新版 シルマリルの物語

  • 評論社
3.83
  • (68)
  • (29)
  • (92)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 481
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (588ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566023772

作品紹介・あらすじ

唯一なる神"エル"の天地創造、大宝玉"シルマリル"をめぐる争い、そして、不死のエルフ族と有限の命を持つ人間の創世期のドラマを、圧倒的スケールで描き出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • SNSでトールキン専用アカウントを取った程度にはトールキニアンというか束人というかのはしくれだから、改めて感想を書くのは自分の一部を切り離して観察する作業のようでなんとも苦しい。それでいて何度目の再読か知れないのに毎回忘れているから情けない。

    トールキンの文体はもともと引き締まって表現も簡潔なのだが、『シルマリルの物語』は神話伝説群だからさらに徹底的に切り詰められている。そこに神の言葉や契約や誓言の難しい言い回しが出て来るから決して読みやすいとは言えない。物語全体にも「遊び」のような部分は一切ない。一つの挿話に無数のモティーフが散りばめられているのにあまりに手短に語られるから、「もっとじっくり描写してくれたら…」とつい願ってしまう。そして読み手は一つ一つの断片から自らの手でイメージを紡ぐことになる。

    創世神話から『指輪物語』の時代に至るまでがいくつかの章に分けて語られるが、中心は「クウェンタ・シルマリルリオン」。至福の国を離れ中つ国に移り住んだエルフのノルドール族の苦難の物語。ホビットという親しみやすい種族を中心に据えて書かれた『ホビットの冒険』『指輪物語』では仄めかされるに留まっていた、神話ならではの苛烈さ峻厳さがここで一気に噴出する。『ホビット』『指輪』の土壌がこのような荒々しくかつ奥深い世界であったことを知った時、二作で慣れ親しんだ中つ国は新たな色彩を持って眼前に開けていくだろう。

  • 確か新版はまだ読んでないはず

  • 参考文献
    図書館

  • とても壮大で登場人物が多く、まるで神話や歴史の本を読んでいるような感覚になった。ややこしいところや読みにくいところもあったにもかかわらず、おもしろかった。

  • いや~、結構苦労しました ^^;  内容より何より、まずこの本、重い!  物語の重厚さをこの重さを以って体で実感しろ!と言われている位重い。  特に KiKi のように「お布団読書」が身についてしまっていると、この重さがあたかも苦行のようです。  そして次に襲ってくるのが「指輪物語」や「ホビットの冒険」のような物語口調というよりは、創世神話口調であるが故のある種の堅苦しさ、歴史の教科書にも似た固有名詞や出来事の列挙に冒頭からめげさせてくれちゃいます。

    でも今回何とかその重圧を跳ね返して読了することができたのは、あの「J.R.R.トールキン 或る伝記」を読むことによって知った、この物語の出版に拘ったトールキン先生の想いの深さへの感動と、この物語を何十年と言う年月をかけて練り上げたその執念への敬意があったればこそでした。  

    と同時にこの物語が冒頭から筋を追って書き上げられたものではなく(≒ 私たちが手にしている「シルマリルの物語」として完成されたものではなく)、トールキン先生ご自身はあっちを書いたりこっちを書いたり、書いているうちに既に書き上げたところを直したりと様々なプロセスを経た遺稿を残されただけのものだったということ、この「シルマリルの物語」はそんな断片的な遺稿を息子さんであるクリストファー・トールキン氏が可能な限り時系列に並び替え、最終稿と考えられるものを寄せ集めたものであることをしっかりと念頭に置いて取り組むことができたということにもあるように感じます。

    と言うのもね、そこかしこに「既に別のところで語ったように・・・・・」というような言葉が出てくるんだけど、時に読者の立場からしてみると「え? まだ語ってもらった覚えはないけど・・・・・。  ひょっとして私が忘れちゃった??」と不安になってしまうようなことがあるんですよ。  これ、順を追って書かれたもの(最低でもそういう観点で推敲されたもの)という前提条件に立って読むから湧き上がってくる疑問なわけで、「ふ~ん、まだ語られた覚えはないけど、まあいいや。  そのうち出てくるんだろう・・・・」ぐらいな気分で読むとその度に躓くということがなくなります。  そして多くの場合、確かにページ的には後の部分でそれにまつわる逸話が詳細に語られていたりすると「なるほど・・・・」と合点がいく、そういうことがままありました。

    そして、過去に挫折したもう一つの要因、「まるで教科書みたい」と感じられる固有名詞や出来事の列挙の部分に関しても、彼はこの「シルマリルの物語」で物語を書こうとしていたのではなく、言語学者として言葉が生まれるそのいきさつやその言語を考案し使う使い手の歴史を書こうとしていたというスタンスで読めば、「音を楽しむ」スタンスで眺めたり、時には読み流すということができるようになり、今回の読書では先へ進む障害とはなりえないことを発見しました。

    もちろん、そうやって読み流していると、往々にして巻末の「語句解説」と本文の間をいったりきたり・・・・ということにはなるのですが、それでも既に読み終わったはずの頁を遡るのと比較すれば遥かに楽な作業だし、何よりも言葉を音として捉えることに重きを置くことによって、ストーリーを追う作業に過去の読書よりも遥かに集中することができました。  結果、細かい部分はともかくとしておおまかなストーリーは頭に残ったように感じます。

     

    彼の神話ではこの世界は、イルーヴァタールという創造主が、アイヌアという神々(? 精霊?  力を持つもの?)を使って創造しました。  このアイヌアのうち、当初最も有能だったのがメルコールというマイヌアなのですが、力があるものは慢心するのが世の常らしく、彼は次第に邪な心を持つようになります。  そのメルコールこそが、あの指輪物語で悪の象徴だったサウロンのボス、冥王モルゴスです。  このモルゴスの破滅までが、第一紀でこの後に、二紀、三紀と続きます。

    さて、そんな中、創造主が最初に世界に住まわせたのがエルフ族でそれに引き続き人間族が生まれます。  あの大作「指輪物語」や「ホビットの冒険」に出てくるエルフと言えば、イメージ的に非常に高貴で完成された人々・・・・という印象ですが、創生期のエルフはそこまで立派な存在ではありません。  ある意味、強欲だし、身勝手だし、お互いがお互いを憎しみ殺し合うことさえするのです。

    この話と北欧神話の間にある1つの共通点に「破ることができない誓約」というものがあります。  言語学者だったトールキン先生はやはり「言葉」には強い思いを抱いていたようで、一旦口にした誓約は破ることができない(というか、そうであるべき)という思想を強く抱かれていたようです。  この辺り、「誓約に縛られていたヴォータン」とどこか似ています。  誓約に縛られた存在であるがゆえに、「シルマリルという宝玉をこの世の果てまで取り返しに行く」という誓約を立ててしまったフェアノールの一族は、相手が誰であろうとシルマリルを奪い返すために戦うことを余儀なくされ、同族から恨みを買うようにもなり、迷走状態に陥ります。  そしてエルフ族のこの迷走につけ込んで、悪の種を育むのがモルゴス一党です。

    エルフが「○○のエルフ」と分岐していく様やら、後から登場した人間族が悪に魅入られモルゴス一党に加わるものとエルフと連合するものに別れていく様が第二紀、第三紀を通じて語られ、ようやく最後の方で「指輪物語」に出てきた「エアレンディル」とか「エルロンド」、更には「イシルドゥア」な~んていう名前がチラホラしてきます。

    モルゴスが滅びる結果をもたらした大災厄はあたかも「アトランティス大陸の大洪水 & 沈没」を彷彿とさせます。  そういう意味ではヨーロッパに古くから伝わる数多くの伝承から色々な素材を集めてきて再構築した物語であることは明白なのですが、それを似て非なる物、トールキン・オリジナルと呼ぶに相応しい物語にまで構築したのはやはり「言語」とその成り立ち、そしてそれを使う者の歴史というぶれない視点があるところだと感じました。

    さて、「ガンダルフ」や「サルマン」、「ラダガスト」といったイスタリたちがいかにして中つ国に遣わされてきたのか?はこの「シルマリルの物語」ではあまり詳細に語られておらず、どうやら「終わらざりし物語」に描かれているらしい・・・・・。  これはどうあっても「終わらざりし物語」まで進まなければいけないような予感がしてきました。  トールキン神話の道のりはやっぱりまだまだ遠かった・・・・・ ^^;

  • 楽しー!

  • 読むのは大変だけど、手掛けたらやめられない。

  • 『指輪物語』や『ホビットの冒険』に先立つ中つ国の神話の時代の物語。指輪やホビット~と違って、物語り(小説)というよりはやはり資料というか史料というか、淡々と出来事だけが簡略に綴られているだけなので、読書しているというよりほとんど歴史の勉強をしている受験生のような気分で、地名や人名や事件の名前を一生懸命暗記するつもりで読みました(苦笑)。

    この頃はエルフも人間くさいというか、種としてまだ若い印象。それともフェアノールの一族が特別に激情家なだけなのか…。それでもすべての禍の種ともいうべきフェアノールがどうしても憎めず、彼がノルドールに引き起こしたすべての悲劇も災厄も、何もかもがただ痛ましく悲しい。個人的にマイズロスとマグロールの兄弟がとても好きでした。フェアノールの7人の息子の中でも、長男であるがゆえにいちばん苦悩しているマエズロスと、自分たちのしていることが過ちだと理解しながらも、そんな兄の傍を離れなかったマグロールは特別。攫ってきた人質のエルロンドとエルロスの兄弟を結局可愛がって育ててしまうような優しかったマグロールが、最終的にいちばん悲劇的な結末を迎えるのがもう切なくて切なくて泣き伏しました。

  • 系図を見ながら読むのが良いかもしれません。
    今出てきているのが、誰とどんな関係なのかが分からなくなりそうです。
    エルフの奥方様の若かりしころも出てきます。

  • 以前、映画を好きになって指輪物語を読みました。彼らの時代以前の歴史が舞台なのがこのシルマリル。自分の中でこの本がすべてのファンタジーの根幹になっているかもしれない。ただただ圧倒されたのを覚えています。もともとが日本語で書かれたものではないですし、決して読みやすくはなかったけれど、この物語の場合はそこがまた高貴に感じたり。

全48件中 1 - 10件を表示

J.R.R.トールキンの作品

新版 シルマリルの物語を本棚に登録しているひと

ツイートする