利休にたずねよ (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569675466

作品紹介・あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  •  特に歴史好きというわけではない私でも、ハマってしまうその物語に、完全に魅了されました。
     実在した稀代の茶人・千利休とは何者だったのか? 史実とフィクションを見事に融合させ、人間・利休の崇高さ、人となりに迫る名作でした!

     本書には、構成上の大きな特徴があります。
    ①秀吉の命により、利休が切腹する場面から話が始まり、70歳から19歳へと時を遡る展開であること
    ② 様々な人物が、利休を客観的に語る複数視点で物語が展開すること

     ①について、利休がなぜ切腹を受け入れたのか? 美の追求に命を賭した理由は? という疑問に答えるため、歩んで来た轍を振り返り逆に辿って行くことで、茶人としてだけだなく人間としての利休の原点に迫ろうとしたのではないでしょうか。
     加えて、冒頭の利休が殺したという高麗の女性、形見の緑釉の香合の謎が、最後まで読み手を引き込むミステリー要素も、功を奏している気がします。

     ②について、美の求道者と崇められる利休の多面的な要素を、多くの人物の視点で多角的に語ることで、良くも悪くも利休の実像に限りなく近づいている気がします。
     ただ、利休自身の心理描写は多くなく、余白を残している点も味わい深いと思いました。

     利休の「侘び」「寂び」の世界と秀吉の「雅び」の世界の対比、利休の生き様を通した人間の心の光と闇の複雑さなど、深い精神性に圧倒されました。
     歴史・時代ものはちょっと‥という方にも、声を大にしておすすめします。読まなきゃ損です!

  • 歴史ものはほとんど読んだことがないのですが、フォロアーさんの書評を読んで、すごく興味がわきました。
    読んで良かった!! ありがとうございます!!

    利休の美に対する執念ともいえる追究と自負。茶の湯に感じさせる生命力。その根底に潜む緑釉の香合と美しい高麗の女の謎。時間を遡りながら徐々に明らかになっていく。
    利休の人柄も周囲の一人一人の嫉妬と羨望の混じった話で明らかになっていく。
    利休を疎ましく思い、切腹を命じた秀吉だが、時間を遡れば、少なからず理解しあえていた時があったように思えた。
    最後まで読んで、切腹した利休や緑釉の香合を手にした宗恩の気持ちに思いふけりながら、また最初の利休が切腹する朝の話を読み返した。
    「あの日、女に茶を飲ませた。あれからだ、利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまったのは。」
    利休の切腹は秀吉の機嫌を損ねたためだが、憤慨しつつも利休はそれを望んでいたのではと思ってしまった。
    利休にたずねても、はぐらかされるだろうなぁ。

    • ピザまんさん
      「本とコ」さん、こんばんは◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠
      レビューすごく参考にさせていただきました。ありがとうございました。
      そうなんですよ。...
      「本とコ」さん、こんばんは◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠
      レビューすごく参考にさせていただきました。ありがとうございました。
      そうなんですよ。時代ものも、歴史ものも面白そうでも、読み切る自信がなかったんですよね(⁠。⁠•́⁠︿⁠•̀⁠。⁠)

      2024/01/21
    • shihoさん
      ピザまんさん、こんにちは。
      以前たまたま利休に触れた本を読んだことがあったので、今回書評拝読してとても面白そうだな〜!と興味が湧きました。是...
      ピザまんさん、こんにちは。
      以前たまたま利休に触れた本を読んだことがあったので、今回書評拝読してとても面白そうだな〜!と興味が湧きました。是非読んでみようと思います☺︎
      いつもありがとうございます。
      2024/01/23
    • ピザまんさん
      shihoさん、こんばんは◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠
      こちらこそありがとうございます
      いろいろな人物の視点から利休が語られていて面白かった...
      shihoさん、こんばんは◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠
      こちらこそありがとうございます
      いろいろな人物の視点から利休が語られていて面白かったですよ~(^^♪
      2024/01/23
  • 茶の湯?武士のお気楽な愉しみ?ぐらいのアホな認識しか有りませんでした。ハズカシイ。
    千利休という名前は皆が知っているけど、さてどんな人だったのかと問われると困ってしまう人物。
    最後の日から周りの人の視点で遡り、浮き上がってくる利休。
    作品内でもありましたが、「三毒の焔」を誰よりも熱く持ち、「美」へと昇華させたモノはなにか?
    戦国から安土桃山時代はどうしても武将に目が向いてしまいますが、こんなにも熱くて魅力的な人物の物語を読めて感謝です。
    利休にたずねることを、じっくりと考えてみたいと思います。

  • 己の美学だけで天下一の茶頭へと昇りつめた千利休。しかし、その鋭さ故秀吉に疎まれ、切腹を命じられる。
    肌身離さず持っていた緑釉の香合の秘密とは。研ぎ澄まされた感性と気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、いったいどのようなものだったのか。


    茶道を大成し、茶聖と呼ばれた茶人・千利休と、彼を取り巻く人々について、千利休切腹の当日から19歳の若かりし頃まで、時代を逆行する形で描く時代小説です。
    市川海老蔵さん主演で映画化もされた一作。

    時代をさかのぼって書いていくことにより、後の(読者的には事前に読んだ)行動・言動に背景や伏線が生まれたり、逆により謎を際立たせたりしているのが上手いです。
    ひりつくような美への執着や希求、それに対する周囲の妬みや羨望。どんな逆境でも折れない美学と自尊心。文章からも張り詰めた美しさを感じます。
    タイトルである「利休にたずねよ」。読み終わった後、利休にいったい何をたずねたいかは人によって変わるかと思いますが、私はその美への情熱の根源をたずねてみたい。

    あまり歴史に詳しくはないのですが、それでも読みやすく、一人の伝記やヒューマンドラマ、恋愛小説としても興味深く読めました。

  • 利休の切腹という重いテーマと、時間が逆回しということで読み終わるまで長い時間が掛かってしまった。
    何を利休に尋ねるのか、読む人によって違うように思う。私の場合は利休が肌身離さず持っている「緑釉の香合」の秘密のように思う。また、秀吉が欲しいと言った香合を拒否して溝が深まったように書かれている。切腹を免れるためには、香合を渡すしかなさそうであり、それは耐えられないのだろう。
    敵味方が入り乱れて利休とのエピソードが語られ、美に対する利休の孤高の姿が峻厳に描かれていて息苦しさも感じてしまった。

  • 利休にたずねよ 山本兼一著

    読了しました。

    1.本書の魅力
    ①利休と利休を取り巻く人々の回想録
    ②①には豊臣秀吉のみならず、織田信長も含まれること。
    ③切腹の前夜から、利休が茶に没頭した19歳までを遡ること。

    2.本書における利休の魅力
    美に対する完璧主義者、それゆえの自尊心とそれを妬む、ひがむ外部との対立を描いてます。
    さらに、それに屈しない利休の志が読み取れることです。

    3.本書からの名言 利休による、
    「形あるものはすべて壊れる。壊れるから美しい。」

    「美しさは誤魔化しが効かない。」

    『ひとは誰しも毒を持っている。 
     毒あればこそ生きる力もわいてくる。
     肝心なのは、毒をいかに志まで高めるか?
     高きを目指して貪り、凡庸であることに怒り、
     愚かなまでに励めばいかがか?」

    4.こんな方におすすめ
    少し違った嗜好の小説を読みたい方。
    歴史好きな人には、もちろんおすすめです。

    _ _ _
    読書中。
    山本さん 初読書です。

    2020年読了ベスト10に入ります。

    文体から、空気が、怒気が、そしてやんごとなき閑寂が襲ってきます。

    いま、季節は秋。
    そして、外は雨が降りしきり、室内にも雨音が訪れています。
    そんな雰囲気で読むには、あまりに適切な文学の世界です。

  •  色気のある役者さんが好きだ。
    でも、自分の中ではセクシーとは明らかに違う。もっと根源的なもの。魂の輝き、美学。一朝一夕になるものではない。
     遠い人で、会えはしないけど、利休はきっと、眩いようなオーラを放つ人だったのだろう。
     素晴らしい恋愛は男性も女性も輝かしくその人を彩る。
     人は必ず死ぬ。人そのものが、変化していく芸術なのだ。

  • この前の加藤廣さんの「利休の闇」に続いて山本兼一さんの「利休にたずねよ」を読む。同時によむと同じ題材がアプローチの仕方でこのように表現が変わると実感。

    特にこの「利休にたずねよ」は秀逸。利休の切腹から、秀吉との前日、細川忠興との十五日前、古溪宗陳との十六日前と遡っていく。
    この時間を巻き戻し、そして幾多の人との出会いと関りによって、利休という一人の茶人を際立させていく・・・上手いですな。

    そうです、一人の人を語る時、ある人はその人のすべてを知るものではなくやはり一部なんですよね。ジグソーパズルを埋めていくように周りから見つめることによって、最後にすべてが見える。

    凄いですなあ、この構成力、それに委ねて突き進む読後感は快感でおます。


  • とても面白かった! 長らく積読してた本から引っ張り出した第140回直木賞作品。

    千利休の切腹の日からスタートし、時間を遡る構成。
    利休が肌身離さず持っていた「緑釉の香合」の秘密。
    「鋭利な才覚を休ませろ」= 利休 の法号を帝から賜ったことが、予言しているように、秀吉に才能を疎まれて嫉妬されてもなお、美への信念を曲げず貫く生き様。

    お茶の心得が全くない私ですが、大いに楽しめました。「美しさには、絶対的な法則がある」印象的な一文。利休に何をたずねたいか?…宮部みゆきの解説も面白い。

    私は何をたずねるか? 今夜 考えながら就寝しよう。

  • 出版からはや10年、ようやく読み終えましたが、やはり直木賞受賞作は伊達じゃない。

    千利休の生涯を描いた作品を描いた作品は巻頭から利久がまさに切腹しようとするシーンから始まる。

    そして、彼の人生を遡る物語が始まる。

    勝手なイメージとして僧侶のようなイメージを持っていた。

    故に、妻がいて子供がいることに最初に驚きがあった。

    千家、茶道の宗家として歴史が続いている中で、それは当然のことだった。

    千利休...茶道に生きた人というイメージしかなかったが、秀吉との確執、美の追求、詫び寂、そして愛する女。

    茶人としての生き様ではなく、1人の男としての利休の生涯が描かれていました。

    説明
    内容紹介
    女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。解説は作家の宮部みゆき氏。
    内容(「BOOK」データベースより)
    女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    山本/兼一
    1956年(昭和31年)、京都市生まれ。同志社大学卒業後、出版社勤務、フリーランスのライターを経て作家になる。2002年、『戦国秘録 白鷹伝』(祥伝社)でデビュー。2004年、『火天の城』(文藝春秋)で第11回松本清張賞を受賞。2009年、『利休にたずねよ』(PHP研究所)で第140回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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