なぜ国家は衰亡するのか (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569603117

作品紹介・あらすじ

世界に覇を唱えた大国も、いずれは衰退しその主役の座を明け渡していく。この文明の衰亡は必然なのか? 衰退から逃れる道はないのか? 本書ではローマ帝国、ビザンチン帝国、大英帝国、アメリカ、中国そして江戸時代の日本など独自の世界を確立した大国興亡の光景を描き出し、その文明の「衰退の理(ことわり)」を歴史の教訓から導き出す。そして、大国興亡の歴史を読み解くことで、現代日本の行方を洞察していく。 目次より●愚かなるオプティズム ●衰退とは何か ●衰退を考える視点 ●大英帝国衰退の光景 ●ローマの衰退とビザンチンの叡智 ●衰退の行方を決める文明の構造 ●江戸時代の衰退と改革-日本型再生の原点 ●衰退する現代日本……。 人類史上、外敵の侵入で滅んだ文明はない。衰退はその文明の「内なる原因」によってなされたと著者は論じる。 世界史的・文明史的視点から、現代日本の衰退と再生を洞察していく「衰退学」の集大成である。

感想・レビュー・書評

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  • 結局何が言いたいのかサッパリ理解できず。第1章を読んでも衰退とは何かが読み解けないし、全体を読んでもなぜ国家が衰亡するのか明示されていない。
    英国エドワード朝との共通点が嫌というほど列挙されている。曰く、インフラ整備で住みやすくなった大都市に若者が流入し、中産階級が膨らんで貧富の差が縮小し、わざわざ危険で暮らしにくい海外に出ていく必要もなくなり、その代わりに楽しい海外旅行ブームが起こり、伝統にとらわれない新しい「軽薄な」文化が芽生え、個人の尊重と女性の権利が認められた、らしい。何て素晴らしい社会なのか! この理想社会に到達した後、それ以前に比べて発展のペースが減速することを「衰退」と呼ぶのなら確かに衰退なのだろう。おまけに1920年代は世界恐慌で全世界的に衰退したのであり、このような「享楽的」(?)な社会変化が衰退の原因とはとても思えない。
    本書を読んで結局「発展が衰退の唯一の原因」「盛者必衰の理」は真理であると確信した。著者の視点では、個人を犠牲にした全体主義国家でビジョンを持ったリーダーが蒙昧な国民を指導して衰退を防ぐのが好ましいと言っているように聞こえるが、そもそも衰亡論が誰のための議論なのかがすっぽり抜け落ちている。仮に国家が全体として繁栄しても、大多数の一般市民が犠牲になるのならまったく意味がない。
    おかしなことを言う人だと思って経歴を見てみたら、石原や安倍の右派政策ブレーンか。こいつらの言う「美しい国」とはそういうことなのね。納得。

  • 江戸時代のお蔭祭りというものでガス抜きをして江戸は続いていたという話が印象深い。
    また、中国はアジアではなくヨーロッパに近いという感覚を持っているというのは意外だった。たまからこそアメリカとも本質的なところでつながっているのかと

  • 国家というのは大きく繁栄すれば、必然的にその後には衰亡というものが控えている。歴史の中から大帝国などの「文明の衰退」を見つめ、その中からメカニズムを導きだそうという試み。今日、本が置かれている状況を見つめ直し、そういった衰退に備える。

    日本政治のリーダーシップの不在→ビジョンの欠落
     「国家目標」「国民的結束」が無いという状況

    衰亡の可能性を意識することが再生への道

    「自動化と創造性の矛盾」→「不断の柔軟性と自発性」

    日本における官僚機構の硬直性と、旧日本軍の盲目性。

    「より豊かに、平和でより自由に」からの脱却。

    そもそも平和とは?自由とは?豊かとは?そういった問いもほぼ日本ではなかった。自国だけの平和、権利の首相のみ、物質的豊かさ。オンリーの文化。

    成長=美ではない。

    拡がるキーワード:ミメーシス

  • インテリジェンスを勉強するのにちょうどよい。

  • なかなか示唆に富んでいたので、中西輝政の近著を購入した。
    アイデンティティは脈々と受け継がなければならない。

  • 好き嫌いが分かれるところだ。
    未来は歴史から学べる部分が多くなる程確かにと頷ける箇所とそうかな?と立ち止まって考えてしまう部分も多々ある。普通は読んでいてもそれ程違和感なく頁をめくれるが本書はそうならない。過去に起きた事実は間違いない事象として描かれているが(当たり前)、その経緯や要因が断定的な記載(必ずしもそうなの?)が大半なため、これが「ではないだろうか?」であればスルーできる箇所もどうしても立ち止まる。歴史がそうだ、通説だ、と言うものだけなら良いが、幾つかは持論に基づく想定である箇所も見られる。一度批判的な目で見てしまうと、いちいち気になって先にも進まない。勿論、筆者の主張が見受けられないかの如く、断定的表現が一切無いものは余計に困るが。
    さらに遅々として進まない原因は多用される難解な(私にとって)熟語の連続。これも漢字の得意な方には問題ないだろうが先を読みたくさせる気が失せてしまう。
    それに内容に違和感を持つとなおさらだ。もう少し勉強しろと言われればそれまで。歴史や漢字(国語?)に至るまで着いて来れないものは非常に切り捨てる事が理解できないわけでも無い。最後まで読むのに時間がかかりすぎて記憶にも余り残らなかった。結論、本書のタイトルに繋がった内容の中心点がどこにあるかわからないような、勉強不足な自分を大いに反省する。

  • 概要
    ・おかげ参りは江戸時代のカタルシス。
    ・日本史は物質的な欲の時期と、迷信のようなものを信じる人が多くなる時期が交互にくる。
    ・天明のききん、浅間山の噴火などの災害⇒田沼の失脚
     田沼時代はバブルの時代であり、不道徳な時代
     モラルの破壊の時代 
    ・寛政の改革 きゅうくつな時代と思われたかも・・・
     田沼の時代を奇妙に時代にあったともちあげる歴史学者や江戸を論ずる人が今もいる
     改革とは高い志が必要になる!!日本をどうすべきか真剣に考えた改革だ!

    アクションプラン
    ・今の時期、この令和の時代のあるべき国家像とは何だろうか、それを自分なりに考えていきたい。だから、もっと本を読んでいきたい。
    ・松平定信の改革は中西輝政氏が言うほどそんなに評価されるべき改革なのか、寛政の改革をもっと知りたい。

  •  端的に言うと、うーむ、残念。という一言。

     本作は、佐藤優氏と手嶋雄一氏の対談で言及されていて興味を持ったと記憶しています。(武器なき戦争引用)
     現実世界を取り巻くパワーバランスは米国中心。彼の国がどうなるのか、中国はどうか、インドだってわからない、中東の平和は、というか日本の行く末は、等々の疑問について、衰亡の理(ことわり)が開陳されるのではとの期待から購入しました。

     期待は大きく裏切られました。
     骨太なロジックにより主題が展開されることを期待しましたが、疑問を呈する短絡的な論述が多く、これらがいちいち気になって集中できません。

     例えば。イギリス人がスポーツ(サッカー)を愛するのは人生が先の分からないゲームであるからであり、だからこそ開き直ってイギリス人はプロセスそのものを愛する(P.51)とある。サッカーは主に下層大衆に愛好されていると私は習いましたが、そうした大衆がプロセスを愛するとは到底思えません。サッカー好きは男性に顕著であろうと思いますが、それをもって全英国を特徴づけるというのもどうか。演繹が過ぎると感じました。
     他にも、大英帝国の衰退の因として享楽的になった部分というのがあり、海外旅行ブーム、温泉ブーム、イベント好きという事象を挙げ、ローマでの「パンとサーカス」や温泉好きと絡めて、そこに共通因をみている。ひいては日本のレジャーブームや軽薄化から衰退の原因をほのめかしている(第三章)。これもなぜ英国人が享楽的となったのかを聞きたいし、その結果としてどうやって当時の英国の「エッジ」が失われなかったのかをしりたい。

     また結局本旨も良くわからないという状況に陥りました。
     序章には、国家の衰退について論じる、とあります。なかんずく著者が日本人であるからには日本の衰退局面に生かそうということは類推できます。ただ、本論では明示しないことで一層わかりづらくなっています。
     結びではようやく、日本のあるべき姿が述べられています。因みにそれは、
    「一口で言えば、「自由で、活力に富み、伝統と歴史を重んじて、世界で自立し名誉と協調を重んじる国」(P.234)」
    ということです。私としては具体性を全く感じませんでした(そもそも衰退を認定する現状分析が希薄であったこともありますが)。
     結局私はこのように解釈しました。『日本は今、なんだかヤバい。過去を振り返るとローマとか英国は過去享楽的になってヘコんだ。日本は今なら間に合う、誇りと伝統と自信をもって気合いで生きていこう』、こんな感じにしか解釈できませんでした。

    ・・・

     ということで、ネガティブなことばかり口にして反省しています。勿論私の理解力不足は火を見るより明らかであります。きっと深遠なことが書いてあったのであろうとは思います。 
     なにしろ筆者は京都大学の名誉教授であるし、間違いなく私よりもインテリジェントな方でしょう。ただ、議論の進め方は、昭和日本風で、結論から切り出す明快な欧米的なものではありませんでした。また、衰退を論じるにあたり、色々な可能性や仮説が考えられる中で、それでもこれが一番ふさわしい何故なら・・・という他の可能性の検討を経ず、筆者の感ずるままの話に付き合わされた感がありました。
     安易な答えを求めすぎたことを反省し、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を読み進めることにしました。

  • 再出版されたんですよね
    それでも、もう時評ですらも忘れられて。
    内容的に今現在でも斬新と言いますか、歴史の繰り返し
    を突きつけられてオドオドするしかなかったですね。

  • ・観察と心を、常に二分しておくことが不可欠なのである。
    ・「志」という語とは無縁の、本能のみによってしか生きられない「濁流」が、人の世にはつねに絶ち難くあって、それが改革を阻む勢力の結集点となるときの恐ろしさを教えるものである。

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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