でも楽には読み終えられないかもしれない。
    私も1日では読み終わることができず、かと言ってこの本はアベルの長い長い冒険物語なのでさっと読み切ってしまうのももったいなく、全部で20章ある本文を1日2~3章程度に区切ってを読んでいった。子どもにもそういう読ませ方をしようと思っている。あいだにはさまれたウィリアム自身による豊富なイラストも読むのを助けてくれる。

    ところでこの本の内容を具体的に言えば……いや、こういうタイプの本は細かいストーリーを不用意にオープンにしてしまうと、あとから読む人のドキドキを小さくしてしまうので、やめておく。
    なので、アベルはアマンダと結婚したばかりの新婚ネズミで、ピクニックに出た2人が急な大あらしに遭遇してアマンダがスカーフを風に飛ばされてアベルがそれを追いかけて…まで言っておく。

    それと、たしかにこの本はアベルの物語であって、アベルに次々と降りかかる試練を彼がどう切り抜けるのかを読む面白さがメインだ。でも、書かれていない物語として、アマンダがアベルのいない間にどういう気持ちで、どう過ごしたかを想像するのも楽しいのでは。そのひと手間をかけることによって、ラストは2倍の感動で終えることができるはず。

  • 愛情は溢れているけど、甘ったれだったネズミが最後には一本立ちして、愛するもとへと帰っていく、素晴らしいわね〜

  • 同じ作者の『ロバのシルベスターとまほうの小石』や『くぎになったソロモン』などと同じく、思いがけないことで家族と引き離されてしまった主人公が、艱難辛苦のすえ、長い時間をかけてふるさと(この場合はそれが都会なんだけど)へもどる物語。なんていうと重苦しいけれど、人間のように描かれている主人公のネズミが、とつぜん板をカリカリかじってネズミの本性をはっきしたり、たまたま出会ったひきがえるのじいさんが、きゅうにぺろん、ぱくんとハエを食べたり、あちらこちらになんともいえないユーモアがあって、ときどき声をたてて笑ってしまった。

    しかもテーマは、いわゆるひとつの「自分さがし」なんですよね。今までお母さんにお金をもらって働いたこともなくくらし、そのまま奥さんをもらってのほほんとシアワセにくらしてきたネズミのアベルが、着の身着のままで漂流し、船をつくろうとして失敗したり、フクロウとたたかったり、冬の食料をたくわえたりするうちに、少しずつ生きるすべを見いだして、しかも、彫像づくりという新たな得意技に目覚めるという。なかなか大人びた話だなあとびっくりしたのだった。

    あ、そうそう、最後の一行の洒脱なことといったら!
    これはきっと、はじめから「ラストはこのセリフ」って決めていたんだろうなあ。

  • 主人公アベルは街で育ったお金持ちのボンボン。なのに、無人島へ流れ着いてからのそのたくましさったら!
    今までほとんどお母さんまかせだったのに、どこでその生活力と何度失敗してもめげない精神力をみにつけたのでしょう。
    すべては新婚の妻への愛ゆえかしら。

    坂木司さんの「心にのこる一冊」とのことで読んでみました。
    なるほど、こんな「男性」、素敵!

  • スタイグの読み物3作目

    『アベルの島』(Abel's Island, 1976年)はニューベリー名誉賞およびフェニックス賞オナー賞受賞

    1907年8月のはじめに新婚ほやほやのアベルとアマンダは、森へピクニックへ行く。
    そこで遭遇した嵐で二人。
    ようやくほら穴に逃げ込んだものの、アマンダのスカーフが飛ばされ、それを追いかけるべく飛び出したアベルの境遇はその後一変する。

    飛ばされ、流された末にたどり着いたところは無人島(無鼠島?)
    そこでアベルは自分の人生を取り戻すべく、孤独に闘う。
    カエルのゴーワーが流れ着き、戻っていったことで、川の向うへ渡る挑戦をする。

    アベルは、アッベラード・ハッサム・ディ・キリコ・フリント。由緒正しい家系の生まれで街の実力者のお父さんのおかげで、モッスヴィル市銀行通り89番地のすてきにいごこちのいい家に住んでいる。
    はたらかずとも、おかあさんがちゃんとやってくれているおかげで、しとやかで詩を書くのがすきな夢見がちなかわいいアマンダと結婚。

    「あんた、自分の才能を発見したってわけだな」
    これはゴーワーがアベルを評して言った言葉だけれど、アベルの資質は本当にすばらしい。
    何不自由なく暮らしていたが、それは決して無駄な過ごし方ではなく、食べられる植物を見分けられるようにもなっていたし、ねんどで像をつくることもできた。ロープをなったり、フードつきの冬用のマントも編むことができた。

    そしてこうした知識だけではなく、勇気と勇気や希望を持ち続ける持続力、ユーモアがあったことが彼を結末へと導いたのだと思う。

  • 『ねずみとくじら』の本と対比するような内容のお話なので、読み比べるとなお面白い。

  • -内容- のんきな町ネズミのアベルは、ある日ピクニックにでかけて嵐に出あい、無人島に流される。愛する妻のもとへ帰るという決意を胸に、大自然の中でたった一人どうにか生きのびようとするが…。苦難を乗りこえ、強くたくましく成長してゆくアベルの、心あたたまる愛の物語。

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