- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569575025
感想・レビュー・書評
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お江戸の犯罪事情。<罪と罰について考えてみる>第2弾
出発点は懲役刑って罰として妥当なの?というソボクな疑問。前回、重めの本(『監獄の誕生』フーコー)を読んでしまい、なおかつフランスの事例だったので、じゃあニッポンの例えば江戸時代はどうたったのか、ということで選んでみました。
筆者は法務省教官や法学部教官などを歴任し、執筆当時、法学部教授。家裁参与員・調停員を努めているという経歴の人。
堅めの著書が多いけれど、本書は豆知識的な読みやすいもの。
江戸ではどのようなタイプの犯罪があり、どういった「御仕置き」がなされていたか、また警察能力はどういったものか、牢屋生活とはどのようなものであったか、また政権を揺るがしかねない大騒動についてなど、興味深いトピックスをまとめている。
当時の文献や川柳などを多く引き、江戸の犯罪事情が空気感を伴って解説されている。
悪事を行った際に実際に受ける罰が、吉宗の頃に制定された『公事方御定書』を例に紹介されている。呵責(叱ること)、押込(禁固ですかねぇ)、追放(門前払だったり江戸払だったり範囲はさまざま)、遠島、死罪など。現代の感覚では意外にちょっとしたと思われることでも死罪になる。火付けは火焙りの刑、身分が上のものに対する人殺しは例外なく磔・獄門であり、傷を負わせても死罪。強盗や十両以上の窃盗も死罪。
人のものを横領しても江戸払になったりする(圓朝の「真景累ヶ淵」にも確かそんなエピソードがあった)。
手鎖という罰もある。文字通り、手に鎖をはめて100日なりを過ごす。比較的軽い罰とされる(不義密通や大きな過ちの際の罰だが、歌麿が受けたことがあったはず)。
おもしろいところでは、「カラスの江戸払い」というエピソードが紹介されていた。生類憐れみの令が出されていた頃、綱吉の頭にカラスが糞を引っかけた。不届きであるが殺すわけにもいかず、捕まえては八丈島に流罪としたのだという。
全般に罰は、身分の上下にも左右され、意外と「感情的・心情的」な感じがする。
牢屋の暮らしも紹介されているが、いやいや、いじめ満載。新入りを便所のすぐ横に寝かせるとか、リンチにして殺してしまうとか。こんなところには金輪際行きたくない。
概観するに、どうもやはり現代とは大きな乖離があるような。その乖離が明治維新に生じたのか、戦後生じたのか、あるいは徐々に生じていったのか。それはまた何かの機会に追ってみたい。
*所払ってのは凄い発想だよな。江戸以外なら悪人がいてもいいのか!?みたいな。
*吉原というところはお金の掛かるところで、手軽で安価な岡場所が発展していった。「岡」とは岡惚れのように、「脇」とか「正規でない」という意味。岡っ引きの岡もこの意味なんだとか。
*継子や里子が多く、借用書を書く際など、何かにつけて必要な住民票に該当する肩書には、「継子」「連れ子」「里子」といった経歴が必ず書かれたものという。
実子でも素行の悪い子は「勘当」されたりする。これは何か事を起こしたときに、親・親族に累がおよぶのを避ける意味もあったのだろう。
*水死体は検死がなかったという。だからケンカで殺してしまった、というような場合には簀巻きにして川に落としちゃったわけだ(--;)。詳細をみるコメント0件をすべて表示