パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569635255

作品紹介・あらすじ

パーソナリティ障害とは、偏った考え方や行動パターンのために、家庭や社会生活に支障をきたしている状態のこと。愛を貪る、賞賛だけがほしい、主人公を演じる、悪を生き甲斐にする、傷つきを恐れる…現代人が抱える生きづらさの背景には、ある共通の原因があるのだ。本書は、境界性、自己愛性、演技性、反社会性、回避性など、パーソナリティ障害の10タイプそれぞれについて、克服や援助の際にポイントとなる点を具体的に記す。精神医学的な観点から書かれた生き方術の本。

感想・レビュー・書評

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  • 2004年当時、発達障害に先駆けてパーソナリティー障害について叫ばれています。このころから「生きづらさ」という社会問題が浮き上がってきています。思えばこの中にADHDやASD,LDなども含まれているのでしょう。岡田先生の著書で象徴的なのは、幼児期の「愛着」問題が必ず語られることです。幼い頃の親からの愛情がその後のパーソナリティーに大きな影響を及ぼすという主張はぶれていません。自分が親になって痛感してますが、完璧な親はいません。人は何かしら、愛着の問題を乗り越えて大人になるのでしょう。
    愛情が安定した自我や自己肯定感を育み、健全な土台の上に、試練が来て成長する。
    とりわけ、芸術家、芸能人はたぐいまれな才能と、不幸な生い立ちのねじれがエネルギーを生み出し、常人にないことを成し得ることは腑に落ちました。
    境界性パーソナリティー障害の人とは同じ温度で接する。けして入れ込みすぎない。結局本人が課題に気づき乗り越えていくことが解決方法。日頃様々な人と接することの多い私には、このような科学や統計から導き出されるものや小説を読むことで人間というものについて知る大きな手がかりとなっています。

  • パーソナリティ障害とは、一言で表すと「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態」と言うことができる。

    この本を読むきっかけとなったのは、自分自身が幾度かの恋愛における失敗を経験したためである。1人で過ごすことができずズルズルと依存関係を続けてしまったり、相手に期待をしすぎて勝手に失望したり等、お互いを真に愛しあえる関係ではなく、お互いがお互いの欲望や愛情飢餓を満たすための行動に走り、相手にきちんと向き合えない関係性に陥ってしまったのではないかと感じている。
    そのような考え方や行動をしてしまう原因として、自分自身の人格や性格に問題があるのではないかと考えるようになったときに、この本と出会った。冒頭で述べたような「パーソナリティ障害」は、いま、現代人の間に広く蔓延している症状である。それは、現代特有の社会環境や価値観の変化が関係していると著者は述べる。
    「障害」と呼ぶほどのレベルではなくとも、偏ったパーソナリティによって生きづらさや苦しさ、虚無感、不安を強く持つ現代人は多くいるのではないかと思う。本書は、そのような人々への接し方や、克服方法について、研究結果からだけでなく著者自身が患者と接してきた中で得てきた経験知から述べている。
    パーソナリティの分類や、精神の病理に関する理論は様々な考え方があるが、全体として共通していると思ったのは、幼い頃の親との関係性やトラウマ経験などによって傷ついた心が、自分自身を守ろうとして身につけてしまったものが偏った考え方や行動として体現されているこいうことである。パーソナリティの偏りがある人々は、自分自身に強く囚われ、傷つきやすいという特徴を持つ。特に、「自己愛」と呼ばれる自分を大切にできる能力が適切に育っていない場合が多く見られ、そのような人々は、安易に自分を傷つけてしまったり、逆に自分を守ろうとしすぎるあまり他人を傷つけたり、信用出来なかったりする。

    この本を通して、自分が今まで深く考えることなく従ってきた自分のマイナスな感情は、実はこうした病理から生じていたものなのだろう、と理由を考えることができるようになった。生きづらさ、虚無感、不安についても、これらは自分自身が考え方を少しずつ修正しようと努力することで解消することが出来るものであり、また、自分自身の幸福な人生のためにも、そうしなければならないのだと感じた。「おわりに」で著者が述べていた言葉が印象的で強く響いたので、最後に書き記しておく。

    「そこそこの年になれば、人は自分のパーソナリティに対して責任があると思う。その年になれば、親や不遇な環境のせいにばかりはできないのだ。いかに生きてきたかが、その人のパーソナリティには、顔に刻まれた皺のように刻まれている。中年になっても、子供のように自分勝手に振舞い、自分を省みることもない、情けない大人にならないように、自分のパーソナリティと生き方を磨き続けてほしい。」

  • 自分のことをより深く知りたいとの思い、勉強の意味合いも含めて読んだ。自分の抱えている問題が見えて、うんざりもしたけれど、対策も見えてきた。普通って何だろう。どこからが逸脱でどこまでが許容範囲なのか。どこまで突き抜ければ、逆に認められるのかとか、色々と考えながら読んだ。
    パーソナリティ障害の方々と向き合う時の助けになるのは間違いないし、これまでよりも自信を持って関わっていけるし、何度も読み返して教科書のように使っていきたいなと思う。

  • 個人的には人を見る視点が2倍3倍にも広がった1冊だった。
    種々あるパーソナリティ障害の特徴として2点挙げられていた。
    ①自分へのこだわりが強い
    ②極度に傷つきやすい

    この2点は自分にも当てはまると感じながら本書を読んでいたが、どのパーソナリティ障害の特徴をみても程度の差はあれ共感できることが多かった。

    障害とは言わないまでも、そういう傾向は誰しも持っているもので、取り巻く環境や状況によってどの要素が前面にあわられるのかわからない。もともと持って生まれた性格のように思っていたけれど、そんなことはなく大人になってから現れることも多いことに驚いた。
    もしかしたら自分もそうなっていたかもしれないと想像すると怖く感じた。
    著者も言われていた通り、パーソナリティ障害は強みにもなるので、自己分析して、自分の特徴を知ることでうまく社会に馴染んでいく試行錯誤が必要なのだと改めて思った。

    みんな生きづらさを抱えているが、ありのままの自分の性格を受け入れ上手にコントロールすることで生きづらさが軽くなる。だから、自分としてもそういった生きづらさを抱えた人が少しでも楽になるように頑張っていきたい。

  • パーソナリティ障害は、一言で言えば、偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたしている状態
    (支障が出てなくとも特性がある場合はパーソナリティと呼ばれる)

    大きな特徴は、自分に強いこだわりを持っていることと、とても傷つきやすいこと

    パーソナリティ障害は本書では10に分類されており、それぞれの特徴や克服方法、また当事者との関わり方について説明している

    ちなみに1つだけのパーソナリティに当てはまるケースは意外にも少なく、2.3個の特性を持つ人の方が多いそう

    障害の診断まではいかずとも多くの人に特性はあって
    その特性について知ることは、自分や他人との向き合い方におけるヒントを与えてくれるんじゃないかなと思う

    発達障害のように一方的に広く認知されるのは問題があるだろうけど…難しいところ

  • 精神科医による、パーソナリティ障害の分類とその克服法について書いた一冊。

    一口でパーソナリティ障害といっても、ほぼ健常者と変わらないものから障がい者に近いものまで様々なものがあり、その種類によって対象法が異なることがよくわかった。

  • 回避性、依存性、強迫性、妄想性、シゾイド、失調型、演技性、自己愛性、境界性、反社会性の各パーソナリティ障害について、解説、および、その人にどう接すればよいか、あるいは、その人がどう克服していくかについて解説された本。
    さすが新書だけあって、非常に分かりやすく整理されている。
    身近にいる人が、パーソナリティ障害なのかどうかはさておき、こういう傾向あるなあと思い当たるふしもあるし、その人にどう接すれば良いかも書いてあるので大変参考になる。
    なにより、自分のことが良く分かった(分かってしまった)。まあ知ってたけど。過去のトラウマに起因するもので、簡単には克服できないものなんですが、まあボチボチやっていくしかないですね。

  • パーソナリティ障害について、わかりやすく説明されている本。

    それぞれのパーソナリティ障害の世界観や対応について丁寧に説明されていて、とても参考になりました。

    どんな背景があって、この症状が出てきたのかが、具体的な説明によって、ふわりと心の中に浮かび上がってきました。

    パーソナリティ障害に対する愛情も感じました。ネガティブ面だけでなく、ポジティブな面も描かれていて、それぞれのパーソナリティに魅力を感じるような表現をされているのが、よかったです。

    この本は、繰り返し手に取る一冊になりそうです。

  • パーソナリティ障害について詳しく書かれていたので勉強になりました。自分や周りの人もかなり当てはまり怖いくらいですが、深く知ることができて良かったです。

  • 何度も読み返す本。
    各パーソナリティ障がいの方に、どう対応したらよいかが、わかる一冊。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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