歴史学ってなんだ? (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
3.52
  • (16)
  • (46)
  • (56)
  • (4)
  • (4)
本棚登録 : 390
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569632698

作品紹介・あらすじ

歴史は何のために学ばなければならないのか?そもそも、社会や個人の役に立つのだろうか?年号ばかり羅列する歴史教科書への疑念。一方で相対主義や構造主義は、"歴史学の使命は終わった"とばかりに批判を浴びせる。しかし歴史学には、コミュニケーション改善のツールや、常識を覆す魅力的な「知の技法」が隠されていたのだ!歴史小説と歴史書のちがいや従軍慰安婦論争などを例に、日常に根ざした存在意義を模索する。歴史家たちの仕事場を覗き「使える教養」の可能性を探る、素人のための歴史学入門講座。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高校(中学)時代、歴史の授業は好きだった。歴史学、歴史を科学するとは?
    問題
    1歴史学は歴史上の事実である「史実」にアクセスできるか。
    2歴史を知ることは役に立つか、どんな時、どんな形で。
    3そもそも歴史学とは何か。

    27
    歴史の資料を史実ととらえるか、作り話ととらえるかは作者(小説家、著者)の考え方次第、自分の信ずる通りの方法で良いだろう。史実を証明できるほど、人生は長くないだろう。
    40
    歴史学での定義、過去に本当にあった史実を明らかにすることを「認識」、認識した史実に意味を与え、連想させイメージを描く「解釈」
    99
    歴史学の対象は1つしかない「事実」ではなく各各の「現実」
    170
    既存の歴史学は「文書資料中心主義」「口承の歴史および口述証言」は用いない。
    183
    ”自分の身近にあり,真偽を問わずとも役に立ちそうな過去は、「記憶」と呼ぶことができます”歴史は記憶である。

  • 1963年生まれのフランス経済史を専門とする経済史学者・小田中直樹による2004年の著書。
    著者は本書の内容について、序章で、歴史学の意義とは何かという疑問に答えるべく、①歴史学は歴史上の事実である「史実」にアクセスできるか、②歴史を知ることは役に立つか、役に立つとすれば、どんなとき、どんなかたちで役に立つか、③そもそも歴史学とは何か、という三つの問題を取り上げるとすると同時に、本書の目的について、あとがきで、①歴史学について、なるべく体系的に基本的な知識を整理すること、つまり、歴史学の入門書として機能すること、②歴史にかかわる優れた啓蒙書を紹介するブック・ガイドとして機能すること、③歴史を考える枠組みを再検討してみること、の三つと述べている。
    本書の主な主張、及び私の印象に残った点は以下である。
    ◆歴史学の営みは、史実を明らかにすること、即ち「認識」と、認識した史実に意味を与え、ほかの史実と関連させ、その上でまとまったイメージである歴史像を描くこと、即ち「解釈」という、二つの作業から成る。
    ◆1970年代に現代思想家ジャン=フランソワ・リオタールは、「“大きな物語”は終わった」、即ち、歴史のトレンドを描き出すことは無意味になったと主張したが、実際には、“大きな物語”が終わったのではなく、それぞれの民族の歴史や大衆の歴史などの様々な“大きな物語”が併存するようになった、即ち、歴史の相対化の時代に入ったということである。従って、歴史家は、たとえ相対化されたものではあっても、より正しい「解釈」を求め続けることが使命である。
    ◆同様に、1970年代に言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが展開した、「もの」、「意味」、「言葉」の三者の繋がりは恣意的なものにすぎないという構造主義の思想は、歴史の「認識」についても疑問を投げかけるものであったが、歴史学に求められているのは、コミュニケーションによって、多数の人々の間で正しいに違いないという「認識」に至ること、更に、そこからより正しい「解釈」に至ることである。
    ◆歴史学は、外国に関わる歴史像や、外国と日本の関係に関わる歴史像を提供し、我々の集団的なアイデンティティを相対化する際に重要な役割を果たす。しかし、第二次世界大戦に向けて、日本人の意識を統制したのが当時の歴史学を支配する考え方であったことなどを踏まえると、歴史学が「社会」の役に立つべきか否かという問題を考える際には、慎重さが求められる。むしろ、根拠がある史実に基づくという真実性を経由した上で、直接に「社会」の役に立とうとするのではなく、つまり、集団的なアイデンティティや記憶に介入しようとするのではなく、「個人」の日常生活に役立つ知識を提供しようとすることが大事である。
    ◆そもそも、様々な科学を学ぶことの意義は、自覚的にものを考える必要に迫られたときに「考え方のモデルのカタログ」として自分の役に立つ、地に足がついた知識としてのコモン・センスを体得することにある。そして、歴史学もその科学の中のひとつなのである。
    若手の歴史学者が、現代思想の考え方を取り込みつつ、歴史学の意義と課題(更には限界)を率直に述べており、好感の持てる一冊である。
    (2006年12月了)

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    「歴史は何の役に立つのか」という難しい疑問への著者なりの回答が示されている。
    まずは史実を明らかにできるのかという問題から始まり、歴史学の社会との関わり、歴史家の役割等が書かれ、普段は意識しない歴史というものを再確認することとなった。
    歴史書と歴史小説の違いが史料や先行研究に対するスタンスの違いであるとか、歴史が国家の道具として扱われ、良くない結果へと繋がる要因となっていたりといくつもの考えることが出来たのは良かったと思う。

  • 歴史学が普通に(つまり研究者が無意識に)使っている語彙やアプローチを手軽に知るのに便利。

  • 歴史学者は歴史小説家を下に見る傾向があるように思う。
    が、本書によれば、「根拠を追い求め」「他者に正しい(認識)と共有される」ならば、両者の違いはなくなるという事になる。よって、歴史に対する「姿勢」や読み手の評価が問題なのであって、アカデミズム(科学)か商業主義(想像)かの違いを議論するのは不毛な気がした。究極の所は本当の事は誰にもわからないし、客観は認識できないという哲学的テーマに入り込む。結局、歴史はそれを選択した人の多数決で決まる事になる。人はヒステリーを起こすから、ここにはリスクもある。
    また、「役に立つ」かどうかも意味のない議論で、世の中に影響を与えるのは間違いなく、その功罪について論じるべきだろう。(著者は一応論じているようには思えるが書き方がよくないような)
    入門書なのでアウトラインを提示するのみで、問題提起に留まっており、総じて論旨がゆるく、論調は弱い。著者にも迷いが感じられるし、そもそも確たる答えもないのかもしれない。それが著者の誠実さであるとも言えなくもない。要するに、「断言する人間は疑え」って事になるのかと。

  • 学者という立場から、どのように歴史に向かい合うか考えさせられる本でした。

  • 最近真面目に歴史の勉強を始めてからこっち、自分の中でぐるぐる渦巻いていた命題にたいして、数十年余分に行きてる先輩から分かりやすいビジョンを見せてもらえた、という感じでした。
    まだまだ勉強不足で批判的に評価できてるかは分からないけど、私にとってこの本は足がかりの一つとして充分すぎる素晴らしい本でした。
    出会えて良かったです。
    私が持っていた命題に対して私が想像してた落とし所以上に思考を提示してくれました。

  • アマゾンレビューにもありましたが、構造主義や科学に関してがデタラメすぎ(^^;; デタラメの前提から出発して、あとは自分の思いつきを垂れ流してる感じでした(T ^ T)

  • 分かりやすい言葉で書かれた歴史学の入門書です。

    そもそも歴史学とは何かという問いを立てるのであれば当然、史実の認識可能性についての議論に立ち入らなければなりません。本書でも、構造主義の源泉となったソシュールの言語論以降、私たちは歴史をあるがままに認識することができるのか、という深刻な問いにさらされたことに言及されています。さらに、上野千鶴子が構築主義の立場から従軍慰安婦論争に参戦した経緯などの例をあげて、歴史学者はどのようにして「史実」にアクセスできるのかという問題が、単なる歴史哲学上の理論的な問題にとどまらず、アクチュアルな意味を帯びた問題であることが浮き彫りにされています。

    ただし著者は、歴史を一つの「物語」として相対化してしまうような極端な立場には与せず、たえず史料批判へと立ち戻ることで、絶対的な真理には到達できなくても、「コニュニケーショナルな正しさ」を追求することができるという立場を採ります。

    歴史を学ぶ者がさしあたって歴史学という営みを続けてゆくことができるためには、そしてさまざまな民族や国家における歴史認識の断絶を克服するためには、いわば実践的な観点から「コミュニケーショナルな正しさ」の立場が欠かせません。本書では、そうした歴史学者にとっての歴史認識の方法論的考察が展開されていると言ってよいのではないかと思います。

  • 2015.5.11歴史を学ぶとはどういうことで、どんな意味があるのかを明らかにしている本。私にとって歴史は暗記科目だったので、目から鱗の一冊だった。歴史を知ることは、アイデンティティの形成、相対化、再認識になるし、また歴史に対する暫定的な捉え方を生活に応用することで、真実はなくとも、コミュニケーショナルな暫定解で他者と関わっていけると思う。これは哲学での、妥当性のある共通了解を作ることと似ているなと思った。歴史の中で語られる事実が教訓的に役立つこともあるし、歴史という物の捉え方そのものが役立つこともある。ある事象について、それのアイデンティティ、由来や独自性を知ること、そしてそれは絶対ではなく相対的であり故にさらによりよい解釈に近づける可能性を残した学問であること、それが歴史学なのかなと思った。

全53件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年生まれ。東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程単位取得退学。博士(経済学、東京大学)。現在、東北大学教授。専門はフランス社会経済史。
主な著書に『フランス近代社会1814-1852――秩序と統治』(木鐸社、1995年)、『19世紀フランス社会政治史』(山川出版社、2013年)。

「2017年 『歴史学の最前線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小田中直樹の作品

歴史学ってなんだ? (PHP新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする