マリアナ沖海戦 (PHP文庫 よ 11-2)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569574752

感想・レビュー・書評

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  • (2007.08.22読了)(2007.05.06購入)
    この本は、「あ号作戦」(オリオン出版、1968年9月刊行)の文庫版ということです。
    「太平洋戦争において、ターニングポイントになった戦いは、ミッドウェー作戦であり、ガダルカナル争奪戦であり、レイテ沖海戦であったろう。しかし、日本海軍が「最後の決戦」と意識して実施した作戦は、「あ」号作戦だった。」(戸田一成「解説」)
    「あ」号作戦は、マリアナ沖海戦のことです。
    1941年12月8日 真珠湾攻撃
    1942年6月5日 ミッドウェー海戦
    1942年8月7日―1943年2月1日 ガダルカナル争奪戦
    1943年4月18日 連合艦隊司令長官山本五十六戦死
    1944年6月19日 マリアナ沖海戦
    1945年2月19日 米軍硫黄島上陸
    1945年3月10日 東京大空襲
    1945年4月1日 米軍、沖縄本島上陸

    真珠湾攻撃の半年後には、ミッドウェー海戦があり、ここから日本軍は負け始めているということです。マリアナ諸島というのは、グアム島やサイパン島があるところですので、日本人にはなじみの名前といえるでしょう。ミッドウェー海戦からマリアナ沖海戦まで2年の歳月が流れていますので、アメリカはじわじわと日本に近づき、日本軍は必死で抵抗していたということでしょう。
    ただ、マリアナ諸島を取られるといよいよ日本本土への攻撃が始まるので、総力を挙げてなんとしても勝たなければ、というのももっともです。
    「マリアナ沖海戦は、太平洋戦争の中で、日本海軍が戦力になるものはすべてをつぎ込んで戦い、ついに完敗を喫した最後の艦隊決戦である。」(3頁)
    この本は、マリアナ沖海戦を分かりやすく小説仕立てで、読ませてくれる本です。戦闘を客観的に記述しているものよりは、読みやすくなっているのではないでしょうか。
    1944年1月30日から書き起こしています。トラック諸島からラバウルまでの輸送船の護衛を駆逐艦で行っています。
    ガダルカナル島のあるソロモン諸島、ニューギニア、トラック諸島と放棄して、マリアナ諸島まで前線が徐々に後退します。絶対国防圏とされたところが崩壊しつつあります。
    「あ」号作戦計画というのは、決戦兵力の大部分を集中して東正面に備え、一挙に敵艦隊を撃滅してしまおうとするもので、味方決戦兵力が大体整備する5月下旬以降に、中部太平洋方面からフィリピン、ニューギニア方面にわたる海域で決戦する。(123頁)
    太平洋戦争の開始時点においては、日本は航空機を使った攻撃で順調に勝ちを収めることができた。アメリカ軍は、このことに気づき空母や航空機の増強、船に乗り上陸して戦う海兵隊の創設など時代の変化に対応した転換を行うとともに、レーダーや近接信管等、新技術の開発にも努めてきていた。
    ところが日本は、大和や武蔵で戦うつもりでいた。陸軍と海軍とは、別のチームであり、太平洋方面は海軍の担当という感じで、陸軍は助っ人というところでしょうか。
    航空機の操縦士は、一人前になるには長い訓練期間が必要であるが、司令官たちは航空機さえあれば誰が乗っても飛ぶものと思っていたらしい。日本におけるベテラン操縦士たちは、ミッドウェー海戦、ソロモン海戦、等でかなりなくなってしまい、マリアナ海戦のころには、訓練不足の操縦士たちが多かったようです。
    「攻撃機が出ても、被害が非常に多い。半数以上帰ってこない。その理由は、実は、敵の対空防衛力が飛躍的に増大したからでもあった。レーダーと近接信管はソロモン戦のころから現れ、味方機の被害をうなぎ登りに大きくしたが、今度はそれに上乗せして、迎撃戦闘機のレーダー管制というところまで発展していた。敵機の接近をレーダーで捉えて、空中で待機している戦闘機に、どこに行けと命ずるのだ。」(194頁)
    マリアナ沖海戦が終了した時点で、日本には制海権も制空権ももはやなくなっていた。

    ☆関連図書
    「電子兵器「カミカゼ」を制す」NHK取材班、角川文庫、1995.07.10

    著者 吉田俊雄
    1909年 長崎県佐世保生れ
    1927年 海軍兵学校に入学、第59期
    1931年 海軍兵学校卒業、海大選科学生
    1939年より海軍省電信課、軍令部第四部などに勤務
    開戦前より軍令部第三部勤務
    1943年より軍令部員、大本営海軍参謀
    1945年 海軍中佐
    (2007年9月8日・記)

    (「BOOK」データベースより)amazon
    太平洋戦争における戦局が日に日に悪化の一途をたどる中、日本海軍はその持てる戦力のすべてを結集して、迫り来る米艦隊との、乾坤一擲の戦いに立ち向かおうとしていた。それが、“最後の艦隊決戦”といわれる、「マリアナ沖海戦」である。本書では、その大勝負の全貌を、一隻の駆逐艦を主人公として、臨場感あふれる筆致で描き上げる。元軍令部参謀の著者による異色の戦記小説。

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