20世紀とは何だったのか: 現代文明論下 「西欧近代」の帰結 (PHP新書 301)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569635460

作品紹介・あらすじ

第一次大戦を境に幕を開けた「現代」。西欧の凋落を背に、自由・民主主義のアメリカ、社会主義のソ連、そしてファシズムが「世界」を動かす。二十世紀の挑戦、それは新しい価値と希望の創出だった。しかし、私たちの不安は消え去らない。ニヒリズムから逃れる術はないのだ。それに気づいたとき、勝ち残ったアメリカ文明の欺瞞が見えてくる。ニーチェ、ハイデガーの鋭い指摘を踏まえ、大衆化される現代社会の本質と危険性を暴き出す。独自の歴史観と広角な視点で時代の見取り図を提示する、佐伯啓思の「現代文明論」講義・完結編。

感想・レビュー・書評

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  • (アマゾンより)
    確かな価値を失った人間は、どこへ向かおうとしたのか。格段の進歩を遂げたはずの20世紀、その本質にある影に迫る現代文明論(下)。
    第一次大戦を境に幕を開けた「現代」。西欧の凋落を背に、自由・民主主義のアメリカ、社会主義のソ連、そしてファシズムが「世界」を動かす。20世紀の挑戦、それは新しい価値と希望の創出だった。
    しかし、私たちの不安は消え去らない。ニヒリズムから逃れる術はないのだ。それに気づいたとき、勝ち残ったアメリカ文明の欺瞞が見えてくる。
    ニーチェ、ハイデガーの鋭い指摘を踏まえ、大衆化される現代社会の本質と危険性を暴き出す。独自の歴史観と広角な視点で時代の見取り図を提示する、佐伯啓思の「現代文明論」講義・完結編。
    *現代文明論(上)『人間は進歩してきたのか』(PHP新書274)
    [内容紹介](第1章)近代から現代へ (第2章)価値転換を迫られるヨーロッパ (第3章)ニヒリズムと「存在の不安」 (第4章)なぜファシズムが生まれたのか (第5章)「大衆社会」とは何か (第6章)経済を変えた大衆社会 (第7章)アメリカ文明の終着点

  • これにてゼミの本を読むのを終了。
    あれから10年くらいたっても難しい。
    うーん、自分のレベルがそんなに上がっていないのか。

  • 2000年代に佐伯啓史氏の(先生でリアルであられました)
    著作物にあたりました。ずっと自分の方向付けをして頂き
    ました。

  • 上巻からつながる、根底にあるキーワードは「ニヒリズム」。
    20世紀の西欧史を通観しつつ著者が主張したいことは、「近代西欧が掲げる自由や民主主義という価値は普遍的なものではない」ということ。
    この主張と「ニヒリズム」をつなぐものは何かといえば、「アメリカニズム」ということだそうだ。

    著者はアメリカニズムを、ファシズムや社会主義と同じく、根源はニヒリズムであると見る。ニヒリズムから生まれたアメリカニズム(合理主義、反ヨーロッパ主義、個人主義的資本主義などの思想の総体)は、自由や民主主義を西欧の歴史から切り離し、普遍化した。その結果、自由や民主主義が絶対化され、それ自体が目的と化してしまう。
    このような現代の状況もまた「目的の喪失」という典型的なニヒリズムの一形態であるという。

    因果を一つ一つ積み重ねて西欧近代思想の矛盾を説いていく著者の物言いは圧倒的。ただ、「西欧」という対象が大きすぎて、消化不良の感も否めない。

  • 西洋近代がもつニヒリズムへの帰結が簡潔にまとめられている。ニヒリズムの起源とその後の思索とが。
    ひるがえって私たちはどうしたらいいのだろう。明治期に近代的な思想が入ってきたのだから、それ以前の日本に戻れば少なくともニヒリズムとは無縁でいられるのだろうか。でもきっとそれは無常という概念を持ち、ニヒリズムと親和性の高い世界なのだという予感がする。日本の古典を読まなければと思う。

  • 上下巻の下巻。上巻と合わせて読もう。基礎事項を学べる。

  • 現代文明論上で述べた近代から、現代へと言説は進む。

    ニーチェの真意、価値転換を迫られるヨーロッパ、しかしながら、ニヒリズムと存在の不安を説いたハイデガーはナチスに利用されてしまった。

    そして、ファシズムを生んでしまったヨーロッパ。それは、西欧文化の行き着く先立ったと著者は指摘する。

    最後に、ヨーロッパ社会が生み出した科学主義、技術主義の大いなる実験国家アメリカのかかえる根源的な問題を指摘し、現代文明論下は終了する。

    明治維新以後西欧近代化路線を追随してきた日本人として、21世紀以降の日本社会を見据える時、是非とも読んでおきたい一冊である。

  •   『人間は進歩してきたのか―現代文明論〈上〉「西欧近代」再考』の続巻。20世紀からのニヒリズムと大衆化に焦点が当てられる。そこにあったのは自由や民主主義そのものの自己目的化と形式化。

     近代の革命以降、自由と民主主義という概念は普遍性を志向してきた。それが海外植民地に資本を進出させる帝国主義、植民地での覇権争いを巡る第一次世界大戦の引き金を引く。

     また第一次大戦後のファシズムやナチズムは民主主義的な手続きで生まれた全体主義運動だった。前近代に存在した階級の崩壊と故郷へのアイデンティティを喪失した人々は、ニヒリズム、厳密には政治的無力感を感じ、政党政治の否定に走る。その帰結がファシズムとナチズム。そして第二次大戦は民主主義・資本主義vs全体主義・反資本主義という形をとる。

     第二次大戦後、さらに厳密には冷戦体制崩壊後も自由や民主主義そのものの自己目的化と形式化は止まらない。むしろアメリカを主導としてさらに尖鋭化した感もある。企業活動では「所有と経営の分離」(バーリー、ミーンズ)が進み、企業の実体的側面と金融的側面が乖離したことで、マネーゲームが独り歩きする。

     同時にグローバリズムが進行し、各国の共同体が分断されることに。現代社会を覆うニヒリズムも、こうした自由と民主主義の教条化に根源がある。

     自由や民主主義という言葉の負の側面も真摯に捉えているという点で、著者は本当の意味での「保守主義者」なのだと思った。

  • [ 内容 ]
    第一次大戦を境に幕を開けた「現代」。
    西欧の凋落を背に、自由・民主主義のアメリカ、社会主義のソ連、そしてファシズムが「世界」を動かす。
    二十世紀の挑戦、それは新しい価値と希望の創出だった。
    しかし、私たちの不安は消え去らない。
    ニヒリズムから逃れる術はないのだ。
    それに気づいたとき、勝ち残ったアメリカ文明の欺瞞が見えてくる。
    ニーチェ、ハイデガーの鋭い指摘を踏まえ、大衆化される現代社会の本質と危険性を暴き出す。
    独自の歴史観と広角な視点で時代の見取り図を提示する、佐伯啓思の「現代文明論」講義・完結編。

    [ 目次 ]
    第1章 近代から現代へ―第一次大戦の衝撃と西欧の悲劇
    第2章 価値転換を迫られるヨーロッパ―ニーチェの真意
    第3章 ニヒリズムと「存在の不安」―ハイデガーの試み
    第4章 なぜファシズムが生まれたのか―根無し草の帰る場所
    第5章 「大衆社会」とは何か―近代主義の負の遺産
    第6章 経済を変えた大衆社会―貨幣の新しい意味
    第7章 アメリカ文明の終着点―技術主義とニヒリズム

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 上巻に引き続き、人類の思想をまとめた本。大学一年生ぐらいの方々に教養として読んでほしい本。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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