日本の文化力が世界を幸せにする

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569633985

感想・レビュー・書評

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  • この本は、日本の素晴らしさを理解して、それを公の場で数々のバッシングを受けながら活躍されている呉女史と、この20年間、彼の著作はほとんど読んでいる日下氏にとの共著です。

    日本がデフレに突入して銀行神話が危なくなってきた頃に、鳴り物入りで導入された「グローバルスタンダード」に基づく経営方法も、実はあまり効果が無いと日本の企業は理解し始めてきた2004年頃に書かれた本です。

    まだ命脈を保っている欧米系の大企業が衰退することは簡単にはないとは思いますが、日本の文化力をベースとした企業が世界を幸せにしていくことで新しい流れをつくっていって欲しいものです。

    日下氏が以前の著作で、アメリカにも日本の経営を見習ってリストラもせずに高収益を上げている会社があると紹介していましたが、アメリカでも一部では理解されていることでしょう。

    同業者と戦って打ちのめして市場を取るという狩猟民族的な発想から、皆で協力して(談合ではなく)、その結果、生産者も消費者も幸せになるような仕組みを構築していきたいものです。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本のやり方が世界に浸透しているのだとすれば、それは外国が真似したから(p22)

    ・そもそも時価評価は、しがらみにとらわれず資産を売り買いして、利益を持ち逃げしようとする、定住性が薄い国際人が必要とする発想で「交換価値」を重視する「市場原理」に基づく(p24)

    ・血筋以外から養子をとるのは日本の変な習慣(韓国から見れば)であるが、倫理や文化の上下を言わなないのが国際親善のコツ(p30)

    ・日本は明治に開国するとすぐに、上智や青山など外国の宗教団体に大学の設立を許可した、独立国としては珍しい(p51)

    ・日本が輸入しているのは、ほとんどが開発輸入、吉野家ならではの牛を現地で作らせて輸入する、すかいらーくが使うニンジンとかホウレンソウを指導して契約栽培して生産したものを輸入することである(p67)

    ・成果主義を採用するにしても、アメリカ式の単純な実績数字主義ではなく、プロセス重視の成果主義を導入したところはうまくいっている(p70)

    ・ぜいたく品とか先端商品をつくっているところでは、成果主義は無理(p72)

    ・単純な仕事はアメリカ式でも問題ない、未来に向かった積み上げていくような複雑な頭脳労働は、日本式が良い(p74)

    ・思想、宗教、科学を誰でも自由に議論できる国というのは、日本以外には例が無かった(p92)

    ・欧州人が理解できないのは、日本のホームレスは教養があり、知的好奇心があるということ、外国ではホームレスは1年で死んでしまう、冬が越せないので(p95、96)

    ・コンピュータやパソコンとかのIT革命では、日本は絶対にアメリカに勝つ理由として、アメリカの子供は16歳まで行動の自由が無いから日本の子供の方が賢くなる(p121)

    ・韓国では社長は一番遅くに来て、一番早く会社を出てくれないと、社員たちは立つ瀬がなくなる、社長としての威厳が保てなくなる(p140)

    ・アメリカと日本の保育園、幼稚園を比較して感心したこと(呉女史)は、1)積木遊び、2)お昼寝、3)みなと一緒に遊べない子を心配する(アメリカは一人で遊べない子を心配する)、である(p143)

    ・日本は韓国と比較して、上層の文化と下層の文化が勢いよく混じりあうのが特徴(p168)

    ・冬ソナは、日韓関係が良いから生まれたのではなく、NHKと電通が仕掛けて作り上げたブーム(p188)

    2011年10月16日作成

  • Steaveのこだわりって、ある意味、日本の文化力に似ているとこの本を読んで感じた。見えないところにこだわるとか。

  • 日下公人、呉善花の本は、それぞれかなり読んできたし、そのいくつかはこれまでにも取り上げてきた。ところがなぜか、二人の対談であるこの本だけは見過ごしていたことに気づき、さっそく読んでみた。

    日下も触れているように、この対談は、呉の日本論を中心に展開し、日下がそれに対し、「できるだけ乾いた論評」で応じるという形になっている。「乾いた論評」とは、呉の日本論に対し、「そうだ、そうだ」と喜んで応じるのではなく、できるだけ客観的に冷静に対応し、ときにはすこし違った角度から応ずるというようなことだろう。日下のそうした配慮が、この対談に深みを与えていると思う。

    たとえば、呉が、島国日本の狭隘な地形から、対立よりも融合に向かった日本人の特徴を説明する。山の人が降りていって海草をとったり、海岸の人が山で木をとったり、海の人が山の神を祭ったりなど、融和していくほかない自然環境があった。これに対して大陸では、山の人々、平野の人々、沿岸の人々の生活がまったく別で、融合よりも対立しながら生きてきた。これに対して日下は、そうした自然環境の影響を認める一方、たとえば中国の客家(はっか)は、団結し、円形の城のような集合住宅で暮らし、ながく独立を守り、日本のように集団のメンバーが固定していて、相互信頼が厚い例を挙げる。つまり、自然環境だけではなく、独立を守ろうとする意志の側面も無視できないと指摘るすのだ。

    とはいっても二人とも、大陸のように異民族同士の紛争の中で展開した歴史が日本になかったことを、日本文化のユニークさが形成される大きな理由と考えていることは確かなようだ。大陸が異質な共同体同士の敵対的な関係を軸に歴史が展開したのに対し、日本では農耕民と非農耕民が互いを必要とする相補関係をなし、その歴史が相互信頼社会を育んだといえよう。

    闘争の歴史の中で生きてきた大陸の人々は、「力の信奉者」とならざるを得ない。人間関係をどちらが強いか、上か下かで判断し、可能なら支配しよう、略奪しようと考えることが習性になってしまう。そこから、信頼を前提とした人間関係は育ちにくい。戦争が絶えないと、それが社会の常識になってしまうのは当然かも知れない。しかし、現代、まがりなりにも平和に暮らせる人々が多くなると、平和を前提とした文化である日本文化の良さが、広く受け入れられるようになる。そこに、日本のマンガ・アニメが世界に普及する理由のひとつがあるかも知れない。

  • 以下、概要。

    ○現在の日本経済は、モノを生産、売る、サービスするのではなく、文化を生産、売る、サービスするという方向へシフトチェンジしている。

    ○ 国際化、いわゆるグローバルスタンダードを信じるやつはバカ。

    例えば国際会計基準の時価評価は、資産を売り買いして、利益を持ち逃げしようという、定住性が薄い国際人が必要とする発想。

    ことあるごとにグローバルスタンダードを喧伝するアメリカも、エンロンやワールドコムの粉飾会計事件が明るみに出て、大インチキ会社があることが世界中に知れ渡った。

    「グローバル」「インターナショナル」といえば、孤立を病的に恐れる日本人はすぐだませるとアメリカは知っていた。

    ○ グローバル・スタンダードを世界中に広める必要はない。

    ご飯を食べるのに、ナイフを使うことをグローバル・スタンダードにするというような話と同じ。

    例えば、アメリカ人は、トヨタのレクサスをあれは「車」ではなく、「芸術品」だと評す。

    この「日本文化」が世界に普及するかしないかは、日本に関係のないこと。

    日本人は自らが満足するために、自らの富と技術とセンスで自動車やハイテク製品、アニメやマンガをつくっているだけ。

    ハリウッドのアカデミー賞の授賞式に集まる有名人がリムジンではなく、「レクサス」でくるようになった。

    それを見て中国人はレクサスを欲しくなったという。

    だから、みんなが欲しくなれば、それが普遍性を帯びてくるだけで、それをグローバル・スタンダードにしようという動きはおかしい。

    ○ 日本では、親しき仲にも礼儀ありを尊重するけど、韓国では、「親しき仲には礼儀なし」のほうがいいんだという考えがある。

    ○ 日本文化は極めて高度なもの。世界一分配の平等な社会のあり方にしても、その秩序のよさや安全にしても、広くいきわたっている人々の教養のあり方にしても、調和的な道徳や倫理のあり方にしても、正直、どの国にとっても、うらやましいし、模範、理想とするべき。

    ○ 日本人は商談の際に、雑談ばかりするのを、理解できないと諸外国の人はいう。

    日本のビジネスマンには、ビジネス関係だけではなく、こちらの人間性を見ておいて欲しいし、相手の人となりもつかんでおきたいという思いがあるため、雑談したがる。

    ○ アメリカ式の成果主義はやめたほうがいい。簡単に言って、会社にとっての損得でいうと、やめたほう得だから。

    成果主義を導入したら、見る見る赤字になってしまった。

    ぜいたく品とか、先端商品を作っているところでは、成果主義は無理。

    先端的な開発をしないというならアメリカ式でいいが、先端的な開発をするというなら、助け合わなければできない。

    ○ アメリカ人は、退職後、だいたいは社会活動をする。

    「なぜ日本人はやらないのか」という人がいるが、やる必要がないくらい政府がやっている。

    日本のホームレスが痛風になる時代。

    世界的にはかなり異質。

    乞う事をしないホームレスは日本にしかいない。

    物乞いではなく、ただホームがないだけなんだね。

    どんな状態にあっても、「対価なしにただもらうだけ」というのは、ものすごくプライドを傷つけるらしい。

    また、雑誌を読んでるホームレスを見て、外国人は「ホームレスなのに、なぜ教養があるのか、なぜ知的好奇心があるのか」と驚く。

    ○ 韓国人でも、中国人でも、欧米人でも、自分が他人よりどれだけ優れているか、経済でいえば貧富の差がどれだけあるかによって、生きがいを感じる。

    日本人は、みんなで一緒に豊かになりたいというような、そういう平等主義を持っている世界で唯一の人たちではないか。

    ○ ファッションでも化粧でも、台湾だけが日本に近くて、他はだいたい欧米嗜好が強かったが、今や韓国、台湾、香港、シンガポールなどのアジア地域では、日本的なものが圧倒的な人気。

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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