独立記念日 (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569679136

作品紹介・あらすじ

恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失…。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 前へ進むために、独立という名の
    新しい一歩を踏み出した
    24名の女性たちの、前進リレー。

    1人1人に人生があり、
    辛いことも悲しいこともある中で
    それでも、
    少しのきっかけで
    新しい自分に出会いに行く。
    素敵な女性たちの物語でした。

    最後、もーーっと長くて良いので
    何らかの繋がりで(若干無理やりでもよいから)
    全員を集めてくれたらもっと嬉しかったなぁ。

    今日もまた、好きな本が出来ました。

    • mei2catさん
      読みたいと思いました。素敵なご紹介、ありがとうございました✨
      読みたいと思いました。素敵なご紹介、ありがとうございました✨
      2023/01/18
    • キョーさん
      とんでもないです!!

      お口に合えば嬉しいです!

      もし良ければレビューお願いします!
      とんでもないです!!

      お口に合えば嬉しいです!

      もし良ければレビューお願いします!
      2023/01/18
  • 単行本が「インディペンデンス・デイ」、そして改題した文庫本が「独立記念日」というこの作品。

    ”独立記念日”と聞いてすぐに思い浮かぶのは7月4日、毎年盛大に祝われる米国の”独立記念日”。大英帝国の植民地だった同国の人々が立ち上がり、”自由と平等”の理想を掲げて独立宣言をした日。そんな特別な日と同じ名前を書名に冠したこの作品で描かれるのは、日常の24の異なるシーンを生きる女性の姿でした。あなたも、私も、何かしらに拘束されながら、日常を生きていると思います。それは、会社であったり、地域のコミュニティであったり、もしくは身近な家族の存在もある意味であなたを、私を拘束し続けていると言えるでしょう。しかし、それを拘束と捉えるか、大切な絆と捉えるかによって、そこから受ける印象は大きく変わってきます。また逆に今まで大切な絆と思っていたものが何らかのきっかけで、拘束されている、呪縛だと印象が変わることだってあると思います。その時、あなたならその状況とどのように対峙していくでしょうか。もっと大きな呪縛、例えば社会的地位などによって、じっと我慢を続けるという選択肢を敢えて選ぶ場合もあるでしょう。でも一方で、未来への一歩を踏み出すために、勇気を出して、自身の人生をかけて、思い切って立ち上がる、そんな決断を下すことも一つの選択肢だと思います。この作品は、そんな後者の選択肢を選んだ女性のそれまでと、その決断の瞬間が描かれていきます。そう、この作品はそんな女性たちが”独立宣言”をする物語、「独立記念日」を描いた物語です。

    24もの短編から構成されるこの作品ですが、そのそれぞれが完全に独立しているというわけではありません。一つの短編で脇役として登場した人物、もしくはホテルなどの施設が、違う短編では、その人物が主人公となる、その施設が舞台となる、といった感じで緩く連作短編のように繋がっていきます。しかし、文庫本で360ページあるといっても、24も短編があると、一編あたりでは15ページ程度の分量しかなく、どうしても深く入り込むような読書にはなり得ません。この辺り、人によっては物足りないと感じるのはやむを得ないことだと思います。かく言う私も正直なところを言えば、短編ごとの当たり外れがかなり大きい短編集だと感じました。まあ、24もあると全てが傑作とはいかないのは、これはやむを得ないとも思います。

    そんな中で連作短編として興味を惹かれたのは、〈幸せの青くもない鳥〉〈独立記念日〉〈まぶしい窓〉〈いつか、鐘を鳴らす日〉の四つが繋がる連作短編でした。その中でも書名にもなっている〈独立記念日〉には、原田さんがこの作品にかける思いが強く感じられました。

    『ああ、自由になりたいなあ。今日も、そんなふうに思ってしまった』という中山百合子。『好きになった人には奥さんがいた』、『養育費を勝ち取るのと引き換えに、彼との関係も終わりになった』という二十五歳の百合子は『娘とふたりで生きていくという人生を』選びます。『故郷の父と母は、ひたすら嘆き、怒り、悲しんだ』と『娘が生まれても、故郷に連れ帰ることは許されなかった』と完全に二人だけの生活を送る百合子。『新卒で入った憧れの大手書店』を辞め『派遣の仕事と、駅前の無認可の託児所をみつけ、なんとか生活の基盤を作った』百合子。『気がつけば、大好きだった読書もすっかり忘れ去っているような生活』を送ります。そして『このさき一生、自由に生きていくことなんか許されないんだ』と覚悟する百合子は『がむしゃらに働き、育児し、生きて』いきます。『ああ、自由になりたいなあ』と満員電車に揺られながら思う百合子。でも一方で『自由って、なんだろう』とも考えます。そんなある日、託児所で娘を迎えるも『私の顔を見たとたん、娘の真子は声を放って泣き出した』という状況。いつまでも不機嫌が続く真子。『私が、逃がしてしまったから。真子の宝物、いちばんの友だち、オカメインコの「トコ」を』というその理由。『トコが来てくれて、母子ふたりきりでときに息が詰まりそうだった部屋にあたたかな灯りが点ったようだった』というその存在が消えてしまった中山家。『ささやかな幸せが、逃げていってしまったような気分だった』と感じる百合子。うつらうつらとする百合子は『ジユウヲモトメテ、ソラヘトビタッタンデス』とトコが語りかける夢を見ます。それを『私自身の化身』だと思う百合子。そんな翌週の金曜日、『ポストに一枚のちらし』を見つけます。『トコちゃんという名の、幸せの青くもない鳥、預かっています』。翌日、そのお宅を訪問する母と娘。そんな二人を出迎える優しい面々。そんな中、百合子は自分の悩み、苦しみを彼らに打ち明けます。そして…と展開するこの短編。先の見えない苦しみの日々、せっかく掴みかけた幸せの象徴にまで逃げられてしまった絶望感の中で、『自由』とは何か、『自由になりたい』とはどういうことなのか、その答えを手にする百合子の姿が、短いながらもとても印象深く描かれていた好編だと思いました。

    『会社とか家族とか恋愛とか、現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公』というこの作品。私たちは、何かしら拘束されながら生きていくしかない、寄りかかり、寄りかかられしながら生きていくしかない、それが人間社会というものなのだと思います。そんな日々の暮らしの中で、何かに悩み、何らかの苦しみの中にいる時、対岸を見て『ただの川原なのに妙にまぶしく』素晴らしい世界がそこにあるように感じることがあります。『どんなにがんばっても向こう岸には行けないんだよなあ』と思う憧れの世界。でも漠然とした憧れだけで、そんな向こう岸に渡ったとしても、今度は逆に元いた側の景色が『その空はなつかしい色に染まって見えた。おんなじ空なのに、なぜだろう、あっちの空のほうがおだやかで、やさしい色に包まれているような気がした』と、結局元いた場所の方が良かったと感じる結果が待っているかもしれません。その苦しみの原因、何が拘束、何に呪縛されているのかという点を見誤ると、それは単にその場から逃げただけになるからだと思います。単に今いる場所、境遇を抜け出すということではなく、その置かれた現実に逃げないでしっかりと向き合うこと、そしてその置かれている現実に自身の中で何かしらの区切りをつけること、それによって過去と決別し、未来への一歩を新たに踏み出していく機会とする、それこそがこの作品の24の物語でそれぞれの主人公たちがなしえていった『独立する』ということなんだと思います。そして、その決断をした日こそが、その人にとっての「独立記念日」になる、そんな風に思いました。

    悲しいこと、苦しいことに区切りをつけたそれぞれの短編の主人公たち。その区切りの先に描かれるそれぞれの結末は、とても前向きに、力強く歩みを進める女性たちの笑顔に彩られていました。二百数十年前に、一歩を踏み出した米国の人々の行動は、その先へと続く時代の大きな転換点となりました。人が長い人生を生きていく中では、そんな何らかの区切り、転換点が必要とされる場面がきっと訪れるのだと思います。そんな”小さな独立”がその人のそれからの人生を支えていく、作っていく、そして彩っていく、そんなことを感じた作品でした。

  • なんかもう原田マハさんばっかり読んでますね

    海外ミステリ、海外ミステリ、原田マハさん、海外ミステリ、今野敏さん、海外ミステリ…みたいな本棚になってしまった…ま、いいか(いいのかい!)

    そして本作は24の短編集となっておりどれも女性が主人公で脇役として出てきた女性が次の短編の主人公という仕掛けになっています
    (仕掛けはもうひとつありますがネタバレになるので内緒です)

    どうやら女性がいろいろなことがらから独立するというのが全体のテーマっぽいんですがいまいちピンと来ませんでした
    それは自分が男性だからなのか、共感性が低いからなのかはわかりません!

    ということなので女性の方たちのレビューを読んでみようっと

  • 「独立記念日」の章で鳥肌がヤバ。すごい本。
    先日、成人の日でこの本はそんな成人する方々にプレゼントするにはピッタリな本。
    大好きなゴッホの装丁。
    「花咲くアーモンドの枝」=「新しい命の誕生」「再生」ピッタリじゃん。
    人と人との繋がりも、なんて素敵なんだ。

  • 超短編集。

    いや、短編は本当ダメ(>_<)
    苦手でどうしても好きじゃない。。。

    でも借りてしまったからな。読むか。。。
    そんな感じで前半戦。


    やっぱりダメだ。
    直ぐに主人公が変わるから、今読んだ短編がどんな話だったのか直ぐに忘れてしまう(T-T)
    私には短編を読みこなす能力が無いのだろうな。。。


    なんて凹んだりもしながら1日時間のある時に読み続け、何とか読了。

    それでもこの本の中には、働くお母さん、子育てするお母さん、働く女性、恋する女性、様々な気持ちがギュっと纏められていた。

    そのいくつかにしっかり感情移入できたし、原田先生の美しい文章にはやっぱり心掴まれる。

    短編だけど悪くないんだなぁ〜(*^^*)

  • 構成はよくできているとは思うのだけれど、24章はちょっと多いと私には感じられた。

    全部の章ではないが、その章の主人公の周囲の人物が割と若くしてバンバン亡くなる設定が、あまり好きじゃない。

  • かっこ良いとかそういう事ではなくて一歩先に進んでみる事。確かでもないし、考えても答えははっきりとはしていなくても自分がそう思えたら今日は私の独立記念日になる。みなそうやって人生で何回も独立記念日を迎えているのだなと思うと今度の自分の独立記念日はいつ、何からなんだろうかと考える。

  • 原田マハさんの作品を読むのは、この「独立記念日」で何冊目になるのだろう?

    画家等芸術家たちの史実や活躍した時代背景を緻密に確認し、生活した街や地域についての現地取材を行い、それらに関する参考文献を丹念に調べ上げ、人の心を打つ創作に仕上げられる作品の数々は他に類を見ない傑作群であることは間違いない。その他にも、ほんわかしたファンタジー的な物語、コミカルだけど「うん、うん」と頷きながら泣けてしまう物語、そして少しだけその素顔が見えそうなエッセイなど、変幻自在にストーリーを紡いでいく原田さん。

    様々なジャンルの作品の中で、それら各分野の特色を生かしつつも、様々なストーリー展開の中で読者の心や感情を鷲掴みにしていく。

    とにかく原田さんは人の感情をコントロールするツボを的確に把握し、自在に操る術を身に着けておられる。なかなか「喜怒哀楽」という一言では表現が難しい。楽しい、清々しい、爽快、悲しい、腹立たしい、イライラする、じれったい、暗い、、、様々な感情が原田さんの文章を読むと、ガッツリと掴まれてグラグラと揺り動かされてしまう。もう本当に悲しいまでに私の感情は「あっちへ、こっちへ」と原田さんの思うがままに打ちのめされてしまう。

    この「独立記念日」は24 のエピソードで構成されているが、一話一話に込められたストーリーに基づいて、エピソード毎に異なった感情が揺さぶられる。原田さんの様々な「感情コントロール術」によって、エピソード毎に「ガツン」とやられてしまった。

    作品の時代としては、まだスマホが行き渡っておらず、携帯全盛の頃。読みながら携帯の話が出てくると、そうだったんだよな!と頷きながら、涙腺が刺激されてしまう。

    読み終えてみると24回以上も様々な感情を弄ばれてしまったように感じる。さすが原田さんです。

  • 図書館本

    少しほっこりする短編集

  • 24篇からなる短篇集。
    いずれも女性が主人公で、前の物語で脇役として登場する人が、次の物語で主人公になっていたり、緩やかな繋がりがある。

    「会社とか家族とか恋愛とか、現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集」とは、本文中で語られていること。
    「自由になる」ということは、ややこしいいろんな悩みや苦しみから「いかに独立するか」ということ、という文章が印象に残った。私も独立した大人でありたい。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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