話し言葉で読める「西郷南洲翁遺訓」 無事は有事のごとく、有事は無事のごとく (PHP文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569665825

作品紹介・あらすじ

幕末きっての軍人であり、「廃藩置県」などの政治的難事業をやり遂げた稀有の政治家であり、一流の学識者でもあった西郷南洲。晩年こそ国賊として追われ、不遇の最期を遂げたが、「西郷こそ真のヒーロー」と今なお多くの人から慕われ続けている。▼本書は、維新後、かつての仇敵・元庄内藩士たちが、西郷の温かい人柄や教えに触れ、感激してまとめた43篇の遺訓集を、今日まで伝わる西郷のエピソードや談話などを交えながら、現代風の読み物に再編集したもの。「敬天愛人」「幾たびか辛酸をへて志はじめて堅し」「入るを量りて出るを制する」などの名言も、西郷から直接語りかけられているような気分で読めるはずだ。▼明治維新という激動期、“新しい日本の国づくり”のために、51年の人生のすべてを捧げた西郷の言葉から、ビジネスや組織運営のヒント、あるいは人生の苦悩を乗り越えるアドバイスを得る人も多いだろう。ビジネスマンの座右の書にしたい一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 西郷隆盛が大事にしていた考え、信念などがまとめられており、人間がおさめるべき「道」についてしるした本。肝に銘じておべきことだらけでした。何度も読み返したい良書。

    以下、印象に残った内容、引用。
    ・人間は、どうしても自分の好き嫌いで物事を判断しがちだが、組織を率いるものは私心を持ってはならない。「相手を嫌う心」を封じて対せねばならない。

    ・地位を与えるときには、一時の功績や、年功序列といった概念で与えてはならない。地位を全うできるだけの「考え方」「能力」もなく地位を与えられると、本人にとっても、組織にとっても、マイナスでしかならない。人の能力を冷静に見極める目を養わなければならない。

    ・リーダが持つべきは「ビジョンと決意」。どうしたいという「ビジョン」を明確にし、しっかりと語れなければならない。そのビジョンがあればこそ、周囲の意見も素直に聞け、物事の判断ができる。目指すべきビジョンの推進に対しては、いかなる困難にあたっても一歩もひかないという決意がいる。

    ・子孫のために美田を買わず。苦労が伴って、初めて人は成長する、だからこそ楽をさせる(美田を買い与えない)、という意味で捉えてた。が、「自分の子孫「だけに」美田を買い与えることはしない」「親族関係なく、いかに次の世代に美田を残せるかを考える」という趣旨も含まれている。

    ・文明とは何か。気高い生き物として営む生き方であり、決して電気や鉄道などが進んでいることを指すわけでない。開国を武力で迫り、人権を踏みにじる西洋は「野蛮」そのものにも関わらず、西洋の利便性のみに目をやり取り入れることを「文明」というのは、間違い。人の道を外さないその心こそが本当の「文明」である。

    ・自分の欠点を見出し自覚せよ。欠点のない人などいない。その欠点を自分で自覚することで、他人の意見を素直に聞き居れることが出来る。

    ・計画を立てる際には、実行を誰に任せるかを考えておくこと。崇高な計画を立てたところで、実行できる人材が居なくては、絵に描いた餅。実行を任される側は、常にどんな仕事でも対応できるよう修練を重ねておくこと。

    ・克己を大事にせよ。人間とは、自分勝手な己を、そんな己を反省し自ら諌めようとする己、この2つの己がいる。後者の己が、前者の己を上回らなければならない。克己は、自分自身で高めるもの。他人が見ていようがいまいが、常に己を磨き上げること。

    ・学問をするものは、学問ができることを鼻にかけてるだけで、一向に実行に移さないものが多い。学問は非常に重要だが、学問を行かした「大志を持つ」ことと、私利私欲なく「道」を究めるために役立てる、という2つの思いを必ず持つことが肝要である。

    ・人を相手とせず、天を相手とせよ。自分の大志を成し遂げるためには、多くの困難に直面する。その時に、うまくいかない理由を「人のせい」にしてしまいたくなる。が、人のせいにしたところで、ことが好転する訳ではない。困難はあるものだという自覚と、困難にぶつかったときには天の性であり、自分の修練が足らないと思うべき。そして、早々に次の手を進めていくべきである。

    ・正道を貫くのは確かにつらい。うまくいっていない時に、世間から非難があれば、諦めてしまいたくもなる。が、自分の正道を世間の声を理由に投げ出すことほど、卑屈なことは無い。自分の道を、自分の意思で歩いてこそ、人生。

    ・道を志す者が尊ぶのは結果ではなく、心がけ。
    ・過去の賢人偉人を学び、自分には無理だと思って、やるべきとをから逃げ出すのは卑怯だ。できるできないではない、やるかやらないかの心がけが問われている。

    ・厚き誠心誠意の心を持って、死後tに対する純粋な真心だけを源にして、そうして成し遂げた仕事こそが、人々に感動を与え、いつまでも語り継がれる仕事である。

    ・チャンスをつかむ、の本当の意味は、おのれの努力の積み重ねが徐々に形になっていき、ついには機が熟して成功のきっかけとなることを指す。

    ・行動に映る土壇場で躊躇するものがいる、、しかしこうした迷いは逃避でしかない。自らの行動によって事態を動かすことの責任を負いたくないというだけ。

  • ※2008.7.27amazon注文、7.29到着
     2008.10.4読書開始
     2011.11.5売却済み

  • やや偏りはあるが、想像していたよりは抹香臭くなかった

  • 「話し言葉で読める「西郷南洲遺訓」」長尾剛著、PHP文庫、2005.12.19
    206p ¥540 C0134 (2018.01.30読了)(2018.01.25借入)(2008.11.14/2刷)
    Eテレの「100分de名著」で取り上げられたので、図書館から借りてきて読みました。
    ・『西郷南洲翁遺訓』をまとめたのは、彼の故郷である旧薩摩藩の人々ではありません。幕末に薩摩軍と戦火を交えた旧庄内藩の人たちが、明治になってからまとめたものです。
    ・戦後、薩摩軍は庄内藩に、藩主と一部藩士の謹慎を命じただけで、事実上一切の罰を与えませんでした。
    ・明治三年、18歳だった旧庄内藩主・酒井忠篤は70名の家臣たちを引き連れて、西郷に会うため鹿児島を訪れました。この時の記録が『西郷南洲翁遺訓』の母体です。
    ・『西郷南洲翁遺訓』は、本篇41項目と追加2項目の合計43項目で、できあがっています。西郷が語るリーダー論、政治論、経済論……といった〝実社会に向けられた提言〟もあれば、人生論や運命論といった〝一人ひとりの内面に響く語りかけ〟もあり、その内容はバラエティに富んでいます。
    ・『西郷南洲翁遺訓』の原文は、ごく短いものです。本書は、それらの言葉に込められた西郷の心情を推し量って、内容を膨らませ、現代風の読み物としてボリュームあるものに、リニューアルしたのです。

    【目次】
    まえがき
    第1章 上に立つ者
    本当のリーダー
    組織運営のビジョン
    組織を支える三本の柱
    上に立つ者の心得
    子孫に残すもの
      ほか
    第2章 政治のこと、カネのこと
    税金
    収入と支出
    軍備とカネ
    節義廉恥
    外交の心得
      ほか
    第3章 道を行う
    天を相手にせよ
    自愛の落とし穴
    後悔の無意味さ
    地位の無意味さ
    困難を楽しむ
      ほか
    第4章 日々を生きる心得
    学問の意義
    至誠
    チャンスの意味
    才覚と徳
    西郷先生の一言
      ほか

    ●トップに立つ者の責務(24頁)
    拘りや好き嫌いを捨てて、公平に周りの人間を見ること。
    ●リーダー(28頁)
    持ってはならんもの。それが「私心」である。「私利私欲」である。
    持たねばならんものとは何か。
    お国が目指す姿とはどうあるべきか。そのためには、どんな道を歩まねばならぬのか。そういったことを、しっかりと腹に据えた明確なビジョン。そして、そのビジョンを実現するためには一歩も引かぬという強い決意であります。
    ●政治の根本(31頁)
    国を支える政治の根本は、三つあります。
    第一が「学問」である。
    物事の道理を知り、人の世の善悪を知らなければ、道を踏み誤ります。
    第二が「武」である。
    実際の武力と、その武力を必要に応じて有効・的確に用いられる精神の両方を指します。
    第三の柱、それは「産業」であります。
    自らの食い物は自らで造り、自らで使う道具は、やはり自らの力で造る。
    ●秘密主義(56頁)
    民や部下に対して何らかの秘密主義を採っているような指導者は、おのれに自信がなく、指導者の資格がないものである。
    ●人材(103頁)
    実際に行動する人材こそが、仕事をするうえで「第一の宝」なのです。
    ●人の道(137頁)
    失敗するかもしれぬ。死ぬかもしれぬ。
    そこで足踏みしては、人の道は行えぬ。
    道を曲げて卑屈な人生を歩むよりは、人の道に倒れたほうが幸福である。
    ●大切なこと(138頁)
    人が生きるのに最も大切なのは、道を行うことだ。
    ●歴史を学ぶ(172頁)
    歴史を学び、偉大な個人の足跡を知ることは、大切です。
    ですが、ここで、ただ歴史の知識だけを得るだけでを目的とするようなら、学ぶ意味は全くありません。
    聖人賢者について学ぶならば、それを手本としておのれの人生に生かすよう心掛けねばならぬ。

    ☆関連図書(既読)
    「西郷どん(上)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
    「西郷隆盛 上」井上清著、中公新書、1970.07.25
    「西郷隆盛 下」井上清著、中公新書、1970.08.25
    「翔ぶが如く」全10巻、司馬遼太郎著、文春文庫、1980.01.25-1980.05.25
    「目でみる日本史 「翔ぶが如く」と西郷隆盛」司馬遼太郎・山本七平著、文春文庫、1989.11.10
    「史伝 西郷隆盛」海音寺潮五郎著、文春文庫、1989.09.10
    「西郷と大久保と久光」海音寺潮五郎著、朝日文庫、1989.12.20
    「島津斉彬」加藤惠著、PHP文庫、1998.10.15
    (2018年2月7日・記)
    内容紹介(amazon)
    幕末きっての軍人であり、「廃藩置県」などの政治的難事業をやり遂げた稀有の政治家であり、一流の学識者でもあった西郷南洲。晩年こそ国賊として追われ、不遇の最期を遂げたが、「西郷こそ真のヒーロー」と今なお多くの人から慕われ続けている。
    本書は、維新後、かつての仇敵・元庄内藩士たちが、西郷の温かい人柄や教えに触れ、感激してまとめた43篇の遺訓集を、今日まで伝わる西郷のエピソードや談話などを交えながら、現代風の読み物に再編集したもの。「敬天愛人」「幾たびか辛酸をへて志はじめて堅し」「入るを量りて出るを制する」などの名言も、西郷から直接語りかけられているような気分で読めるはずだ。
    明治維新という激動期、"新しい日本の国づくり"のために、51年の人生のすべてを捧げた西郷の言葉から、ビジネスや組織運営のヒント、あるいは人生の苦悩を乗り越えるアドバイスを得る人も多いだろう。ビジネスマンの座右の書にしたい一冊。

  • 始末に困る人になろう!

  • 西郷隆盛の述べる人の進むべき「正しき道」に関する教え。リーダーとして政治や事業を行うべき立場の人間、そのような立場を目指す人間、それだけでなく人として生きる者すべてが持つべき日々の心構えが述べられています。幕府側として戊辰戦争に敗れた庄内藩士達が、明治政府から離れて下野した後の西郷隆盛に合って教えられた話なので、明治政府の批判を多分に含んだ敗者の愚痴のように聞こえなくもない。本書は現代語訳というだけでなく著者の解釈によって話が付け加えられ読みやすくなっています。所々具体的な話しになるとなるほど、役に立つなぁ、と思う箇所もありますが、基本的には儒教的な正道なので、大部分は「ははぁ、仰る通りです」(そうは言ってもなぁ・・)と首肯するしかないと思います。

  • 15/3/14読了

  • 「他者から学ぶ」「人智の開発」「克己」「人を相手にせず、天を相手にせよ」「正義を貫く」
    このまま道徳教育の教科書にできそうなぐらい金言が凝縮されている。
    日本人としての生き方、有り様に少しでも迷ったら読むべし。

  • 岩波文庫の参照用に購入

  • 歴史上の大人物西郷どんの遺訓。非常にシンプルだが、人の上に立つ者や、政治経済の心得が、解り易い文章で記述してあり読みやすい。敬天愛人他、座右の銘によいかも。201311

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著者プロフィール

作家

「2020年 『古関裕而 応援歌の神様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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