- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569690735
感想・レビュー・書評
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本能寺の変関連の諸説の中で、一番説得力を感じる。陰謀論は朝廷にしても足利義昭にしてもイエズス会にしても無理がある。主犯なら変後の対応がまず過ぎる。シンプルに明智光秀単独犯。重臣斎藤利三と長宗我部氏の関係の深さと信長の四国政策の転換、明智と稲葉氏との斎藤と那波の帰属を巡る確執に原因を求める桐野氏の論はわかりやすい。一見、一回転して昔に戻った感もあるが、主な原因を怨恨とするより説得力がある。斎藤利三の遺族の多くを長宗我部氏が保護しているのも両者の関係がただの遠い親戚ではなかったことを傍証している。個人的には斎藤利三を筆頭とする家臣団の激発を明智光秀が押さえ込めなくなったのではないかと思っている。秀吉や光秀、滝川一益らと、彼らに仕えた陪臣では信長への忠誠心に差があったと思う。
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55点。本書は決して本能寺の変を劇的なものに仕立てる内容でも、黒幕を暴くものでも、光秀が起こした本能寺の変を義戦化するようなものでもなく、極めてスタンダードな手法で史料を集め解析し書き上げられた一冊といえる。
新たに発見されたという光秀書状はちょっぴり興味深かった。
なんだかんだいっても根本は、この人黒幕とか好きで、そこから出発してんだろうなぁ、と。
昔はいろんな説をとなえてた人みたいだけど、過去の自著作を、あれは議論の枠組み自体に無理があった、とか論証の不十分な面があったとか、潔いとこがなんか好きです。 -
本能寺の変の原因に迫る学術書。
以前著者は朝廷黒幕説を主張していたが、今回それを覆し、信長の四国政策の転換に伴う織田家内での光秀の地位の低下を謀反の原因とし、その主導的役割を果たしたのが明智家の重臣であり、かつ長宗我部元親の義兄でもある斎藤利三(以前信長に別件で自刃を命じられた事もあった)とする。
さらに、新たに発見された、変の3日前に光秀が山陰の国人に宛てた書状(この発見を本書の目玉にしている)の内容から、3日前の時点では謀反は決心していなかったとも主張。
ただ、書状については、その内容だけで謀反の意思はその時点で無かったとは到底言えないし、著者が黒幕好きなのは分かるが、重臣とは言え家臣が主君を謀反に導いたというのもいきすぎだろう。
四国政策の転換云々より、それも含めて長年かけて生じた信長との亀裂が原因で、隙あらば謀反を考えていた光秀に、絶好の機会が到来し主君を討った考えるのが妥当だと思う。