「走る図書館」が生まれた日 ミス・ティットコムとアメリカで最初の移動図書館車 (児童図書館・絵本の部屋)
- 評論社 (2019年12月20日発売)


- 本 ・本 (48ページ)
- / ISBN・EAN: 9784566080553
作品紹介・あらすじ
19世紀はじめ、アメリカの公共図書館では、まだ本を貸し出すサービスはありませんでした。司書を一生の仕事と考えた一人の女性、メアリー・レミスト・ティットコムは、多くの反対を押しきって本の貸し出しをはじめ、次に、工場や個人の家などに、誰でも借りられる本箱を設置しました。しかし、メアリーの願いはそれだけにとどまりませんでした。田舎に住む人にも、本を届けたいと思ったのです。「図書館に来られない人がいるなら、図書館が本を届ければいい」……そう考え、アメリカで初めてのブックワゴン(本の荷車)を実現させました。時代が移るにつれ、馬車は自動車へと変わり、広いアメリカじゅうを走って人々に読書の喜びを運びました。「移動図書館車」の生みの親を描き、熱い思いを伝える絵本。当時の貴重な写真や資料も満載。
感想・レビュー・書評
-
ブク友さんのレビューで知って読んでみたが、大変良い本だった。
ひとりの女性が本にかけた思いに、胸が熱くなってくる。
移動図書館の生みの親であるミス・ティットコムは、1852年ニューハンプシャー生まれ。
まだ女性の職業は、教師と看護師以外そう多くなかった頃の話。
ミス・ティットコムの家は貧しい農家だったが、両親は教育を受ける機会を与えてくれた。
本好きでもあった彼女は司書に憧れ、図書館で無給で働きながら学ぶことに。
やがて主任司書となり、一生の仕事を得ていく。。。
ジュディ・ディンチに似た面差しの、ミス・ティットコムの写真が最初に現れる。
「なにかを成し遂げることのできた人は幸せです」という本人の言葉も。
もし彼女に才能があったと言うなら、諦めずにやり抜くという才能だろう。
「図書館に来られない人がいるなら、図書館が本をとどければいい!」
この時代に、この逆転の発想は、本当に素晴らしい。
1905年、2頭立ての馬がひく、ブックワゴンがスタートする。
やがて1960年に入る頃にはアメリカ中で2000近い移動図書館車が走るようになっていく。
全ての人に平等に読書の素晴らしさを届けたいというミス・ティットコムの情熱が、図書館の歴史を変えたのだ。
写真もたくさん載せられ、ブックワゴンの変遷も見ることが出来る。
ほとんど記録の残っていなかった中懸命に調査をし、この本の発刊までこぎつけた著者の努力にも頭がさがる。
後書きまで読むと、「これまでたたえられることのなかった、すべての偉大な女性たちにささげます」という最初の言葉の意味がしみじみと分かってくる。
150年も前、図書館や本のためにこんなに力を尽くした人がいたんだ。
ありがとう、ミス・ティットコム。ありがとう、シャーリー・グレン。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今はあって当たり前だと思っているものでも、それがなかった時代がありました。
ブクログで使っているインターネット、スマートフォンやパーソナルコンピューターも。
図書館も、本ですら無かった時代がありました。
最初に作った人たちのおかげで、わたしたちは今、その恩恵を受けている訳です。
この本に書かれているメアリー・レミスト・ティットコムも、あるものを最初に作った人、わたしたちの恩人の一人です。
彼女が作ったのは、「走る図書館」。そう、移動図書館です!
たくさんの本を車に積み込んで、広いアメリカじゅうを走り、図書館に来られない人たちにも読書の喜びを届けたのです。
メアリー・レミスト・ティットコムは、1852年5月16日にアメリカのニューハンプシャー州ファーミントンで生まれました。
女性に開かれていた職業が少なかった中、ミス・ティットコムは司書となり、図書館制度の改革を進め、公共図書館を作って、無料貸出を始めました。
そして、本を住民のところに届けるため、ついに「走る図書館」を作ったのです。
最初は、本を並べた棚を乗せた荷車を馬に引かせるものでした。大きな事故が起こり、事業は頓挫しそうになりましたが、それが馬車を自動車に変える転機ともなったのです。自動車を大きくしたり、走る地域を広めたりして、「走る図書館」は進化していきました。
今では、日本の公共図書館でもなくてはならない存在となっています。
先日、仕事帰りに図書館に行った時、ちょうど移動図書館のバスを洗車しているところに出会いました。
で、館内の絵本コーナーで、この本が目について手に取りました。
わたしはまだ移動図書館を利用したことはありませんが、もっと年をとって図書館に通えなくなったら、使わせてもらうのかもしれないなぁ、と思いながら、ミス・ティットコムの偉業をしのんだのでした。
おしまい。
-
アメリカの移動図書館を考案した女性司書、メアリー・レミスト・ティットコムの伝記です。
貴重な写真が彼女自身のこと、当時のアメリカ社会のこと、図書館・移動図書館のことについて多くを語り掛けてきます。
アメリカ初の移動図書館は1905年、なんと馬車でした。
時代につれて自動車やバスへ変遷しますが、高尚な目的は変わりません。
19-20世紀に生きた司書の強い意志が受け継がれていることに感動した一冊。 -
アメリカで移動図書館車を考案したのは女性司書だった。ミス・ティットコムが、田舎の人にも本を届けたい、と考えたのだ。農家の貧しい家庭であっても本を読みたい人はいるはず、との信念を貫いた。アメリカの各年代毎の移動図書館車の写真が素晴らしい!クラッシックカーのファンなら嬉しくなること間違いなし。
-
女性が勉強をしたり職業を持つことがまだ珍しかった1800年代半ばの米国で、当時の女性の高等教育を受け、公共図書館で司書として働き始めたミス・ティットコム。周りの信頼を得て、魅力的な図書館作りに励み、米国初の移動図書館を考えつき、利用者に歓迎される。当時の写真や資料が豊富で、読みごたえのある内容。何よりも、ミス・ティットコムの熱意に感謝したい。
-
アメリカ・バーモント州ではじめて公職についた女性の一人であるミス・ティットコム。やがてワシントン郡に移り住み、すべての人が無料で本を借りられる図書館を開館し、いたるところに本置き場を設置し、本から住民のところに出向く「本の荷車」を考案しました。
今の住民への図書館サービスの基礎を作られたんだなあと。
移動図書館車の歴史として、馬車から車、各時代の移動車の写真も掲載。初期の馬車や小型車がなかなかすてき。住民に愛されていた様子も。
後書きの作者のレポートも読み応えがある。
デューイ先生の写真とサインも。 -
100年前、アメリカで初の移動図書館を作った人の話。みんなに本を読んでもらいたいという思いで、出張読み聞かせ、街角本棚、移動図書館と、どんどん活動を広げていく展開が気持ちいい。
図版が豊富で嬉しい。当時の図書館の様子、移動図書館に集まる子供たち、十進分類表のデューイから届いたハガキなど。 -
アメリカ最初の移動図書館車のことについて追った写真絵本。
著者プロフィール
渋谷弘子の作品





