日英同盟―同盟の選択と国家の盛衰 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569611174

感想・レビュー・書評

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  • 本書を読む前に、日英同盟の破棄が遠因となり太平洋戦争の道に進んだのではないかと考えていたが、外交とはそんなに単純ではないことがわかった。現在の外交関係もそうだが、たとえば日米関係を重視するか、日中関係を重視するか、日本国内でも意見は分かれ、それは同様に、アメリカ国内でも分かれている。

    日英同盟の締結、日英同盟の破棄は、日英両国の思惑だけでなく、ロシア、ドイツ、フランス、中国、アメリカの思惑がそれぞれ複雑に絡み合っている。

    日露戦争前、ドイツはロシアの脅威を取り除くため、ロシアの目を東に向けさせるために、イギリスをそそのかし、日英同盟をそそのかしたとのこと。清はロシアの圧力を逃れるため、日英同盟を利用しようとしたこと。
    第一次世界大戦が始まると、日英を分断するため、ドイツは黄禍論を持ち出したこと。アメリカではドイツ系住民が第一次世界大戦への参戦を反対したこと。その様子を目の当たりにした松岡洋右は、日独伊三国同盟により、ドイツ系アメリカ人が押えとなり、アメリカが対日戦争を始めることはないと考えていたこと。

    <目次>
    第一章 日英同盟の締結
     1 ヨーロッパ列強の中国進出
     2 イギリスの真意
    第二章 日露戦争の勝利
     1 日露戦争と英米の世論
     2 イギリスの援助
    第三章 第一次世界大戦と日本の対応
     1 第一次世界大戦の勃発
     2 対英支援作戦
     3 ヨーロッパへの派兵要請
    第四章 離反する日英両国
     1 イギリスの不満と不振
     2 日本の対英支援の評価
    第五章 日英同盟崩壊の要因
     1 ドイツの日英同盟分断策
     2 日英同盟解消後の日本の動向
    第六章 第二次世界大戦への序曲
     1 ワシントン体制の崩壊者
     2 日本参戦へのドイツの策謀
    第七章 日英同盟に学ぶ日本の針路
     1 国際機関と二国間同盟
     2 同盟国選定の要件
     3 日英同盟の価値と解消の誤算
    むすび

    <メモ>
    世論の反対があり、さらに外交問題が常に政争や政府攻撃の材料として利用される日本は、現在のように対外関係より国会対策などの国内対策を重視しなければならなかったのであろう。(111)

    駐日イギリス海軍武官ライマー大佐 1918年3月11日 「日本の現状」
    日本における親独感情は目に余るものがあるが、これは日本の指導的な学者・医者・法律家などがドイツに学び、さらに日本陸軍がドイツ陸軍をモデルにしているからである。特にドイツの敗北は、ドイツ方式を取っている日本陸軍の評価も低下させるため、陸軍には不快感をもって迎えられている。(114-115)
    1917年3月の大英帝国会議に配布された「日英関係に関する覚書」
    (日本の膨張政策に対し)日本の政治目的は大英帝国の部分的消滅をともなうものであり、日英間に強力すべき共通の目的は存在しない。この日本の野望をわれわれが容認できないとすれば、日本の野望を武力で阻止する時がくることを決意しなければならないだろう。(120)

    余りにも軽率でセンセーショナルに報じる未成熟な日本のジャーナリズムが反英論を煽り立てるのをみて、これらジャーナリズムを政府が統制できると考えていたイギリスは、前述のように日本の不誠実を常に強く感じていた。(128)

    日英同盟解消にともなう自主軍備の増強が軍人の地位や発言力を高め、日本を軍部指導の国家へ、日本を太平洋戦争へと導いていったのであった。(161)
    日英同盟が解消され留学先をイギリスから閉ざされると、日本海軍は留学先や技術導入先を徐々にドイツへと変えていった。(162)
    1930年代後半には海軍中枢部に親独派が増え影響力を強めていった。(163)
    (ドイツ系アメリカ人の強力な反日論に悩まされた松岡外相の書記官時代の体験が、松岡外相にドイツのアメリカにおける影響力に対する過信を生み、日独伊三国同盟、さらにはソ連をも含めた四カ国連合構想へと連なったのではなかったか。(166)
    松岡外相の第一次大戦時に在米大使館員として、ドイツ系アメリカ人が、アメリカの世論を動かし、政治を動かす力に苦しめられた体験が、松岡外相にアメリカがドイツに宣戦することはないであろうとの強い確信を生み、それが天皇や吉田海相の判断に大きな影響を与え、国際通を辞任する海軍が「だまされ」、日本を破滅へ導く一員となったのであった。(167)

    日英同盟の日本に対する何よりの功績は、国際感覚がなく長期的世界的視野に欠ける日本が、世界的視野から戦略的思考ができるイギリスを同盟国としたため、二十年間にわたり、曲がりなりにも国の針路を大きく誤らなかったことであろう。(211)
    日英同盟の解消によるイギリス海軍との疎遠が、日本海軍の皇室との関係を希薄にする。そして、それがイギリス海軍を教師としてきた海軍の国内政治上の地位を下げ、1930年代にはドイツを教師としてきた陸軍の発言力を高めていった。(214)


    2014.04.13 日英同盟を調べようと思い、Amazonで見つける。
    2014.04.26 読了
    2014.10.24 「橘宏樹さんの『現役官僚の滞英日記』」の記事で紹介

  • 2017/12/08 15:17:07

  • 平成24年11月26日読了。

  • 日本とイギリスの同盟についてはもちろん、それに絡む事も書かれていて、割とわかりやすく読みやすかったです。

  • [ 内容 ]
    日露戦争の勝利、議会民主主義の実現など、明治日本はイギリスとの同盟により念願の列強入りを果たした。
    しかし、やがて結ばれるドイツとの同盟は、日本を破滅の道へと追いこむ。
    国家の盛衰は同盟国の選択によって決せられるのか?
    本書は、元海上自衛官、軍事外交史の研究家である著者が、近代史を辿りながら、日本は海洋国家との同盟で栄え、大陸国家との同盟で荒廃を招いた史実を検証している。
    わが国の外交政策決定に一石を投じる書である。

    [ 目次 ]
    第1章 日英同盟の締結
    第2章 日露戦争の勝利
    第3章 第一次世界大戦と日本の対応
    第4章 離反する日英両国
    第5章 日英同盟崩壊の要因
    第6章 第二次世界大戦への序曲
    第7章 日英同盟に学ぶ日本の針路
    むすび

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    [ 参考となる書評 ]

  • 読んでいる途中なので、未読扱い。

  • 090601

  •  日英同盟が日本の繁栄をもたらしたとはよく言われるところであり、また事実であると思われますが、日英同盟自体が常に安泰であったかというと、そうでもなかったようです。そこら辺の事情を、指導者層の発言を引用しつつ、具体的に述べた本であると言えます。現在、日本と中国との対立が避けられない状況にあるように思われるなかで、かつて日英同盟が周辺諸国に対してどのように影響を与えたか、また日本にどのように影響したかを本書で学ぶことは、有意義と考えます。
     一点減点した理由は、急に時系列が変わる点が若干混乱した点、主観的な点を決め付けている箇所が散見され、若干説得力を低減させている点があるからです。

  • こういう本にしては珍しく、どんどん読み進められます。内容が平易であるとかではなく、楽しくて。この辺りは興味が尽きないなぁ。もっと詳しく読んでみたい。

    しかしまぁ……極端な感想ですが、この辺の歴史読むと、ロシアが怖く思えます。
    国ってどうしてこんなに国益とか利害とかがぶつかるんだろう。どうしてみんなこんなに勝手なのだろうと思わずにはいられない。
    民間レベルの方がよっぽど有益な親交関係を結べると思ってしまう。

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著者プロフィール

元・防衛大学校教授。NHK「坂の上の雲」海軍歴史考証・海軍指導担当。

「2010年 『日露戦争を世界はどう報じたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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