風の陣[天命篇] (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569668819

作品紹介・あらすじ

恵美押勝が討伐されてから一年近くが過ぎた天平神護元年(七六五)――。淳仁天皇を廃した孝謙上皇が帝位に返り咲き、再び内裏に訪れたかに見える平穏。その裏には、女帝を誑かし、陰で政治を操る怪僧・弓削道鏡の存在があった。▼異分子を巧妙な罠に嵌め、次々に排除していく道鏡。その毒牙が嶋足の最愛の婚約者・益女にも迫る! 道鏡の専横に危機感を募らせた嶋足と天鈴は、密かに「打倒道鏡」を誓い合うのだが……。▼彼らの目論見とは裏腹に、道鏡と女帝の蜜月関係は続き、その権勢は揺ぎないものになっていく。黄金眠る陸奥に食指を伸ばし、帝位さえ脅かし始める飽くなき道鏡の欲望、その阻止を図る嶋足、天鈴らの奇計妙策の数々……。▼朝廷への憧憬と疑心暗鬼の念に揺れる蝦夷たちは一枚岩となることができるのか? 暗雲漂う平城の都と陸奥を舞台に、蝦夷の存亡と誇りを懸けた新たなる戦いの火蓋が切って落とされた。▼シリーズ第三弾、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  •  再読。第二作で手を貸した道鏡が巨大権力を握っていく中、嶋足と天鈴がそれを阻止すべく奮闘する。
     本作は最後を除き天鈴の策が尽く外れる。それだけ道鏡が狡猾だったということを表しているが、聖武天皇以前の藤原氏の権勢(称徳天皇自身、祖母も母も藤原氏)を知っているだけにこの一瞬で藤原氏の勢いが減退したという事実は改めて見ると面白い。もし称徳天皇が藤原氏の血を疎んで意図的に道鏡を利用していたらという妄想も…(澤田瞳子氏の『月人壮子』に感化されて)。
     いずれにせよ、道鏡の試みはあっさり阻止され、蝦夷にとっては苦難の時代に入る。道鏡が皇位についた方が蝦夷にとっては良かったのかとも思ってしまう辛い歴史が…。

  • 天皇の周りの権力者が劇的に移り変わる物語に目が離せず、はらはらしながら読み進められます。それぞれの思惑と欲望を読みながら、「策」を進めるところが見どころ。

    現代にはない「天皇への権力の集中」と「貴賎、階級制度」が、一族の栄華や滅亡を簡単に予感させるほどの激動の時代を生み出しているのかと、この時代への興味が湧きました。

    余談ですが、「麻呂」の名前が付く登場人物が多く、頭の中が「マロマロ」で一時混乱しかけました。名前の流行がこの当時からあったのかしら。

  • 牡鹿嶋足、物部天鈴のシリーズ第三弾。
    弓削道鏡が、孝謙太上天皇を担ぎ、陰で政治を操っていく。
    道鏡は、自らが天皇になろうと画策するが、和気清麻呂らと嶋足、天鈴が協力し、道鏡は天皇への夢を絶たれる。
    単なる蝦夷と朝廷という図式ではない、この時代の権力闘争、歴史小説として、非常に読み応えがある。

  • 恵美押勝討伐後一年、内裏では女帝の寵愛を受ける弓削道鏡が台頭し始める。
    恵美押勝討伐の功績により破格の昇進をした嶋足は道鏡の謀により最愛の女性を失う。
    帝位をも狙う道鏡の欲望をいかに阻止するのか。

  • 蝦夷の反乱
    38年戦争に至る流れが全部わかる
    この小説はすごい!

  • 3巻目に入ってなお延々と続く内裏での勢力争い。そんな状況でも読んでいて嫌気がささないのは、偉くなっても武士の魂を忘れない嶋足の戦闘シーンのおかげかも。
    とは言うものの、このままじゃあ陸奥三部作ではなく平城京物語なので、そろそろ次の展開に進んで欲しいです。

  •  奈良時代、蝦夷の存亡と誇りを懸けた、新たなる闘いを描く大河ロマン第3弾。

     この巻の大きな敵は、前巻まで共闘していたあの道鏡、嶋足と天鈴の二人が道鏡を倒すため、様々な策略を図っていくところが歴史を動かしていく醍醐味を感じさせ、読みごたえがありました。

     歴史上の人物も次々に登場し、今まであまり縁のなかった奈良時代の歴史を身近に感じることができました。

     大義を貫くため、犠牲を払わさざるを得ない苦しさに悩む嶋足の人間性にもとても魅力を感じました。

     次巻でついに道鏡が最高の権力を手にしてしまうのか、まだまだ読ませる力が止まらない感じで、とても楽しみです。
     

  • 今巻は有名な道鏡皇位事件。

    冒頭、始まってすぐの益女の死。
    しかも嶋足の手によって。
    いや、これはいくらなんでもダメだろう。
    いくらそれが史実とは言え、物語の中ではいくらでも助ける手段はあったはず。
    それなのに惚れた女も助けられないなんて、なにが主人公だ!と思う。
    もうね、なんかちょっと嶋足のことは諦めた心境。
    こんな主人公では物語がわくわくするはずがないんだよなあ。
    やっぱり、作者は主人公の人選を間違ってる。
    というか、キャラクター設定を間違っている気がするな。
    いやまあ、このなにも出来ない感じが作者の狙いなのかもしれないけど。
    もしそうなら、エンタメとしての楽しさは諦めるべき物語なのだろう。

    とは言え、3巻目にして初めてラストに胸のすく展開が待っていた。
    もちろんそれは、歴史を知っていれば予想できた場面なわけだけど、でも読者としては、こういう場面を待ち望んでいるんだよね。
    そんな爽快さがもっと欲しい。

  • ここまで再読、次から初見。どう話が展開していくのだろう?

  • 和気王、淡路廃帝などの政敵を葬り、権力を掌握した道鏡。太政大臣禅師、法王と位を極め、ついに、宇佐八幡の託宣をもって自ら皇位につこうとするが・・・。並み居る朝臣の前で、和気清麻呂により託宣が伝えられたところで本編は終了。次作で、道鏡を追い落とし、藤原氏が権力を掌握するストーリーが描かれると思われる。さて、本編では、殿上人となった嶋足が朝廷と蝦夷との板挟みになって苦悶する姿が描かれており、今後の雲行きを暗示している。特に、蝦夷でありながら蝦夷の長達と反目する弟の三山がもめ事の火種になりそう。

  • 読書期間:5/23-6/2(11日間)

    内容:恵美押勝が討伐されて1年近く・・・。淳仁天皇を廃した孝謙上皇が帝位に返り咲き、再び内裏に訪れたかに見える平穏。その裏には、女帝を誑かし、陰で政治を操る怪僧・弓削道鏡の存在があった。黄金眠る陸奥に触手を伸ばし、帝位さえ脅かし始める飽くなき道鏡の欲望、その阻止を図る牡鹿嶋足、物部天鈴らの奇計妙策の数々・・・。蝦夷の存亡と誇りを懸けた、新たなる戦いを描くシリーズ第三弾!(裏表紙より)

    感想:恵美押勝を退け、道鏡が台頭します。本作ではそれらの背後には牡鹿嶋足ら蝦夷の策謀で動いてたりします。ちょっと無理があるような気がするなぁ。
    物語の進め方の大半が計略・謀略で、それらを主要登場人物たちの会話だけで強引に進める話の作り方が、読んでいて辛くなってきた。もっといろいろな人間の視点から、あるいは俯瞰的に物語を書いて欲しい。
    だが歴史を知りたいしせっかくだから、読むぞ。

  • 風の陣3巻目。

    漸く恵美押勝が倒されたと思ったら、今度は弓削道鏡が台頭し、天皇までも凌駕する。策士っぷりが天鈴を上回るだけに、嶋足たちは何度も煮え湯を飲まされる羽目に。著者によるフィクションも多々あるだろうが、天皇の勅が挙げられているのを読むと、あながちフィクションばかりとは言えないような。飽くなき権力への欲望が垣間見え、人間の恐ろしさ、愚かさを感じた。
    いかに天鈴でも道鏡相手には太刀打ち出来ないかと思われた後半、和気清麻呂が登場。最後、道鏡にしてやったり、な場面は久々に爽快だった。次は道鏡の没落、藤原氏の再台頭へと繋がっていくのだろうか。

  • ついに和気清麻呂の登場!
    「宇佐八幡神託事件」での清麻呂がすごくかっこよかった!

  • 2012-109
    出だしから悲しい始まり。
    嶋足の恋の結末がこんな形になるなんて悲しすぎる。
    道鏡の失脚までを書く3巻。

  • 第三弾は恵美押勝が倒された後に急速に力をつけた道教と嶋足、天命との戦い。様々な策を凝らして道教を倒して蝦夷を守ろうとする天命、朝廷に位を与えられて自由に動けないながらも武士の男気で意思を貫いていく嶋足。それらをとりまく蝦夷の武者や内裏の登場人物が時代の流れの中でめまぐるしく動く。ストーリー展開の面白さと迫力は作者の文章力、構成力のすごさ。第4弾の文庫化が待たれる。

  • 平泉などを舞台とした作品です。

  • 日本の歴史の中にも、悪僧はいるもんだね。自分はこんな人物に成りたくないです。

  • 飽きてきたところだったのですが、最期の道鏡失脚のくだりはわくわく・どきどきでした!!

  • いきなり悲しいシーンから始まった3巻目です。なんとか道鏡に一矢報いることができたというところでしょうか...。続けて4巻目にいきますが、仕事の本やビジネス書と並行でなので読書のペースが遅いです。

  • 「天命篇」は嶋足達対弓削道鏡という内容でしたね。
    テンポがあって、一気に読み終わりました。
    これから、道鏡の権勢がどの様に衰退していって、藤原氏が盛り返してくるのか楽しみです。

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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