- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784566023925
作品紹介・あらすじ
瀬田・田中訳の集大成
ボロミルから逃れて一人モルドールに向かおうとするフロド。しかし、忠実なサムは、出し抜かれずに後を追う。大河アンドゥインの東側に連なる急峻エミュン・ムイルの荒涼たる山中を、やっとのことで抜け出した二人だったが、その後ろに忍び寄る一つの影が……
感想・レビュー・書評
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2024/11/10読了
前巻から、時は少し遡って、本巻は、フロド、サム+ゴクリ(映画『ロード・オブ・ザ・リング』から入っているので、ゴラムでない事に多少違和感あり)の物語。
指輪の仲間と別れ、ゴクリを臨時ガイドにして、徐々にモルドールに近付くフロドとサム。さすがは、冥王とその忌まわしき配下どもの根城だけあり、風景はどんどんと恐ろしげになっていく。キリス・ウンゴルの階段とかシーロブ(※)の棲処とか……無理無理! 行かなきゃ世界が滅ぶと言われても私には無理ですわ。そんな所までフロドに付き従うサム。代々バギンズ家に雇われていたんだろうけど、家臣とか召使いとかでもない庭師だし、最初はホビット庄の外に出てエルフに会えるかもしれないという、些か軽めの冒険のノリでフロドに付いて来たのに、この義理堅さよ。
義理堅いといえば、ファラミルも、偶然出遭ったフロドがサウロンにまつわる何かを持っていると推測するも、「そんなものは要らない」と言い、のちにそれが〈一つの指輪〉と知っても前言故に奪うことはしないと言い切る。武士に二言はなし! 武人の鑑! こうなるとなんか、一時的にせよ指輪の誘惑に負けたボロミルが駄目な兄貴に見えてくるのが少々気の毒ではあるが……。
――いよいよ最終、第三部へ!
※ S・キング『IT』然り、源頼光の土蜘蛛退治然り、デカい蜘蛛って、世界共通で恐怖の象徴になるのでしょうね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フロド&サムの巻。ゴクリことスメーアゴルの話し方が独特で、なかなかアクの強いキャラだ。ゴクリがどうなるかは気になるなあ。そして新キャラのファラミルが登場。
それにしても、サムがすごく忠義の士だ。庭師なのに騎士のよう。主君のフロドは割とずっとピンチな気がするが、またもや大ピンチ!……というところで第二部が終了。いつもいいところで終わるな。続けて第三部も読みます。 -
正直、映画版の『二つの塔』のフロドとサムとゴラムパートが薄暗く、ずっとぼんやりと悲しいから、小説で一冊分このテンションだったらしんどいんじゃないかな、と思っていたけれど、まさかの切ない、やさしい、かわいい、りりしいパートでした。
サムよ、そんなにもフロド君が好きなのか、と何度衝撃を受けたことか。
フロド君とゴラムにちょっと心がくすぐられ、どんどんと語りの妙が深まっていく情景の描写がとても美しく、恐ろしく、現実には無い場所であることが信じられないくらいの密度で語られている。もう私もそこに行ったと言えるくらい。(言いたい!)
ファラミアの人物像が思っていたよりも武人だったことも驚きだった。
どちらも好きだ。
それにしてもサムの献身さがフロド君を支えて来たのは確かだったけれど、ゴラムを突き落とす最後の一押しをしたのも彼だったことが悲しい。
フロド君とサムのあの胸を掻きむしられる決別の場面がなかったことも嬉しかった。
よかった。こんなに慕っているのに、帰れって言われたら泣くどころじゃないわ。そのまま崖から落ちそう。だって、世界とフロド(しかもあの時点では死んでいると思っていた)を天秤にかけて、フロド君をとっちゃう人だから。
夢中で読み終えたけれど、さあ、もう残すところ二冊になってしまって、もうさみしい。読み終えたくない。でも読んでしまう。 -
フロドとサムのモルドール行きの巻。上巻とは逆にアラゴルンたちは登場しない。全編フロドたちの旅が描かれる。この巻がこれまでで一番面白かった。
ゴクリとの遭遇、彼の案内で死者の沼通過、黒門にたどり着くも入るのを諦めゴクリが知っている別ルートへ。道中でファラミルとの出会い。彼と別れモルドールへ。ゴクリの罠によってシーロブの巣を通って襲撃され、フロドは倒れる。サムはシーロブを撃退するもフロドは死んだと思い込み指輪を持って使命を引き継ぐ。が、フロドを連れ去ったオークたちのあとを追って引き返し、キリス・ウンゴルの塔へ。そこでフロドが仮死状態なのを知る。
この巻は移動が多く、旅をしている感じがよく伝わってきた。RPG的というか、自分も一緒に旅している気分に。行糧や睡眠への言及が多いのがリアルでいい。モルドールの忌まわしい描写に慄く。昼でも暗く、悪臭が漂い、水は飲めない。まさに魔界。
映画版との違いとしてファラミルとの出会いがかなり丁寧に描かれる。彼の高潔な人柄も。フロドとサムの仲違いはなく、二人は一緒に巣を進む。サムの奮闘が熱い。しかしそのあと彼が指輪を嵌めるとは思わなかった。
映画だとサブタイトルの意味がわからなかった。塔はサルマンのしか出てこないじゃんと。原作を読んで二つの塔とはアイゼンガルドのオルサンクとモルドールのバラド=ドゥールを指していたのだと理解できた。
著者プロフィール
J.R.R.トールキンの作品





