梅原猛の『歎異抄』入門 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569632674

作品紹介・あらすじ

「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。強烈なパラドックスを含むこの成句で有名な『歎異抄』。その一言一句から発せられる「毒」と「薬」は、時代や階層を超え、人々の魂を揺り動かしてきた。親鸞の純粋なる信仰を、直弟子唯円が大胆率直に記述した『歎異抄』の魅力とは何か。▼わが国でもっとも優れた宗教書であると絶賛する著者が、その真髄をあまさず語る。法然と親鸞、親鸞と唯円という師弟関係を通して浮かび上がる独自の世界。道徳の延長ではない宗教の本質をえぐり出す。▼また、『歎異抄』の聞書作者である唯円その人の出自をめぐり、梅原流の歴史観を披瀝する。これまで唯円は東国の出身であるとされていたが、数々の資料を通して、西国の出身ではないかと。そして親鸞と唯円の深い関係も、親鸞の晩年に京都で築かれたのではないかと、独自の推論を展開する。『歎異抄』成立の秘密に迫った興味深い洞察である。現代語訳と詳しい年表付きの決定版である。

感想・レビュー・書評

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  • 現代語訳のところは飛ばし読みした。前半の歎異抄ができた背景が分かりやすい。

  • 梅原仏教が歎異抄を解く。

  • 「人生に行き詰まり、自己に耐えられなくなったとき」、著者は、歎異抄を読むのだそうです。あなたの無力感にも効き目はあるでしょうか。

  • (2016.05.10読了)(2005.02.12購入)
    Eテレの「100分de名著」で『歎異抄』が取り上げられたので、この機会に積読中の親鸞関連の本をいくつか読んでしまうことにしました。手始めにこの本です。
    本のタイトルに著者名が入っているので、驚きますよねえ。編集者の発案だとは思いますけど。ふつうは気恥ずかしくて、断るとは思いますが、残っているわけだから。
    ほかの同種の本とは一味違うよ、ということなのでしょう。
    第六章に『歎異抄』の原文と現代語訳がついています。そこだけだと、80頁弱ですので、比較的手ごろに読むことができます。
    入門とうたっているので、『歎異抄』を読むにあたって知っておいたほうが良いと梅原さんが考えた部分が、第一章から第五章まで、120頁ほどにわたって書かれています。
    親切で分かりやすいのではないでしょうか。
    親鸞の浄土真宗に至るまでの仏教の話や、法然、親鸞、唯円のことについても述べられています。唯円は、『歎異抄』の著者であろうといわれている方です。
    唯円は、親鸞が常陸の国にいたころの弟子というのが一般的な説のようですが、梅原さんは、得意の想像力を駆使して、親鸞の娘さん(覚信尼)が結婚した相手の方(禅念)が再婚で、その連れ子ではないかと推測しています。生まれは、京都周辺なのではないかと。
    『歎異抄』は、書かれたのちに一般に流布したものではなく、宗派内資料として、浄土真宗のお寺(本願寺)に秘蔵されてきたものということです。
    浄土真宗の関係者に流布すると誤解を招く内容が含まれているためということです。
    親鸞の教えは、「阿弥陀の本願を信じ念仏を唱えれば、極楽浄土に行けますよ」ということのようです。ほかのことはあれこれ考えることはありません。

    【目次】
    第一章 『歎異抄』わが心の恋人
    第二章 「専修念仏」への道
    第三章 法然、親鸞、そして唯円
    第四章 道徳の延長線上に宗教はない
    第五章 弥陀を信じた親鸞の究極の境地
    第六章 現代語訳『歎異抄』
    解説 『歎異抄』成立の秘密に迫る推論  山折哲雄
    親鸞に関する年表

    ●親鸞の文章(17頁)
    法然お言葉はたいへん明晰で、透明で、わかりやすい。
    それに対して弟子の親鸞の言葉となると、そこにはおそらく、どのような日本の学者や宗教家の言葉にもないような重く淀んだ言葉の響きがある。
    ●親鸞と『歎異抄』(18頁)
    『歎異抄』をもって親鸞の著作を代表させるわけにはいかず、『歎異抄』を読みこなすことが直ちに親鸞の思想を理解したというのは、いささか危険な考えだといってよかろう。
    ●『般若心経』(92頁)
    『般若心経』は人間に、心の執着を捨てて無になれ、無の心、自由な心になれと教える経典であるが、経典は、多くはなくなった縁者の追善供養のために読まれるのである。つまり、六道をさまよう亡者の霊に、執着を捨てて成仏せよと勧める経典なのである。
    ●南無阿弥陀仏(153頁)
    阿弥陀さまは、悪人救済という不思議な誓いを立てられ、そのために、誰でも覚えやすく唱えやすい「南無阿弥陀仏」という名号を考え出されて、その名号を唱える人を必ず極楽浄土に連れて行こうと約束されたのであります。

    ☆関連図書(既読)
    「歎異抄」釈徹宗著、NHK出版、2016.04.01
    「歎異鈔」唯円著・梅原真隆訳、角川文庫、1954.10.05
    「歎異抄」杉浦明平著、岩波書店、1983.10.18
    「出家とその弟子」倉田百三著、角川文庫、1951.08.20
    ☆梅原猛さんの本(既読)
    「仏像」望月信成・佐和隆研・梅原猛著、NHKブックス、1965.04.20
    「続・仏像」望月信成・佐和隆研・梅原猛著、NHKブックス、1965.10.20
    「湖の伝説」梅原猛著、新潮社、1977.01.05
    「空海の思想について」梅原猛著、講談社学術文庫、1980.01.10
    「水底の歌(上)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「水底の歌(下)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「ヤマトタケル」梅原猛著、講談社、1986.01.20
    「ギルガメシュ」梅原猛著、新潮社、1988.10.15
    (2016年5月11日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。強烈なパラドックスを含むこの成句で有名な『歎異抄』。その一言一句から発せられる「毒」と「薬」は、時代や階層をを超え、人々の魂を揺り動かしてきた。親鸞の純粋なる信仰を、直弟子唯円が大胆率直に記述した『歎異抄』の魅力はと何か。わが国で最も優れた宗教書であると絶賛する著者が、その真髄をあまさず語る。法然と親鸞、親鸞と唯円という師弟関係を通して浮かび上がる独自の世界。道徳の延長ではない宗教の本質を抉る。原文と現代語訳、年表付きの決定版。

  • 2015/10/18

  • この一冊で親鸞と唯円の生涯を辿る事ができる。

  •  浄土真宗の教え、歎異抄の入門書。

     親鸞と唯円の二人の人生といくつかの章を追いながら歎異抄とは何かを記していく。
     煩悩溢れる悪人を救うことが仏であり、煩悩、迷いのない善人でさえ救われるという有名なパラドックス。仏という絶対から見れば個人の善悪や意思など小さなことであり、ただただ信じて普通に善意ある生活を送ればよいという教えなのかと感じた。
     後半には全文とその口語訳文が載ってるのもありがたい。文庫サイズでハンディに歎異抄を読むことができる。

  • 西洋哲学の行き詰まりから、
    その思想に基づいた近代とその果ての現代もまた行き詰る。
    若い頃、西洋哲学を研究しており、、
    それを日本に根付いた東洋的な思想で打開しよう、と考えた
    梅原猛さんに興味を持ったので、
    読みやすそうな本を選んで、読んでみました。

    当時の僧の偽善を謗り、人間の持つ欲望を認めて、
    どんな悪人も(だからこそ)、
    とりあえず念仏を唱えときゃー救われるんだよと
    語る親鸞は魅力ある人物だと感じました。

    また法然、親鸞、「歎異抄」を書いた唯円の関係について
    歴史的資料から梅原さんが思いめぐらせており面白いです。

    「歎異抄」の中に書かれている親鸞が語るパラドックスは
    どれもハッとさせられるようなものです。まぁ屁理屈っぽいけれどw

    また折に触れて読み直そっと。

  •  実家も嫁ぎ先も浄土真宗なのだが、それを知ったのはごく最近だ。
     その浄土真宗の開祖は親鸞。そして親鸞の死後、親鸞の教えが
     どんどん違う方向に歪んで広がってゆくのを嘆いて弟子の唯円が書いた
     のが「歎異抄」なのだ。

     いきなり歎異抄を原文で読んでもわからないので、哲学者の梅原猛さん
     が書かれた入門書を読んでみたのだ。
     とてもわかりやすく、唯円が描く親鸞はとても魅力的な人だと思えた。
     魅力的と言っても強い人というのではなくてものすごく謙虚な人なのだ。
     仏教の開祖を言われるお釈迦さまが浄土真宗のことをどう思うか・・
     私としてはちょっと疑問なのだが、結局親鸞の生きた時代は源平の戦乱
     から鎌倉時代の初めの頃で、一般庶民の命なんで紙切れ以下だったん
     だと思う。だからこそ、難しいことは何もしなくてただ、阿弥陀さまの力に
     すがって「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで浄土に行けるという教えは
     あっという間に広まったのだと思う。
     ただ、現代社会ではどうかな?
     知恵が邪魔をしてしまって素直に念仏を唱えるって出来ないと思う。
     それでも、歎異抄を読むと親鸞が好きになってしまうのだけど。

  • [ 内容 ]
    「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。
    強烈なパラドックスを含むこの成句で有名な『歎異抄』。
    その一言一句から発せられる「毒」と「薬」は、時代や階層をを超え、人々の魂を揺り動かしてきた。
    親鸞の純粋なる信仰を、直弟子唯円が大胆率直に記述した『歎異抄』の魅力はと何か。
    わが国で最も優れた宗教書であると絶賛する著者が、その真髄をあまさず語る。
    法然と親鸞、親鸞と唯円という師弟関係を通して浮かび上がる独自の世界。
    道徳の延長ではない宗教の本質を抉る。
    原文と現代語訳、年表付きの決定版。

    [ 目次 ]
    第1章 『歎異抄』わが心の恋人
    第2章 「専修念仏」への道
    第3章 法然、親鸞、そして唯円
    第4章 道徳の延長線上に宗教はない
    第5章 弥陀を信じた親鸞の究極の境地
    第6章 現代語訳『歎異抄』

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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