新釈五輪書: 宮本武蔵の哲学を読む (PHP文庫 な 34-1)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569577616

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  • 剣豪・宮本武蔵の"五輪書"のエッセンスを現代語でまとめあげた一冊。筆者によれば、武蔵が死の直前に一気に書き上げた原著は、文書の流れが十分には整理しきれておらず、本人も手直しを考えていたという、ある意味未完成版とのこと。そのため直訳では大意をつかみづらく、この本では原著の要所を抜き出し、さらに解釈を加えた構成を選択した由。

    内容は剣技の技術論がメインなのだが、そこに"とはいえ現代にも生かせる点はあるはずだ"と筆者が繰り返すのは、まあご愛敬。そりゃ"他山の石"という言葉すらあるとおり、学べる人はどんなものからも学べるわけで。ただ武蔵のシビアでリアリスティックな考え方は確かに学べるところがあるようにも思える。

    最後に、仏教思想も下敷きにした、兵法の道を究め空に至るその理想を記した"空之巻"は、長い戦いの末に彼がたどり着いた境地が窺え、感慨深いものを感じると同時に、自らを省みる材料ともなった。

  • 本当にそういう意味なのかはわからないけど、読みやすくてよいです。

  • 「新釈「五輪書」」5

    著者 長尾剛
    出版 PHP文庫

    p150より引用
    “成すべきは、毎日の努力である。
    千日の稽古が「鍛」であり、万日の稽古が「錬」である。
    だから「鍛錬」なのである。”

    ノンフィクション作家である著者による、
    大剣豪・宮本武蔵が書き記した兵法書「五輪書」を、
    わかりやすく編集・解釈した一冊。
    武蔵自身の考えに対する気概から具体的戦い方まで、
    原文と共にかなり大量の著者の解説が書かれています。

    上記の引用は、
    水之巻のまとめの項の中の一文。
    戦が無い時代であっても何かを成し得るには、
    この考えが必要不可欠なのではないでしょうか。
    水之巻で何度も出てくる「能々稽古すべし」のフレーズに、
    大成した人物の経験がにじみ出ている様に感じます。
    どんどん鍛錬を重ね、
    無意識のうちに体が動くようになる、
    それが技を身につけた事になるとの事です。
    私も無意識に仕事をこなせる位、
    この先も続けて生きたいものです。

    以前小説家か誰かが言ったと記憶していますが、
    「努力すればなんとかなるという考えは大嫌い」、
    というような内容の発言をしたと覚えています。
    平凡な人が努力をやめる事で困るのは、
    才能のある人ではないかと思います。
    同じ事をしている平凡な人たちが、
    才能のある人と比べる対象として存在していなければ、
    才能の強さも光らないのではないでしょうか。
    「五輪書」はs・スマイルズ「自助論」と並んで、
    努力ということの大切さに重きを置いた作品だと思います。


    ーーーーー

  • 原文と、訳ではなくわかりやすい解説を記載。

  • 宮本武蔵が自分自身の兵法を客観的に分析したものを著者が現代社会の中で活用できるように解釈したもの

    以下印象に残った言葉

    どんな身分であれ、それなりに人格がしっかりしていれば死の覚悟はできる

    兵法が現代に役にたつかではなく『役に立たせる』のである

    武蔵の兵法は『人生の勝負を極める』というもっと深い意味がある

    良い成果をあげるには良い道具を使わなければならない

    武蔵は極めて社会性の強い人だった
    人が共生する社会の一員として、他人の役に立ちつつ生きたい

    天下国家の尺度を知らねばならない

    家を立てる時

    見かけのいい材木は表の柱に
    少し節があってもまっすぐで強い材木は、裏の柱に
    頑丈さがなくても美しい材木は、鴨居や敷居の材料に
    見てくれが悪く頑丈なだけの材木は、家の強度の補強に

    大工の心構えとは、道具を常に研いでおくこと、道具を常に持ち歩いていること棟梁の言いつけを守って正確な仕事をすること

    着実に自分の役割を果たす

    つまらぬ見栄や体裁から仕事を選んだり、小さな仕事だからといって手を抜いたり、そんな態度は武蔵は許さない

    学ぶとは「大き」「浅き」ところをまず心得て、それから「小さき」「深き」ところに到る

    「細かな知識をあなどってはならない」と。優れた武士とは、細かい一つの事柄から、全体像を判断できるもの。それはちょうど、優れた大工がわずか一尺の原型から立派な大仏を建立するようなもの

    リアリストの武蔵は「自分を相対化」する姿勢を忘れない
    自分の意見を闇雲に絶対視するのではなく、他者ときちんと比較した上で、自分を己を客観視する態度が、まず必要。

    根本的に間違ったことを信念にしてしまった人は、どれほど努力しようとも、真実正しい道からはドンドンずれていってしまう。客観的に物事を見る目をもてない人間は愚かである

    本能の動き

    修練を重ねて慣れてくれば、必要なテクニックとパワーが身について、使えるようになる。

    どれほど戦う相手が大人数だろうと、どれほど目の前に突きつけられた障害、難題が大きかろうとも、そこで臆したり諦めたりては、すべて終わり。とにかく、目の前のてきの一人一人を着実に倒していく。問題の一つ一つを解決していく。そうした心構えがあれば、どんな大きな相手でもなんとかできるはずだ、


    大切なのは、自分の身に応じ、自分の手に合った武器を持つことである。
    感情的な好き嫌いよりも、使い勝手の良さで判断して道具を選べ
    この教えはどんなジャンルでも、仕事をする者の心我前おとして重要

    拍子
    「リズム・タイミング・ペース・チャンス・バイオリズム」

    戦場で敵と対したときには、敵のリズム(合う拍子)をつかみ、そのうえで相手と「ずれたリズム」(違う拍子)によって挑むことで、相手のリズムを崩す(背く拍子)のが、勝ちに結びつくという。この教えは、「リズム」を「ペース」という言葉に置き換えると、ビジネスの駆け引きなど、様々な状況の戦いに生かせる説明でもあるだろう

    一、邪心を持たず、ひたすら実直・正直であること
    二、道を厳しく鍛錬すること
    三、刀を持つばかりでなく、広く多芸に触れること
    四、広く他の職業を知ること
    五、利害損得をわきまえること
    六、本質を見据える眼力を養うこと
    七、眼に見えない本当の意味というものを見抜き、悟ること
    八、わずかなことにも細心の注意を払うこと
    九、役に立たないことはしないこと

    「習うより慣れろ」

    戦いの場にあって、心は平常心と変わらぬものでなければならぬ

    落ち着いた気分でいながら、周囲の変化に即座に対応できるだけの気配りを、自然に持ち続けるということである

    「うへの心」つめり、上側の表面的な気持ちは眼の前の様々な敵の状況に合わせてアレコレと想いめぐらし、忙しく色々と考えねばならない。だが、そんなときでも「そこの心」つめり底にある根本の心はどっしりと落ち着かせていなければならない。

    そこの心とは「自分自身を常に客観的に冷静に見つめる眼」

    二つの自分

    思い込みをしてしまっては、決して勝負には勝てない

    まずは、様々な知識を得て、世間一般の善悪の判断や様々なジャンルの文化・芸術の良し悪しについてまで学ぶことだ

    人間の戦い、交わりには、幅広く深い心理の読みあい、駆け引きがある

    騙されないだけの知恵をもつこと。幅広い知恵をもつこと

    正しい姿勢
    目的・行動がもっとも無理なくスムーズに進むための合理的な身体の形

    「観る目」とは、敵の本質を見極める眼のことであり、対して「見る眼」とは、敵の表面的な動きを追いかける眼だという

    戦いにおいて働かせる眼は「観る眼」

    観ることは、遠くの様子を的確に捉え、近くの様子から大局を捉えることだと、説明している

    「遠い・近い」という区別はもちろん、まずは距離の問題である

    しかし、「遠い」とはずっと昔の祖先の歴史とか、あるいは遠い子孫の様子といった「時間の遠さ」を表す場合もあるし、「自分には縁遠い」という、思想や人生観の遠さを表す場合もある。そうした遠いモノたちについて適当な類推で解った気になってしまうと、大きな誤解が生まれ、それが大きな不幸につながることも、あり得る。「ふだんから、そんな眼でいようと意識しなければならない」

    精神的にも能力的にも、臨機応変に変化できる余裕を常に身につけておくことが、これからどう変わるか解らない世の中で生き延びるための基本の心構えであろう

    「練習のための練習ではない、実践のための練習」
    何事にも基本を理解し、把握することから始めるのは大切

    流れ・軌道・法則性

    パワーとタイミング

    シンプルイズベスト

    場数を踏む

    引き上げる意識

    敵の太刀の道を知ることが勝負

    知識として型を頭に入れておきながら、現場の状況に合わせてより効率よく、その型を「崩す」こと

    発想にも技術にも「瞬発力」が必要

    身体で覚えることが大切

    敵のくらいを見わくる
    すなわち、敵の実力や状況を的確に判断する眼力があって初めて成し得るテクニック

    経験が人を磨く

    相手の力を巧みに利用する

    体力を蓄える日々の心構えと努力が、いつか自分の命を救うことになるのだ

    前の勝ちから何かを学び、次の勝ちに結びつけるには、その勝ちがあくまで意思と実力によってつかんだものでなければならぬ。

    「受け」をそのまま「攻め」に転じるという考え

    手の内を隠すのもテクニックなら、見せるのもテクニック

    敵を線として捉える

    身体に覚えさせる

    一人で抱え切れそうにない大きな問題でも、それを「魚つなぎ」に整理して、確実に一歩一歩解決に向かっていく

    誰しも努力を重ねればその境地に至れる

    いそぐ心を持つな

    戦いの折折に、一つ一つ「この戦いで何を活かし、何を学んだか」を確認していけ

    「偶然の勝利」だとしたら、そんな勝利は「実の道」に近づけるものではない

    イメージ・トレーニング

    自分に自信を持つことの大切さ

    光・空間・高さ

    必ず先手を取れ

    一、まずは静かに構えて、不意に素早くなる
    二、うわべは強く早く動きながらも、心にはゆとりを持っている
    三、気持ちを激しく高揚させ、足を速く動かし、敵に近寄るや一気に攻める
    四、アレコレ考えを変えず、初めから最後まで同じリズムで敵を威圧

    一、三は瞬発力 二、四は気合い

    よくよく鍛錬あるべし

    事前の情報・その場の観察

    諸行無常 この世に永遠に変わらず栄え続けるものなどない

    油断大敵

    自信を持て

    自分の努力への信頼

    膠着状態がすでに失敗

    すぐに頭を切り替える

    常に物事の全体像を考え、その上で目の前の問題に対処瀬よ。その場逃れの取り繕いを重ねるだけでは、問題の根本は解決しない

    否定するのは『何でもかんでも長い刀であればよい』とする偏った執着心

    状況個々の特異性を考えないのは、思慮分別の浅いアタマである

    そんなアタマの持ち主は、必ずいつか失敗する

    慣れによる無意識

    「観」の眼を強くして、敵の心中を見抜き、状況を見分け、大局を読み、戦の流れをつかみ、敵味方の強弱をよくわきまえて、確実な勝ちへと向かっていく

    小さな一点に眼を奪われれば、大きなことを見落として、迷いが生じ、勝利を逃す

    兵法の本当の目付けとは、敵の心理を読み、そして動きを悟る「心眼」なのだ

    目の前にないものまで含めて周囲のすべてが見えるのが、武蔵の求める眼というわけだ

    どんどん上級へと進んでいくと、その果てに「初歩の技術を、より確かなものにする」という境地がある

    初歩と上級の技術に、使うときの格差はない

    物事とは初めから、他の物事と無関係にそれだけがドンと存在し続ける
    おいうわけではない
    他の物事とのつながりや関係から生まれ、そして、別の他の物事へと移り、消えていく。ということは、その物事は、それ自体としては、ずっと在るのではない。だから、無いのと同じである。

    日々いつでも智力と気力を磨くようになり、「観・見」二つの眼を研ぎ澄まして周囲のすべてを理解し、少しでも心に曇りなく、迷いの雲が完全に晴れた境地になる

    正しく、明らかに、大局を見つめて、進め

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著者プロフィール

作家

「2020年 『古関裕而 応援歌の神様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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