- PHP研究所 (2008年7月3日発売)
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感想 : 4件
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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784569687988
作品紹介・あらすじ
夏休みにぼくはブロック塀に向かってボール投げをしていた。大魔球を投げたつもりが、塀を越えて家のガラスを割ってしまった。そこで出会ったのが、じっちゃ先生だった。▼じっちゃ先生は前に学校の先生をしていたそうだ。おじいさん先生だから、ぼくはこうよぶことにした。それからじっちゃ先生は、ぼくがガラスの弁償代としてあげた100円でふたつの鉢植えを買ってきた。どっちの花も枯れそうだったけど、じっちゃ先生は、枯らさない競争をしようと言った。そして、しあわせの花1号、2号と名前をつけた。▼じっちゃ先生は、カブトムシも触れないし、キャッチボールもできない。山登りの時はぼくがお尻を押してあげた。魚釣りも初めてだと言った。でも、じっちゃ先生からもいろんなことを教えてもらった――。▼仲の悪い両親と暮らし、学校ではいじめられている健太。じっちゃ先生との出会いによって成長していく姿を描いた夏の物語。小学校高学年から。
感想・レビュー・書評
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東京から引っ越してきた主人公は、東京でも引っ越し先でもどうもいじめられている様子。
一人で壁当てをしていたところ、誤ってボールがそれて「じっちゃ先生」の家のガラスを割ってしまう。
仲の悪い両親、いじめっ子のことなどは表向き解決していないように見えるが、家でも学校でもない第三の場所を手に入れた主人公はきっとこの先大丈夫でしょう、という感触が残るラスト。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
じっちゃ先生と僕のひと夏の物語です。
転校を繰り返し、行く先々でいじめにあい、
家庭では両親の仲があまりよくない。
そんな僕は一人、壁に向かってボール投げをしていた。
そのボールでガラスを割ってしまい、
そこからじっちゃ先生との交流が始まる。
どちらも宮沢賢治が好きという気共通点を持ち、
世代を超えて深まっていく交流が素敵な作品だと思う。
また、いじめっこに仕返ししようとするのを諭す
じっちゃ先生の言葉に感動しました。
せっかく世話をして生き返った花を犬にあげてしまうところも
健太君の成長が見られます。 -
近所のブロック塀でひとりボール投げをしていた小学生の健太。そのボールでガラスを割ってしまい、その家の老人と知り合う。
お詫びにおこづかい325円とカブトムシを持っていくが、おじいさんはカブトムシが苦手なようだ。国語の先生をしていたとでじっちゃ先生と呼ぶようになり、無くなった自分のじっちゃを思い出しながら、話したり散歩するようになる。ある日じっちゃ先生が枯れそうな2つの鉢植えの花を買ってきて、二人でそれぞれ育てることにするが・・・
優しい少年と宮沢賢治を研究していたじっちゃ先生とのやさしい心の交流があり、とても素敵な作品です。 -
健太は父の転勤で転校を繰り返す小学生。
行く先々でいじめに遭い、家庭では両親の仲があまり良くないかわいそうな少年です。
夏休み、健太が一人で壁に向かいボールを投げてたら、手が滑って壁の向こう側の家のガラスを割ってしまいました。
「ストラ、イーク」壁の向こうから聞こえてきたのは、おじいさんの声。
この時から健太とじっちゃ先生の長くて短い夏休みが始まったのでした。
おじいさんは実は、大学の国文学の先生で、宮沢賢治を研究していました。
健太も賢治のお話が好きでした。
物語の中で健太は、いじめっ子たちに仕返しをすると宣言します。
しかしじっちゃ先生は
「人を憎む気持ちというものは炎のようなものだ。憎む相手ではなく、自分自身を燃やしてしまう」
と健太を諭しました。
賢治は「みんなむかしからのきょうだいなのだから/けっしてひとりをいのってはいけない」
と『青森挽歌』で歌っています。
「みんなにやさしくしてあげよう」という気持ちが賢治の中心にあります。(本文より)
みんながこの思いやりの気持ちを持てるようになったらいいな、自分からでもそうなりたいな、と思わせてくれる物語でした。
著者プロフィール
本田有明の作品
