アーニャは、きっと来る

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566014527

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦中のフランス。スペインとの国境近い静かな山間部の村が舞台。羊飼いの少年ジョーは、ある日山の中で見知らぬ人とめぐりあい、ナチスの迫害をのがれたユダヤ人とかかわりを持つことになります。スペインに逃げようとしている12人の子どもたちを―手を貸すことに賛成の人も反対の人も―村人たち全員がドイツ兵から守ろうとします。作者のモーパーゴは現代イギリスを代表する児童文学作家。戦争の悲惨さと、人間の力強さを訴える作品を多く発表しています。Waiting for Anya のタイトルで映画化されました。

感想・レビュー・書評

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  • アーニャが全然来ない!
    タイトルにある、アーニャは一体どこに??
    そんなふうに思いながら読みました。

    第二次世界大戦のフランスの小さな田舎の村でのお話。
    戦争へ行った父の代わりにヒツジの世話をしている時にユダヤ人の男性(ベンジャミン)と知り合いナチスから逃げる子供たちを助けることに。
    誰にも言っちゃいけないと言われ、自分の命だって危険なのに秘密にして助ける。
    おじいちゃんにバレたがおじいちゃんと共に助ける。
    しかし、ドイツ軍がいよいよ迫ってきて村人にも訳を話し村中のみんなで子供たちをスペインとの国境まで送り助けることに。
    ドイツ軍の伍長に子供たちがバレてたのに見逃してくれた。
    敵ではあったが心は優しい人だった。
    しかしスペインとの国境まで来た時に、一人の女の子(リア)が大泣きしてしまいドイツ軍にみつかり
    ベンジャミンとリアはアウシュビッツへ…


    戦争が終わったころには村中の人に愛された知的障害のあるユーベンがドイツ軍に向かって銃で打つ真似をしてしまう。
    皆が必死に止めたのにドイツ軍に撃たれてしまう。

    この悲しい話しの最後にやっとベンジャミンの娘アーニャが来たことが救われた。
    また、アーニャもドイツの迫害から逃げる時にベンジャミンとはぐれていた。
    アーニャは、いったいどこにいたのだろう?

  • ユダヤ人のために、村のフランス人たちが起こした行動は、確かに誇らしいものを感じたのですが、元々、なぜそうした行動を起こさないといけなかったのかを考えると、やるせないものがある。

    伍長を見ていると、ドイツ兵が全て悪いようにも思えないし、ユダヤ人については私も詳しいことを知っているわけではないが、本当になぜ? という思いで、モヤモヤした気分になりました。改めて、戦争がもたらすものについて。

    その反面、ジョーの家族の誠意ある振る舞いには、すごく勇気づけられる思いで、ジョーはもとより、勇敢なおじいさんや、素敵なアイデアを提示した母。更に、捕虜収容所から帰還してからの父の葛藤と、その後の行動には、人間の良いところも悪いところも全てない交ぜにされており、私だったら、こんな潔い行動が取れるだろうかと考えてしまった。

    また、この作品は戦争の他に、ジョーの成長物語にもなっており、ベンジャミンやリア、オルカーダ、伍長と関わっていくうちに、自分で何が正しいのか、どうすればいいのか、と悩み考えながらも行動する姿には、子供たちにとっても、自分の人生と照らし合わせて、色々考えるきっかけになるのでは、と思いました。

    それから、ラストの衝撃がすごいですよ。衝撃と書くと、少し意味合いが異なる気もするのですが、まさか、こんなことがと思いました。しかも、たった一文で。でも笑顔になれた。

  • 「アーニャは、きっと来る」 ビター&スイートな感動実話の映画化! : 文化 : クリスチャントゥデイ
    https://www.christiantoday.co.jp/articles/28792/20201125/movie-waiting-for-anya-review.htm

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    https://hiroko-illustration.jimdosite.com/

    アーニャは、きっと来る - 評論社
    http://www.hyoronsha.co.jp/whatsnew/detail.php?detailID=1367

  • 第二次世界大戦中、フランス南西部スペインとの国境近くにある村レスキュンに住む羊飼いの少年ジョーは、ユダヤ人の子ども12人の逃亡に手を貸すことになる。ドイツ兵に見つかれば、手助けした者も銃殺と知りながら。
    状況が厳しくなる中で、その秘密を全村人に伝え協力を得ようとする。
    そんな無謀なこと、有り得ない。
    このあり得ない設定は、人の善の心に対するマイケル・モーパーゴの絶対的な信頼に他ならない。
    すこし知恵が足りないが悪意の全くないユベールの存在にしてもそうだ。
    村人全員がユベールを愛し「だれだろうとユベールを幸せにする者は、村人に受け入れられる」という人々の善の心。
    マイケル・モーパーゴの作品は、どれも人の愚かさを描きながら、人を信頼する強く優しい目線を感じる。

    命をかけた村人総出の計画は成功するのか…ドキドキする。

  • ユダヤ人の子どもたちが国境を超えて、逃げる作戦に引き込まれていく13歳の少年ジョー。ドイツ兵の一人と心を通わせながらも秘密は守り通す。個人的には温かい父親なのに、自分でも何故こんなことをしなければならないのか、自問しながら任務に就くこの兵も戦争の象徴的な存在かも。
    映画化されているみたいなので、それも絶対観てみたい。

  • 『感想』
    〇第2次世界大戦中ドイツがフランスを占領していた頃のユダヤ人迫害に関する本。基本ハッピーエンドだが、悪い結果になるところもあり、だからこそ考えさせられる。

    〇第2次世界大戦というとドイツ人をとにかく悪く語る印象があるが、一般のドイツ兵は一人間としてはフランス人と同じで、温かい心も持っているし、よい人間関係を作りたいと願っているし、敵側の人間だとしても無下に扱うわけではない。しかしドイツ軍という組織に所属している以上、自分の感情に素直になるわけにもいかず、上からの命令を遂行しなければならない。

    〇最初自分たちの町に来たドイツ人をジョーたちは恐れたが、徐々に心を許し仲良くなっていった。しかしドイツ人としての立場を踏まえた行動を見て、また離れていく。支配する方と支配される方という関係が再確認できたからだ。こんな時にある計画が持ち上がるのだが、街の人全員がドイツ人に逆らって協力することになる。

    〇ドイツ側としては言うことを聞かず逆らわれたわけだが、見逃しても組織にはバレないことは知らないふりをしてくれるその心を感じたときの主人公は、感謝とともに大人の事情ってやつをよくわかっただろうな。

    〇ドイツ軍にとって大っぴらに反することは粛々と処理しなければならない。一個人の感情より組織の命令を優先する、それは現代の私たちも行っていることだ。そして冒頭子熊を守ろうと親熊が町の人たちと戦い死んだことと、町の人がドイツ軍に殺されたこととを対比している部分は、実はフランス人だろうがドイツ人だろうが、今の立場が違うだけで同じようなことをやっていることがはっきりとして、何とも言えない気分になった。

    〇その子熊が最後に果たす役割がね。それは復讐なのか愛情が裏目に出てしまったのか。どちらかわからないけれど、議論しがいのあるところだ。

    〇全員助からないことで、戦争やユダヤ人迫害や、そもそも人間のエゴについて考えさせられる。これは有事の際でなく普通の生活のなかでも死まではないにしろ存在していること。

    〇最後に本の題名について。これは未来への希望を表しているのだが、それが最後の見どころ。

  • 【2021年中学生課題図書】
    第二次世界大戦とユダヤ。
    重ためのテーマだけれど、
    優しい登場人物が多く、それほど暗くならずに読める。

    最後はうるっと泣かされた。

    読み物としては面白くてとてもいい作品だけど、
    感想文として戦争を、ユダヤ人迫害を語るとなると、
    きついかも。

    主人公の勇気、の視点からかな。

  • 悲劇か、それともハッピーか。物語の最後が気になってしかたなかった。最大の関心事はアーニャがどんな人なのか、である。

    第二次大戦のさなか、フランスの片田舎に駐留するドイツ軍の兵士たちは、友好関係を望み、主人公ジョーもドイツ軍の伍長に心を開く。しかし敵でもある。偶然ないきさつからユダヤ人の子どもたちの逃亡に手を貸すことになったジョー。村中で秘密を共有する場面に胸が高鳴る。

    戦争が巻き起こす悲劇には敵も味方もない。終戦を想起させる夏が来るたびにやるせなさがつのる。

    アーニャの出番はほんのわずか。続編があってもよいのではないかと思った。

  • モーパーゴはあまり好きな作家ではないが、これは良かった。
    落ち着いて考えると、わりと良くある展開だと思うし、読んでいて「この人は死ぬな」と思った人は死んだし、ラストも予想通りではあった。
    しかし、上手い。キャラクターがきちんと作られているし、人間がよく描けていると思う。
    主人公の少年ジョーが、これといって秀でたところはなくとも、寡黙で誠実で信頼できる人物であることが伝わるので、このような救出劇の立役者となるのが自然だ。
    読んでいて映画になりそうだなと思ったら、もうなっていた。日本でも人気のある作家なのに、イギリスで出版されて30年も翻訳出版されなかったと聞くと、よほど読みにくいか日本人には分かりにくい設定なのだろうかと思ったが、そういうことは全くなく、翻訳されなかったのが不思議なくらい。
    訳者あとがきに、ドイツでも高い評価を得たと書いてあるが、昔はナチスドイツが出てくると、血も涙もない残酷なサディストみたいな書き方をする作品が多かったが、この作品のドイツ兵は人間としてきちんと描かれており、そのあたりも評価されたのではないかと思う。近年はナチスドイツの行ったことはともかく、ほとんどの人はごく普通の人だった(アーレントを持ち出すまでもなく)という書き方が定着しており、普通の人がなぜ残虐な行為に手を貸したかが焦点になっているのは良いことだと思う。
    大人が読んでも十分読みごたえがあるし、子どもにも読んで欲しい。
    こういう本が読書感想文コンクールの課題図書に選ばれて良かった。

  • 第67回・2021年度中学校向けの課題図書。
    書店で面見せされている中、内容と作者で買い。

    第二次世界大戦中、フランスの山間部の町、レスキュン。
    12歳のジョーは、戦争に行った父親の代わりに、おじいちゃんと一緒にヒツジ飼いをしている。
    ある日、ジョーはベンジャミンと知り合い、彼がユダヤ人で、同じくユダヤ人の子どもたちをスペインに逃がす計画をしていることを知る。

    なんとも言えない読後感、それが戦争文学。
    もやもやする何かが胸に残るのは、戦争自体が不幸なことであるから当然のことで、そのもやもやが大切なんだろう。
    ドイツ兵との交流から、ままならない現実が描かれます。
    待って、信じて、祈る。
    それしかできない、でもそれが最善、そういう状況で、希望を失わずにいられるか?
    ユベールの最後の描き方が、個人的にはちょっと納得できない感じがしました。
    「訳者あとがき」もまとまっていてわかりやすく、良かったです。
    原書『Waiting for Anya』は、1990年イギリス刊、1990年度のカーネギー賞の候補作、ドイツ語版が2010年ドイツ児童文学賞児童書部門ノミネート、2020年映画化。
    30年というタイムラグ……その間、いろいろな場所でいろいろな物語がうまれてるわけですけども、ふーむ、という感じ。(この感覚をどう言葉にすればいいのか分かりません)

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著者プロフィール

1943年英国ハートフォードシャー生まれ。ウィットブレッド賞、スマーティーズ賞、チルドレンズ・ブック賞など、数々の賞を受賞。作品に『ゾウと旅した戦争の冬』『シャングリラをあとにして』『ミミとまいごの赤ちゃんドラゴン』『図書館にいたユニコーン』(以上、徳間書店)、『戦火の馬』『走れ、風のように』(ともに評論社)他多数。

「2023年 『西の果ての白馬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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