社会的ひきこもり 終わらない思春期 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569603780

感想・レビュー・書評

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  • 約20年前のものなので、用語は読み替えが必要なところはあるが、ひきこもりシステムを分かりやすく説明している。ただ、結局、治療という名の下に「会話を豊富に」「本人も治療に参加」など、氏が後に紹介するオープン・ダイアローグに至る前の準備資料のような感じ。

  • ○本の概要

    社会的ひきもりという新しい現象について、その原因や実態について解説しつつ、対処法についても紹介。現在の日本の教育システムにも疑問を呈し、今後、社会的ひきこもりを巡ってある医療や教育のあるべき姿についても一考する。


    *社会的ひきこもりの原因は複雑に絡み合っており、シンプルに捉えることが難しい。そこで、「引きこもりシステム」という捉え方を行う。個人、家族、社会という3つの観点から、原因を考え、対処していくことが大事

    *引きこもりの当事者への対処は、非常にアドラー心理学と近いような信条に基づくものである。まずそこに居ることを認めることが大事。引きこもっている現状を否定せず、そこに居ることを認め、コミュニケーションをとっていく
    ・まずは挨拶から行う。できる限り可能なタイミングでは声を書ける
    ・説教、罵声、非難などはしてはだめ。辛抱強くコミュニケーションを取り続け、誘うように働きかけを続けること
    ・本人がいなくても、まずは親だけでも通院するといい。「あなたのことが心配なので、病院に通っている」と声をかける
    ・必ず、病院に行く日の朝に「今日一緒にいかないか」と声をかける。前日に声をかけるのは、実際に出かけるまでにじかんがあるため、不安が募り、断られるケースが多い

    *基本的心構え
    ・信じてまつ姿勢
    ・北風よりは太陽
    ・干渉を避けて見守る
    ・愛よりは親切
    ・非難されても腹をたてず、十分に聞く
    ・本人の劣等感を気にしない
    ・お金は渡す。金額は一緒に相談して決める。「必要に
    応じて渡す」というケースになると、問題化しやすい

    *社会的ひきこもりのケースのほとんどは男性であり、著者自身も受け持ったケースの8割以上が男性であった
    ・男性は女性よりも学校や社会において期待されることが大きく、それによって苦しむことが一因として考えられる

    *暴力はきっちりと拒否する。それは専門家の指示を仰ぎながら、回避行動を取るべし

    *不登校の多くは自然に回復する。その一方で、社会的ひきこもりの最初のきっかけとなる原因のほとんどが学校への不登校である

    *社会的ひきこもりへの対処としては、経験豊富な医者の指示を仰ぐことが重要で効果的であるものの、医者の提言をすべて受け入れ実行できる親は多くない
    ・人は習慣を変えることが容易ではない

    *半年以上引きこもりを続けるならば、何かしらの治療行動を起こすべし。

    *引きこもっている本人が一番引きこもっている現状を問題視している。したがって、そのような現状について正論んで問いだしてはいけない。憎しみを生んでしまう。



    *まず家庭内暴力を沈静化させてから、社会的ひきこもりに対処できるようになる
    ・家庭内暴力においては、母親が犠牲になることが多い

    *社会的ひきこもりのケースの、役半数が家庭内暴力を含む

  • 長年臨床の場で「ひきこもり」問題の事例を見つめ、また解決に向かっていた医師が著者。

    1998年が第一版。

    「ひきこもり」の症状などに関する理解が第一部で理論編となっており、第二部では具体的にどう向き合っていくかという実践編という構成になっている。

    最近(2009年)では、あまりひきこもりが社会的問題として取り上げられることは少なくなった様に思う。
    それはそういった事例が減ってきた、ということなのかそれとも単に社会がそう言ったことに興味を失ったのか、はわからない。
    しかし現在ニートと呼ばれる人々の中には、ある程度このひきこもりと置かれている状況が似通っている人もいるだろう。

    この本の中で著者は「ひきこもり」という現象を「個人の病理」ではなく社会システムや家族が抱える病理として捉えている。それは実際的な原因がどうか、ということよりもひきこもりの状態に陥っている人間が社会に復帰するためには、家族や社会との接点の回復がどうしても必要になってくるからである。

    「社会的ひきこもり」は不登校からの状態維持によっておこる場合が多い。

    また単純にひきこもりそのものの問題よりも、それによって引き起こされる二次症状の方が問題が大きいように思う。
    「対人恐怖症」「脅迫症状」などの症状により、いっそう社会に復帰することが困難化し、循環するシステムの様にひきこもりが内側に閉じていく。

    興味深いのは、ひきこもる若者の大半が男性である、ということだ。

    著者は競争を避けることで、男性のアイデンティティが発展しにくいという社会の現象をそこに見ている。確かに一時期過度に競争を忌避する教育現場があったことは確かだ。もちろんそれは教育だけが問題なのではなく、それを是としていた社会そのものの問題があると見るべきなのだろう。

  • 実際に患者に接していたのだろうからそれなりの精度はあると思われる。ただ、それでも、人の精神状態というのは多様だからかならずしも筆者の例示する症例に当てはまるとは限らない。たぶん筆者もそのことについて認知しているだろう。筆者の説を信じるなら、ひきこもりに接するにはかなり寛大な心を持って気を長くする必要があるようだ。私には難しいだろう。このように他人の感情の機微に敏感であろうとすれば、私の方が心を病んでしまいそうだ。まだまだ自分の未熟さを思い知った。

  • 13年くらい前に出版された本なので、若干の古さは否めないが、入門書としては適当です。

  • [ 内容 ]
    三十歳近くなっても、仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす青年たち。
    今、このような「ひきこもり」状態の青少年が増えている。
    「周りが甘やかさず、厳しく接するべき」といったお説教や正論では、深い葛藤を抱えた彼らの問題を、けっして解決することはできない。
    本書では「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、家族・社会から成る「システムの病理」として捉える視点から、その正しい理解と対処の方法を解説する。

    [ 目次 ]
    第1部 いま何が起こっているのか―理論編(「社会的ひきこもり」とは 社会的ひきこもりの症状と経過 さまざまな精神疾患に伴う「ひきこもり」 社会的ひきこもりは病気か ほか)
    第2部 「社会的ひきこもり」とどう向き合うか―実践編(正論・お説教・議論の克服 家族の基本的な心構え 治療の全体的な流れ 日常の生活の中で ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ラカン、ベイトソン、中井久夫などに精通する。
    「ひきこもり」という言葉を作り出し、人口に膾炙するようになったのもこの本がきっかけ。


    ・著作紹介
    『社会的ひきこもり』(PHP新書)
    一般的には、本著で認知されるに至った。このことから「ひきこもり」という言葉は一部で斎藤の造語だと思われているが、
    本書のタイトルは英語の翻訳である。同書はひきこもりについてのエッセー。

    『文脈病 ラカン/ベイトソン/マトゥラーナ』(青土社)
    雑誌「imago」に寄稿した論考を集め評論家としてデビュー、大きな反響を呼ぶ。
    漫画、アニメーション、デヴィッド・リンチなどを精神分析の立場から解釈する。以降、文章のスタイルはこれに準ずる。


    『戦闘美少女の精神分析』(太田出版)
    戦うアニメのヒロインはなぜ少女なのかについて分析。
    『文脈病』でも触れた、マイノリティな米国の画家ヘンリー・ダーガーの絵画を引用し、ダーガーを広く国内に知らしめる結果となった。カバーデザインは美術家村上隆のヒロポン。

    『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP研究所)
    幅広い読者を対象とするが、ひきこもりについて実際の診療をふまえて記述しているため、
    これらに関連してTV、講演等でひきこもり救出について語るようになる。
    近年精神科医にかかる患者が増加していることに関しては否定的な見解を持っており、精神科にかかる敷居はある程度高いほうがよいと発言している。
    また社会的な事件などに対し、心理学的、精神病理学的な解釈が広く求められる風潮に対しても否定的である、

    大澤真幸、東浩紀(デリダ)、浅田彰などと交流を深める。



    ISBN:4569617182 『若者のすべて――ひきこもり系VSじぶん探し系』(PHPエディターズグループ、2001.07)
    ISBN:4569621147 『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP研究所、2002.06)
    ISBN:4535561974 『博士の奇妙な思春期』(日本評論社、2003.02)
    ISBN:4838714394 『OK?ひきこもりOK!』(マガジンハウス、2003.05)
    ISBN:4141890898 『若者の心のSOS』(日本放送出版協会、2003.07)
    ISBN:4569630545 『心理学化する社会――なぜ、トラウマと癒しが求められるのか』(PHPエディターズグループ、2003.09)
    ISBN:4314009543 『ひきこもり文化論』(紀伊國屋書店、2003.12)
    ISBN:4326652888 『解離のポップ・スキル』(勁草書房、2004.01)
    ISBN:4791761189 『フレーム憑き――視ることと症候』(青土社、2004年6月)
    ISBN:4163664505 『文学の徴候』(文芸春秋、2004年11月)
    ISBN:4121501748 『「負けた」教の信者たち』(中公新書ラクレ、2005年4月)

    ・内容

    思春期の心理的病理を原因に人を避け社会を避け、自室に閉じこもる状態を特定し、ひきこもりと定義している。

    ひきこもりと診断する条件の一つとして、重要なのは、ひきこもりが一時的な病理となっている、という点である。
    ひきこもりに端を発し、二次的に他の精神的疾患を発症している(ように見える)場合でも、斉藤は一括してひきこもりと診断しようとする。

    それとは逆に、その他の症状(うつ状態等)を持ち、それが要因となって「ひきこもり」の様相を見せても、それは斉藤のいうひきこもりとは診断できない。なぜならひきこもりと診断するには、思春期特有の精神構造を患者のなかに見出すことが必要だからである。




  • 2月7日購入。

  • 08/02/04

  • 「ひきこもり」の解決に電子メールなどが役に立つのだろうかと思い読んでみた。その答えを見いだすことはできなかったが、ひきこもりのメカニズム?や対処方法については理解できた。

著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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