鬼と人と―信長と光秀 (上巻) (PHP文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569565460

感想・レビュー・書評

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  • トクマガ Vol.22で紹介
    おはようございます。

    「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」(ビスマルクの言葉)

    お説ごもっとも。
    経験だけから学んでも、一人の人生、ちっちゃいじゃないですか。
    歴史から学ぶ。
    つまり他人の体験から学ぶこと。
    これこそ、「本」ならではです。
    読んで、
    歴史に名を残す英雄になりきることもできれば、
    歴史から消えた英雄たちが、何を誤ったのかを経験することもできます。

    経営は戦争に例えられます。
    戦略、戦術、作戦、ロジスティックス(兵站)などがその例。
    その意味で、中間さんが紹介した「孫子の兵法」は、最も優れた経営書の古典です。
    また「クラウゼビッツの戦争論」や
    戦争そのものではないですか「マキアヴェリの君主論」、
    「ランチェスター理論」などもマーケターとして必読書です。

    これらの本は、「よくわかる~」シリーズなどでも出ているので、
    理解しやすいものを選んで読んでもいいと思います。

    それから歴史と言えば、歴史小説です。
    池波正太郎さんも藤沢周平さんも宮部みゆきさんも好きですが、
    私は司馬遼太郎さんを圧倒的に押します。
    ただ、東京支社内にも司馬遼ファンがいますので、
    ここで張り合うのはやめて、(張り合う必要はないのですが)
    今回は堺屋太一さんの「鬼と人と」を紹介します。

    堺屋太一さんは、元通産官僚であの大阪万博のプロデューサーでした。
    小渕内閣、森内閣では民間から起用された経済企画庁長官として政治家も経験されていますが、
    やっぱりこの人は作家としての功績が大きいでしょう。
    よく私たちが使う「団塊の世代」という言葉は、堺屋さんの書いた同名小説(1976年)で使われたのが初めて。
    つまり[団塊の世代の名付け親]です。

    「鬼と人と」という歴史小説。副題が信長と光秀。
    もうわかりますよね。
    鬼=織田信長
    人=明智光秀

    この小説の面白いのは、光秀が信長に仕えてから、本能寺の変までを
    信長の独白と、光秀の独白、2人の独白で物語るという構成です。
    同じ場面を、二人の視点で見ることができるのです。
    読み進めていくうちに、
    鬼=リーダー(経営者)
    人=ナンバー2
    とか、
    鬼=上司
    人=部下(私)
    とか
    鬼=大所高所から見通せる人
    人=視点の低い平凡な人(私)
    というように、置き換えられることがわかってきます。
    つまり、これほどに人の心は、伝わらないものなのか。
    親の心子知らず、とはこのことか、と実感します。

    信長が見えているものが光秀には見えない。
    信長の親心が光秀にはわからない。
    信長がなぜ光秀に厳しいのか。
    それは期待の証であり、愛情であり、将来を託しているから。
    でも光秀は、ふてくされたり、うらんだり、悩んだり・・・。

    まさに組織の縮図。
    上司部下の縮図。
    得意先と私たちの縮図。

    信長にも言い方、接し方があったはず。
    光秀も、もっと相手の立場になって考えれば・・・。
    そういうことなんですよ。
    人が2人集まれば、相手の立場・視点も考えないと、
    ちょっとした誤解が大きな悲劇を生むこともあるんです。

    堺屋太一さんは、「組織の盛衰」(PHP)という組織論についてのすばらしい著書があるので、
    当然この「鬼と人と」という異色の歴史小説でも、組織運営の難しさを書き表しているのだと思います。

    それにしても、小説としても最高に面白い!
    歴史の中でも一番わくわくする時代。
    多くの個性的なキャラが輩出された戦国時代の
    その中でも代表的なキャラの話ですから
    おもしろくないわけがない。

    戦争はよくない。
    これは世界共通の認識だと思います。
    でも、戦争という生きるか死ぬかの極限状況の中で、
    新しい技術が生み出され、
    多くの知恵が体系的に残され、
    個性的で魅力的な人格が形成される。
    これも事実です。

    戦争での良い上官(上司)とは誰か。
    生きて連れ帰ってくれる人、だと言います。
    頭のいい人でも、勲章をたくさん取った人でも、
    やさしい人でも、人格者でもない。
    これも、私たちビジネスに置き換えることができる言葉ですね。

    できれば戦争なんかしないほうがいい。
    生きるか死ぬかの経験なんて、しないほうがいい。
    でも、その究極の経験から生まれた知恵や人格を、
    私たちは本を通して経験できます。

  • 織田信長と明智光秀が主人公。それぞれの立場や考えを本人が独白するという珍しい形式の小説。読んでみると織田信長の独白は、『なるほど!』ということが多くて参考になった。対する明智光秀の葛藤なども分かりやすかった。たまたま、フジテレビの新しい月9ドラマで『信長協奏曲』が始まったので、ドラマと対比しながら下巻も読んでいきたい。楽しみです!

  • 小説後半になるまで、「信長と秀吉」と思い込んでいた

  • お互いへの想いが
    こんなにもすれ違うって
    本当に切ない

  • -108

  • 実際に信長と光秀の考え方はこれほどに異なっていたのだろう。

  • 1993年刊行。底本1989年刊行。

     織田信長と明智光秀といえば、当然本能寺の変だが、ここに到るまでの二人の心の動きを、各々の独白形式という独特のスタイルで描く。
     心の動きは、些か型通りという気がしないでもないが、本能寺の変の主役二人の心裏に迫ろうとする小説である。上巻。

  • もともと通じているようないないようなボスと右腕の関係が、些細な事から、または、単にごまかされて来たズレの表出により、急速に壊れていく。
    やはりボスは開拓者、世界を創る人。
    右腕は右腕、頭ではない。

    開拓者になりたい。
    なれたら、殺されないようにちょっと注意。

  • 信長と光秀がそれぞれ独白をしているという、珍しい小説。同じ出来事に対して、全く異なる見方、考え方をしている様は、人間がお互いを理解することは難しく、現代の人間関係にも大いに通じるなと、感慨深く思いました。

    それぞれの正義、信念があるのに、どうしてそれを理解し合うことができないのか。信長、光秀に対し、もうちょっと別の言い方、やり方があるんじゃない?と言いたくなってしまいます。

    下巻はどんな話になるのか、楽しみです。

  • 織田信長と明智光秀との二人が、同じ事件、同じ光景を互いに独白するという世界にも珍しい形式を採り、主従の心の葛藤に引き込まれる。
    信長と光秀という「日本史の奇観」を描き切ることは難しいのだろうが、同じ題材の多くの作品群にあって史書、小説、または改革と組織の手引書として、本書が最も面白い。

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著者プロフィール

1935年,大阪生まれ。東京大学経済学部卒業後,通産省に勤務。日本万国博,沖縄海洋博などを手がける。1978年退官,執筆評論活動に入る。著書に『油断!』『団塊の世代』『知価革命』『組織の盛衰』『平成三十年』『東大講義録』などのほか,『峠の群像』『豊臣秀長』『俯き加減の男の肖像』『秀吉』などの歴史小説がある。経済企画庁長官,内閣特別顧問などを歴任,現在東京大学先端科学技術研究センター客員教授,早稲田大学大学院客員教授。

「2018年 『東大講義録――文明を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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