現代語ですらすら読める新釈「蘭学事始」

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569637464

感想・レビュー・書評

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  • ものすごく面白かった!!!
    長尾剛氏の訳が非常にわかりやすく、センスにあふれている。古典の訳に「パイオニア」とか「プロジェクト」などの外来語が出てくるのは痛快で、まるで杉田玄白が現代人に向けて話しているように書かれている。

    内容そのものも非常に面白く、言語を学ぶすべての人にとって、勇気を与えてくれる内容ではないだろうか。

  • 「蘭学事始」は、杉田玄白の最晩年の1815年に書かれたもので、当時の若い蘭学者に向けて書かれたものと思われる。幕末には福沢諭吉が読んで大感激し、明治2年に初めて刊行された。蘭学発展の歴史を当時の興奮とともに生き生きと読むことができるという意味で、現代人にとっても貴重だが、それを現代語で読める本書はありがたい。

    江戸初期、オランダ船は平戸への寄港が認められていたが、ポルトガル船の渡航が禁止になると、1641年にオランダ商館は出島に移された。それ以来、オランダの外科医療が伝わるようになったが、実地で学んだ経験のみで得た知識に過ぎなかった。吉宗の代にオランダの書物を読むことが許され、江戸でもオランダ語を学ぶようになったが、アルファベットとわずかな名詞を覚えた程度だった。

    田沼意次は経済活動の自由を与えて国内の景気はよかったため、オランダからも寒暖計、暗箱写真機、幻灯機、時計などが数多く運び込まれた。中津藩の医師だった前野良沢は40歳の頃に蘭学を始め、田沼の時代には100日ほど長崎に留学してオランダ語を学んでいた。

    1771年、オランダ人からターヘル・アナトミアを譲る話を受けた杉田は、そこに描かれている精密な臓腑や骨格を見て入手した。その後、描かれている図を実際の人体と照らし合わせるために腑分けを見学する機会を得て、同僚の中川淳庵、知り合いだった前野良沢とともに立ち会った。実際の人体は漢方で得た知識とは異なり、ターヘル・アナトミアに描かれている通りであることを知り、翻訳することを決意した。

    「解体新書」が4年後の1774年に刊行されると、その後の蘭学の発展は目覚ましかった。前野良沢は、オランダ語をとことん学ぶ語学の道に進んだ。1788年に出版された大槻玄沢の「蘭学階梯」は、オランダ語の入門書として名著となった。蘭和辞典「ハルマ和解」は、稲村三伯によって1796年に完成した。1805年に出版された宇田川玄随の「医範提綱」は、初めての銅版による印刷だった。1811年には、オランダとの外交文書を翻訳する蛮書和解御用が幕府に設けられ、大槻玄沢が登用された。

  • 蘭学の沿革を述べ、初期の蘭学者らの苦心談を晩年に回顧したもの。
    とくに『解体新書』翻訳のときの共同研究における苦心談は圧巻。

    まだ蘭学というものが世に知られていないころ、
    たった三人の青年が蘭学にとりくみ、そこでこつこつと始めたことを50年後にふりかえる

    玄白が『解体新書』の出版にこだわったのは、単なる名誉や出世欲だけではかなったようです。
    玄白は出版までに10回以上も推敲を重ね、翻訳に関する一切の責任を取る決意をしていました。
    『解体新書』の各巻の巻頭に「杉田玄白翼 訳」と自分の名前を載せたのは、
    その覚悟の表れだといわれており、大きな使命感を持って翻訳に取り組んでいたことがうかがわれます。

    オランダ語の習得はいともあっさり観念した玄白でしたが、
    西洋医学の情報収集には誰よりも熱心でした。
    「実際に役立つ医学」を常に求め、医学に関する正しい知識を少しでも早く、
    一人でも多くの人に知ってほしいという純粋な思いがあったのです。
    名前の掲載を拒否した前野良沢に対しても、
    「彼がいなければ、解体新書の出版はありえなかった」と、
    感謝こそすれ恨むようなことはなかったようです。

  • 『「なんだかんだで、マァマァ面白かった」と思っていただけたなら、筆者としてはそれで十分なのである』とあるとおり、内容はできるだけ生かしながらも現代人が書いたような文体にうまく変換しており、読みやすい。

  • 現代語訳ということで原文よりもかなり軽くなっているのだろうと感じるが読みやすくて良い。パイオニアの凄さ。杉田玄白をとても可愛く感じる。

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