名将たちの指揮と戦略 勝つためのリーダー学 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569640389

感想・レビュー・書評

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  • こういった名言集を読む際は、仕事に活かせる言葉をメモしながら、例えばどの様なシーンに誰に対して伝えるのが効果的かを想像しながら読んでしまう。よってやたらと時間がかかる。筆者の書籍はよく読んでいるが、重複がないよう記載しているとのこと。いったい世の中に参考にすべき英雄、名将たちの言葉はどれ程存在するのだろう。
    本書はリーダーに求められる資質や行動について、不確実な戦場における状態や、必要な考え方、持つべき能力など領域を分けて名将達の言葉を引き解説を加えていく。
    例えば「戦争には、その進行中に見通せないことや思いもつかないことが列車に飛び込んでくる。だから人間の英知では戦争のシナリオを最後まで読めるわけがない」という言葉は戦場における不確実性について述べられた言葉であり、教訓として、その様な不確実な状態に対してリーダーが取るべき行動を述べる、といった感じだ。
    リーダーも人であるから錯誤に陥ることもある。しかし本書では「名将とはもっとも錯誤の少ない将軍である」とし、統率者の錯誤を戒める。ただでさえ混乱した戦場に統率者の錯誤があれば、戦況を読み誤り多数の犠牲者を出してしまう。
    また、リーダーは常に重圧を受けている。「将軍は部下兵士の生命を預かっている。だから責任の重圧に耐える一種の精神的強固性を持っていなければならない。」この言葉には身震いするリーダーの読者も多いだろう。日常的に役員などからのプレッシャーだけでなく、部下からの羨望と期待感が押し寄せてくる。この重圧の下でも押し潰されず平然と指揮をとり続ける事がビジネスでも求めらる。
    戦場に特有の負傷については「諸君、私が言える事は、私がもっと優れた将軍であったら、諸君は今、この病院にいないだろう」として、統率者の不甲斐なさを嘆きながら、次は絶対に負傷させないという失敗からの立ち直りや、同じ轍を踏まないという強い信念を感じる。職場で負傷者が出る様な事は少ないが、失敗により意気消沈しヤル気を失いかけた部下は最早、負傷者とも捉えられる。
    戦闘と戦争において次の言葉は、リーダーが方向性と最適な状況(戦場)を選択するという点で全く普段の仕事において統率の要素に当てはまる。「英国の艦隊司令官の仕事は二つある。一つは、有利な条件で戦う海域に敵艦隊を誘き寄せることであり、第二は決定的に敵艦隊を撃破するまで戦い続けることである」
    特に期待をかけ、将来有望な部下に対しては敢えて死地に送りこみ、死に物狂いに闘わせる事も必要だ。これは絶対に失敗できない仕事において使う手だ。「人は絶体絶命の崖縁に追い詰められりと、戦友と手を取り合って武器を取って決死を覚悟するものである。」その様な状況では普段バラバラのミッションに当たっていた部下同士が手を取り合って一体感を作る様なシーンに出くわす。仕事に求められるのは強い団結力をもつチーム戦闘力だが、これを可能にするには「獅子に率いられた羊の軍隊は、羊に率いられた獅子の軍隊より強い」が示す様に、強力なリーダーシップによる統制だ。また納期ギリギリで焦っている部下を見て「兵士たちは横隊を見渡して安心した。中隊長の落ち着いた渋い顔が兵士を落ち着かせた。そして兵士たちは覚悟を決めた。」自分が内心同じ感覚でいたとしても決してその様な表情を見せてはいけない。
    時には個別の1on1に加えて、会議などで全員に呼びかける事も重要だ。「演説が情熱を作り、行動が情熱を使う」。心のうちの闘志に火をつけるには仲間たちと一緒の場で奮い立たせる。
    そして本書後半ではいよいよリーダーシップのメインとなる指揮能力について触れていく。「戦場における指揮は、人格、能力、智力による指揮官の芸術である。リーダーシップにおいて最も重要なものは人間的魅力なのだ。」人間性は長い期間の考え方や過ごし方により徐々に形成されていく。短期間にリーダー本を読んだところで、自身が辛く厳しい状況を乗り越えてきた様な経験が無いと、なかなか薄っぺらい表層的なものになってしまう。多くの責任ある仕事を任せられ、時に失敗しても「問題は兵士たちではない。誰が指揮官かだ」が示す様に、自分がきっちり責任を取る事。そして何よりその覚悟を持って命令する事で初めて人はついてくる。少なくとも「指揮官の考えの範囲にある限り現場指揮官の手足を縛る命令を与えるな」の様にあくまで目的と中間目標地点わ指し示し、その手段は部下を信頼して任せる必要がある。そして何より「余が遭遇したことのない危険には、決して部隊を投入しない」、部下の安否を気遣い、自分でも逃げたくなる様な危険には絶対に向かわせない事だ。難しい仕事なら当然何が起こるかはわからない。そこでは直感力がものを言う。「偉大な指揮官は、緊要な時機に直感が働く人である」。最終的にはリーダーは常に変化する時勢を捉え、瞬時の判断力と決断の連続によって統率していく。中々口で言うのは簡単だが、本書の極々一部の言葉からも、100の知識とヒントが引き出せる。本書を是非手に取り、全てに目を通して、数センチでも近づけたらと、気を引き締めるきっかけになる。

  • 第1章 戦いを支配するものは何か(戦場;戦闘)
    第2章 精強な部隊を育成するために(団結・規律・士気;教育・訓練)
    第3章 指揮の要諦とは何か(指揮システム;指揮の実行)
    第4章 リーダーの資質とは(歴史をつくる人たち;識能と徳操)

    著者:松村劭(1934-2010、大阪府、軍事評論家)

  • 2016.08.28読了。

  • 古今東西、古代から現代、有名もしくは無名な軍人の戦勝の秘訣だけでなく組織内での立ち振る舞いの名言をコンパクトにまとめた名作。
    サラリーマンには、命と引き換えに業務を行う軍人の名言なんて関係ねぇよ!という人にも一読の価値ありです。
    何故なら軍隊って、専門家集団である以前に組織ですよね。会社員とは決して無縁でないと思います。
    ・無理難題の組織運営
    ・部下に任せる恐怖の均衡を保たせるリーダーシップ
    ・慎重以上に慎重を求められるの作戦計画
    など組織にいる限り必須知識が満載です。
    何度、読み返しても、いい内容で新書サイズなこの作品は、外せない。

  • 単なる著名人の引用に留まっており、名言集の域を出ない。

  • 戦いは、法の及ばない理外の理が支配する空間。
    そこで大切なのは、指揮官が自分に合った戦い方をすることだという。
    また指揮官によって戦の勝敗はほぼ決まる。

    そんな中で名将たちがとってきた指揮と戦略が学べて面白い。
    でも今日は時間ないし、自分用メモをそのまま書いて終わり!
    まあつまり、国際関係なんてそんなもんなんだから、政治家はこういうの身につけろよという。


    以下メモ

    個々の行動は簡単だが、通しての実行時には無数の摩擦が起こる。

    「個人は弱く、はかなく、強欲で、恐がり」だから、戦いの単位は個人ではなく2~3人。

    士気はやっぱり大事。

    レスポンシビリティという言葉が示すように、責任の語源は「反応」であり、日本での責任は手続きに性格に反応しているという説明がつけば責任は果たしたことになっている。
    しかしアカウンタビリティというフランス語の語源の方は、結果をださなければ許されないという意味の責任。

    自信、闘志、目的意識、攻撃性はトップダウンで舞台全体に浸透する。同じように指揮官の心の片隅に宿る心配と躊躇も部下全将兵の心に。

  • 軍事組織と会社組織。まったく目的は違えども人間をまとめる点は同じ。
    古今東西の名将の名言を織り交ぜながら、わかりやすく説明された本。経営組織の観点を持って読み進めていたが、政治と軍事のあり方や日本のあり方にまで思いをはせていた。軍事についての基本知識の欠如を思い知らされた。軍事アレルギーの強すぎる日本にあって現況を憂うばかりである。

  • いくつか知っておくといつか役に立ちそうです。

  • この作者好き。

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