- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784566013841
作品紹介・あらすじ
今から千年ほど昔、スウェーデンやノルウェーの海岸には"バイキング"とよばれる人たちが住んでいました。南の国に遠征したバイキングたちは、とんでもなく悪い王さまたちに出会って…。ビッケが、とびっきりの火花をちらす冒険物語第六弾。
感想・レビュー・書評
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族長のハルバル、ハルバルの息子のビッケ、詩人のウルメ、舵取りのスノーレ、腕相撲チャンピオンのゴルム、文句屋のチューレ。
ビッケとフラーケバイキングのシリーズ最終6冊目。
今までの5冊発表から少し時間が経っているということでビッケもすこしお兄さんになっている感じ。お父さんのハルバルも略奪より交易重視となり、若手バイキングが略奪させろーとか言っているのをえたりしています。
作者の社会に対するメッセージもかなり強く直接的になっています。
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バイキングたちは遠征先を競い合っています。
ある地方のバイキングが地中海のマジョルカ島に行けば、他の地方のバイキングはアフリカ身紫海岸のカナリア諸島を目指します。パリに遠征したバイキングがいれば、競うようにローマを目指すバイキング、国会に行ったバイイング、ペルシャ湾を目指すバイキングもいます。
族長ハルバルに率いられるフラーケバイキングは、南の国を目指して船を出します。
途中で錨を止めた港街で交易をしようとしたフラーケバイキングたちですが、その町は3人の王様と3人の大臣により牛耳られ、裕福な町の人々と、貧しい町の人々との差がくっきりと分かれていたのです。
ビッケの「貧しい人から物を取り上げて裕福に暮らしている人たちがいたら懲らしめてやることも必要だよ」という言葉に、フラーケバイキングは悪い王や大臣達を倒します。
もう国王に従い物を奪われたり、ゴミのような残り物を食べたりしなくてよいと分かった町の人々は、「最高理事会」を作って、自分たちのことは自分たちで決めてゆくようにします。
フラーケバイキングたちは、最高理事会の代表に名乗り出た5人のメンバーに一抹の不安を残しながらも町を後にします。
航海と交易を続けたフラーケバイキングたちは、故郷に帰る途中にあの町に立ち寄ることにしたのです。
そしてびっくりしました。なんと町は最高理事会代表者たちが牛耳り、反対する町の人々は殺さることもあったのです。
大切なことは町の人たちに自由を教えることだ、とビッケ達は再度町のために戦います。
ビッケの知恵で最高理事会代表者たちを懲らしめたフラーケバイキングは、町がさらによい憲法と議会を作ることを提案します。
今度の議員は選挙により選ばれ、任期も決まってます。
フラーケバイキング族長のハルバルはハッとします。族長には任期があり、選挙で決めるんだったら、長年フラーケバイキング族長をあっている自分はもう引退しなければいけないのか?!
…まあそれも良いかもしれない。息子のビッケは戦いは弱いが優しく賢しい、そろそろ故郷にいる怖いけれど優しく正しい奥さんのイルバさんと一緒に畑を耕して暮らすことにする時期かもしれない。
今度こそ故郷に帰ろうとするフラーケバイキングの前に立ち塞がったのは、どうもな海賊フリース人でした。
族長のむっつりスベンは、先代で父親のスベンがフラーケバイキングにしてやられてから、彼らには恨みを持っています。
しかし今回もビッケの知恵でぶらーけバイキングたちはフリース人から姿をくらませて見事に逃げおおせました。
目の前にいたはずのフラーケバイキングが消えたことに、むっつりスベンは「これは神の啓示だ。もうこれからは悪事は辞めて、人間らしく誰からも好かれるように生きて行こう」とします。
…ですがそううまく行ったのは4年間だけだったのです。
ある時フリース人の国を訪れたフラーケ人が酔っぱらって「あの時フラーケバイキングが海から消えたのは、ビッケの知恵を使ったんだよ」と種明かしをして嘲笑ったのです。
真相を知ったむっつりスベンは怒り心頭!「境界を燃やせ!海賊気を掲げよ!フラーケバイキングに復讐せよ!」この日からフリース人は以前の残虐な海賊に戻ってしまったのです。
「思慮のない人の不用意な言葉は
この世に災難をもたらす
くだらないおしゃべりは
悲しみと困惑、不満と涙をもたらす元」
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前の5冊までと時間が空いたせいかかなりシビアな話になっている感じです。
今までの本では「悪い人たちは改心しました」という終わり方だったのに、最後の最後で「また悪い人に戻りました」で終わるとはちょっとびっくりした。
「専制君主をやめたときに民主的な統治が行われる」などと、作者のメッセージがかなり直接的に。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前作が最終話と思いきや、復刊にあたり、未訳の第6巻が登場!今回もビッケの奇抜な知恵が冴え渡って、楽しく読めました。ただ、前作から6年経って書かれた作品のためか、今までと少し違うような気もしました。イラストがほんの少しリアルになっていたり、人種差別などのテーマが全面に出ていたり…道徳性が増しているようでした。ラストも今までの温かさや笑いで包む雰囲気とはちょっと違います。勢いやテンポの良さはやっぱり第1巻かなぁ。でも、ビッケはずっとビッケのまま!ハルバルたちは第1巻に比べ、随分友好的なバイキングになります。その点では子供たちは満足してくれると思います。
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ビッケの最終巻、待望の本邦初訳!…ではあるが、残念ながらイマイチだった。だから今まで訳されてこなかったのか?
なにしろリズムも後味も悪い。5巻を書いてから本書を書くまでのあいだに、作者に何か不幸な出来事があったのでは…とまで考えてしまった。
ただし子どもたちには好評。