指輪物語 (7) (評論社文庫)

  • 評論社
3.77
  • (194)
  • (143)
  • (314)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 1942
感想 : 79
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566023680

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 再読中。一方、ボロミアに襲われた後、一行から分かれたフロドとサムは今エミン・ムイルの断崖絶壁で悪戦苦闘している。ロリアンでエルフにもらったロープを使いなんとか崖を降りるが、二人の跡をゴクリが執拗についてきていた。サムはゴクリをやっつけたほうが良いと考えているが、ついにゴクリを捕えたときフロドはガンダルフの言葉を思い出し、ゴクリを憐れんで助けてやる。ゴクリはフロドに忠誠を誓い、モルドールへの抜け道を案内することに。

    ゴクリはゴクリになる前のスメアゴルの人格(ややまとも)と邪悪なゴクリの二重人格者のようになっており、始終ひとりごと(ゴクリとスメアゴルの言い争い)を続けながらも、二人を案内し、やがてモルドールの入口である黒門(モランノン)までやってくるが、門は閉ざされ大勢のオークらサウロンの手下が見張っておりここから入ることはできない。

    二人はゴクリのすすめる迂回路をとり、かつては美しい場所だった名残りを留めるイシリアンの森へ。そこでサムはゴクリが捕まえた兔のシチューを作るが、その煙りに気づいた人間に見つかってしまう。彼らはオークの偵察に来たゴンドールのファラミアに率いられた一隊だった。フロドとサムは彼らの隠れ家に連行され、ファラミアに尋問されるが、彼らの話を聞いたファラミアは自分がボロミアの弟であることを明かす。

    最終的にファラミアは、フロドの使命を知った上で協力を約束、彼らに食料や助言を与え、フロドとサムは再びゴクリの案内でモルドールを目指す。キリス・ウンゴルへの長い階段を抜けたあと、ゴクリは二人を洞穴へ連れ込む。そこは古代から生きる蜘蛛の化物シェロブの住処。ゴクリはシェロブに二人を始末させ「いとしいしと」を取り戻そうとしていた。しかしガラドリエルから貰った玻璃瓶のおかげで二人は一度は危地を脱する。だがその油断が災いし、フロドはシェロブに捕われ、サムには背後からゴクリが襲いかかる。

    サムはゴクリを撃退、シェロブからもフロドを奪い返すが、シェロブの毒で仮死状態であるフロドが本当に死んでしまったと思い込み、フロドの代わりに指輪を持って使命を果たす決意をする。その矢先、オークたちが現れ、フロドの遺体(とサムが思っている)を持ち去る。指輪で姿を隠し慌てて後を追ったサムは、フロドが死んでいないことを知るが、オークたちに追いつくことができず…。


    ひさかたぶりのフロドとサムのターン。古代の戦争の死者たちが眠る死者の沼地の場面は幻想的で好き。だけどあとはもうひたすら二人の旅が過酷で、読んでいるだけでくたくたになってしまう。兎のシチューの場面と、ファラミアと会ったときだけはちゃんとベッドと食事のある夜を過ごせることだけが救い。ファラミアが人格者すぎて大好きだ!ファラミアがボロミアの遺体を夢にみる場面も幻想的で良い。

    あとは全編通して屈指の名場面と個人的に思うのは、キリス・ウンゴルへの階段でフロドとサムが交わす会話。サムが自分たちを冒険物語の登場人物になぞらえ、いつか子供たちがそのお話をせがむ未来を想像する。サムが「さておらたちはどんな種類の話の中に落ち込んじまったんでしょう?」と話す場面などある意味シュール。彼らは自分たちが冒険物語の登場人物であることを知っているのだ。

    「天下の大事なんてものはどれもおらなんかには向かねえです。それでもやっぱり思いますだ。おらたちが歌やお話の中に入れてもらえることがあるだろうかってね。もちろん現に話の中にいるわけですだが、おらのいいたいのは、物語になって、何十年何百年後にも、炉端で話されたり、それとも赤や黒の字で書いたすごくでっかい本の中から読まれることがあるだろうかってこってすだ。そしたらみんながいうでしょうよ。『フロドと指輪の話を聞かせておくれ!』ってね。」

    そしてそのあとの、サムがフロドを膝枕で眠らせる場面。サムの献身はもはや主従というより母性愛レベル。寄り添って眠る二人の姿をみつけたゴクリの描写も印象的だ。もしそのときのゴクリの姿を二人が見たら「目の前にいるのは年老いて疲れ果てたホビットと思ったでしょう」とトールキンは書く。醜悪なものとして毛嫌いされているゴクリが、かつてはそうでなかったことを垣間見せるとても鮮烈な瞬間を切り取っている。

  • 物語の中で一番つらく、暗いフロドとサムの旅路。その中で面白いのは、オークたちに個性があること。ゴルバクとシャグラトの会話が愉快。こういう会話を見ると、トールキンはオークにも人権(?)を認めていたのではないかと感じる。映画でのようにただの異形の悪魔のような存在ではなく、彼らにも彼らなりの考えをもって動く生き物であることがわかる。悪意の塊のような存在ではあるが、オークたちをめったやたらに殺しまくるのは間違っていると思ってしまう。異形のものを悪として考えるのは差別意識につながるのではないだろうか。
    前巻に引き続き、中つ国の古い時代の、話が散りばめられており、シルマリルの後で再読すると感慨ひとしお。

  • 読了。
    二つの塔 下

  • 『指輪物語』9分冊の第7巻。第2部「二つの塔」の完結。第2部の後半では、フロドとサムが主役となり、冥王・サウロンの支配する地・モルドールへ向かう旅が描かれる。
    かつて『ホビットの冒険』において指輪を所持していた通称ゴクリことスメアゴルとの同道、ボロミアの弟・ファラミアとの出会い、恐ろしき毒蜘蛛・シェロブとの戦い、そしてフロドを喪ってしまったと思い込むサムの悲嘆と決意―――。

    今巻の冒頭で、サムとフロドに視点が移ったときには、読みながら思わず微笑んでしまったし、フロドが倒れたとき、そしてそれが仮死に過ぎなかったと知ったときは、サムの心に寄り添おうとしている自分を感じた。
    もしかすると本書もそうなのかもしれないけれど、特にファンタジーの場合、“この本は、できればまだ子どもの頃に読みたかった”という台詞を耳にすることがある。けれど、真に優れた物語はいつ何処で出会っても、喜びをもたらすし、もしそれが子どもの心を必要とするならば、苦もなく物事に感じ入る心を呼び覚ますものなのだ、と改めて思わされた。

  • フロド・サム編。フロドは上品なんだな。サムはいい奴で、たまに物事の本質を見抜く。ファラミアをガンダルフ的と言ったのがステキだ。
    スメアゴルは、、、。よい物語は、いろいろなことをこうなるべくしてなったと納得するように描いてくれるものだと思う。

  • 大変なことになってきた。
    いよいよフロドとサムの苦難が始まってしまったよ。
    他のお仲間と合流はできないのかしら…

  • フロドとサム視点の話
    いよいよ物語は結びへ向かっていく。
    フロドたちの旅もいよいよ佳境

  • ●J・R・R・トールキン

    4-566-02368-0

    指輪物語 7
    二つの塔 下

  • 今までの巻に比べると、話は重苦しく、レゴラスとギムリのように新しく結ばれる友情もない。ボロミアの弟、ファラミアとの出会いはあって、フロドはことばではこれをよろこびであったと言っている。だが物語として見ていて、私はこの人物にさほど魅力を感じられない(腹の探り合いというものは見ていて気持ちのいいものではないし)。
    しかしなおこれを補って余りあるのが、乏しくともつながれていくフロドとサムの想いだろう。サムはほんとうに表情ゆたかで、フロドの思慮深さと並ぶとこれがいっそう際立ってくる。そうしてそれが、いやらしいスメアゴルとともにあっても、空気を湿り切ったものにしない力になっている。巻終わりぎわのサムのシーンは、こぶしを握りしめるようにはらはらして読んだ。これからの展開の進み方が楽しみ。(と書きつつ、ちょっとだけ間を置いて読もうと考えている)

  • 感想は最終巻にて。

全79件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

(1892-1973)オックスフォード大学教授。言語・神話への豊富な知識を生かして創造された別世界ファンタジー『指輪物語』は世界中に熱狂的なファンを持つ。他に『ホビットの冒険』等がある。

「2022年 『終わらざりし物語 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

J.R.R.トールキンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
東野 圭吾
コルネーリア フ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×