紅のトキの空 (児童図書館・文学の部屋)

制作 : Gill Lewis  さくま ゆみこ 
  • 評論社 (2016年12月14日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566013988

紅のトキの空 (児童図書館・文学の部屋)の感想・レビュー・書評

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  • 精神的に具合が悪くて家事も育児もできない母と、他者との関わりが苦手で鳥への関心が強い弟との3人で暮らす少女スカーレットは、12歳ながら一家の柱として奮闘していた。発熱した弟と調子の悪い母を残して学校へ行った日、彼女らのアパートの部屋が火事になる。幸い二人とも救助されたが、彼女は、母や弟と引き離されて里親の家庭に行かされる。間もなく入院中の母とは会えたが、弟の居場所は教えてもらえない。居心地のいい里親家庭と新しい友人に馴染みながらも、スカーレットは、彼女以外の人との接触を極端に嫌がる彼のことが心配でたまらないのだった。

    家庭に恵まれないながらも、自分の心の「家」を求めてがんばる少女の姿を描く。

    何もできないことを情けなく思いながらも、それでもできない母の姿と、それを受け入れ、子どもであることを捨て、一家を支えようとするスカーレットの姿が胸に痛い。
    そして、スカーレットが恵まれた里親家庭を捨ててでも、弟と一緒にいることを選んだことも。

    もどかしかったのは、彼女たちの生活の決定権を握るソーシャルワーカーの存在。当事者であるスカーレットたちの意向ではなく「委員会」の決定がすべてを握る。いつも彼女が意見を言おうとすると周りの大人は「聞いて。簡単ではないの」と言うのだ。
    子を持つ母として、ここはやっぱ彼女たちの意見もちゃんと聞かなくては、最終的に実力行使に持って行かれちゃうでしょ、って思うところなのだ。

    納得できないのは、最後にマダム・ポペスクの鳥たちが連れ去られてしまったこと。
    レッドの処遇のためにあんなにも説得力のある話をして石頭たちの考えを変えた彼女が、どうして愛する鳥たちを奪われてしまったのか。彼女はいいことしかしていないのに、どうして最後に悲しい思いをしてしまわなければならなかったのか。
    一般書であれば、「これが世の中だ」でいいのかも知れませんが、中学生以上対象ではあっても児童書ならば、ここはとっても残念なところ。

    また、里親家庭の人たちは無茶苦茶良い人。鳥嫌いのルネは最後には鳥に夢中のレッドさえも引き取るなんて。
    ルネの夫や子ども達も非常に寛容。無理はないのかとこちらが心配になってしまう。

    レッドとスカーレットと鳥や鳥好きな人たちの話は、この厳しい物語の中の救いになっている。好きなものがいつでも自分の心を引き立ててくれていて、それで世界が広がっていくなんて最高ではないか。

    鳥に詳しい作品だなと思っていれば、これは「ミサゴのくる谷」でデビューしたジル・ルイスの作品。納得です。

  • 1、紅のトキの空
    2、青空のかけら

    たまたま同じような話の本があったのでまとめてご紹介。
    どちらも優秀な女の子。
    “紅”のほうははじめから親はいない
    “トキ”は母親はいるけど役に立たない
    どちらも情緒障害やそれに近い弟がいて、自分が守ってやらなきゃ!
    と耐えず緊張しています。
    児童文学といえものは、子どもの皮膚感覚を使って書くものだから、どちらもそういう意味では子ども時代にしか使えない共感能力その他の感覚を見事に使いこなして書いてます。

    物語としてとても完成度は高い。
    でもいまの日本の子どもたちにはアッピールしないだろうなぁ。
    日本の一般的な子どもたちは似てるけど違う問題で悩んでるし外国の話は想像つかない。
    そうして、日本の施設で暮らしている子どもたちはたくさんいるはずなのに、そういう子が主人公の話が日本の児童文学にある?
    と考えても思い浮かばない。
    まぁ私は日本の本はそんなに読まないので、あるのかもしれないけど、あったら賞とか取りそうなもんだよねぇ?

    というわけでこの二冊の読者は大人でしょう。
    もう933に分類しちゃってもいいと思うよ。
    外国のYAは、もう大人の933に入れようよ。
    少しは華やかになるよ。

    2017/03/15 更新

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