自己愛と依存の精神分析: コフート心理学入門 (PHP新書 196)
- PHP研究所 (2002年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569621050
作品紹介・あらすじ
フロイト流の伝統的な精神分析では、「自己愛」や「依存」を脱却することが、自我の発達であるとしてきた。しかしコフートは、人間本来の自己愛や依存心はもっとも認め合うべきものだという。それらを受け入れてこそ、お互いの「ギブ・アンド・テイク」が成立し、より成熟した人間関係が築けるのだと唱えた。本書は、現代精神分析に多大な影響を与えるコフートの自己心理学を紹介。「共感」「自己対象」などをキーワードに、臨床医である著者が、心病む現代人に最もふさわしい治療理論を教える。
感想・レビュー・書評
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親子関係であれ,恋愛であれ,相手に依存しすぎてしまう人や、依存心が強くて悩んでいる人には心強い心理学者コフート。
著者はコフートの自己心理学を紹介しつつ、
わかりやすく〈上手な依存〉と〈健康な自己愛〉を説いていきます。
メンタルな面で繊細な方は、フロイトよりも,コフートの心理学の方が柔らかく,傷つかないと思います。
心理学に興味のない人にも人間関係において、参考になる本ではないでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フロイトに喧嘩売ったコフートの解説本。自己愛マンセーな態度がアメリカ人に大人気だとか。
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流行にのって読んでみました。入門書とはあり優しそうにも思えるけれど、なかなか色んな意味で読みにくかった。
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私のような心理学の全くの初心者にとっても、コフートの自己心理学が実際の生活に約立つものであることが理解できた。特に「人間の心理ニーズを満たすための自己対象」、「自己愛が健全に機能するための周囲の人の支え」に関する記述は大いに参考になった。自己心理学を継続勉強していこうという気にさせてくれた良書である。
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新しい依存についての解釈です。決して依存は悪いことばかりではない気がします。
むしろ依存しないで生きている人間なんているんでしょうか? -
”2017年4月の人間塾 課題図書
<キーフレーズ>
<きっかけ>” -
著者が上智大学で心理学の初学者に向けておこなった講義をもとにした、コフートの心理学の解説書です。
フロイトに始まる「自我心理学」では、ふつう対象に向かうはずのリビドーが自分に向いてしまった状態を「自己愛」(narcissism)と呼びます。こうした立場では、口唇期、肛門期、性器期という「自体愛」の段階を経て、「自我」が成立する自己愛の時期に至り、最終的には「対象愛」という成熟した段階に至るという発達理論のなかに、「自己愛」が位置づけられています。
一方コフートは、「自己愛」そのものが成熟して、相手の気持ちに共感することができるような「より高度な自己愛」へと発展すると考えます。フロイト以降の伝統的な精神分析の世界では、「自己愛」や「依存」は自我の弱さに由来するものとして、否定的にとらえられていたのに対し、コフートは他者との共感を成熟したあり方にもたらすことが人間の発達のゴールだと主張し、患者に対する共感を中核にした治療理論を構築しました。
またコフートは、対象リビドーではなく自己愛リビドーが備給された、強く共感を覚えるような対象のことを「自己対象」(selfobject)と呼んで重視しています。「自己対象」は、「鏡自己対象」「理想化自己対象」「双子自己対象」の三つの種類に分けられ、こうした自己対象が人間の真理の基本的なニーズであって、それを満たしあうような仕方で人びとはおたがいに共感しながら生きていますと論じました。
本書では、こうしたコフートの心理学の根底にある人間観を、わかりやすく解き明かしており、興味深く読みました。 -
個人的な趣味の範囲で精神分析関係の本は嫌いではないし、営業職である私にとっていろんなパターンの相手と接する場面においてこの手の本は参考になる場合が多い。
フロイトやユングという名前は比較的聞いたことがあるものの、本書はコフートという人の入門書的位置付けであるも、コフートについては聞いたことが無い人が多いかも知れない。
もちろん専門家ではないので詳しい理論については理解しようとも思わないけれども、大切なことは相手の気持ちになってみたらどう感じるだろうかということ。
ただ、相手の気持ち入り込みすぎて流されてしまっては客観的な判断はし難くなってしまうこと。
もともと人間は一人では生きてはいけず周りに頼りながら生きていくものだというようなコフートのスタンスはとても人間的であり、共感できる。
いささか内容が素人には難解で、専門的な感じが否めないが、再読すれば比較的理解出来るかもしれない。 -
何よりコフート心理学の特徴だと感じたのが、依存を承認していること。精神分析では発達の段階として、まず自体愛、自己愛、対象愛という順序で成長していくというのが前提なのだが、コフートは精神分析医で精神分析の創始者のフロイトの娘のアンナ・フロイトに師事していたのにも関わらず、コフートはその精神分析の発達段階とは違い、自体愛、自己愛、成熟した自己愛という段階が必要だと言っている。これらでいう自己愛とは、他者と関わる時、自分を評価して欲しいとか愛して欲しいという思いが強く、相手がどんな気持ちとか、何を考えているかという「共感」ができず、対象関係なのに、自分のことばかりに意識が向いている状態で、相手に「依存」している状態である。
フロイトはこれを対象関係ではないと認識して、これを脱却して対象愛に向かわなければいけないと言っているのだが、コフートは「人は依存しないと生きていけない」と言いお互いが成熟した依存をして共感しあう相互依存なら「ギブアンドテイク」で必要だと言っています。そしてそうしてエネルギーを補給してくれ、共感を感じる対象のことを、自分の一部のように感じる対象という意味で「自己対象」と呼びます。
そしてこの自己対象には三つの種類があり、一つが自分は大切にされている、価値のある人間だと感じさせてくれる対象を「鏡自己対象」。自分がどのように生きていけばいいのか分からない時に、生きていく方向性を与えてくれるような対象を「理想化自己対象」。自分はみんなと同じ人間なんだ、みんな一緒なんだと感じさせてくれる対象を「双子自己対象」と呼びます。これらの自己対象を上手くみつけ、お互いにギブアンドテイクな関係を作っていくことこそ、コフート心理学の特徴であり、目指すところのようです。