〈ポストモダン〉とは何だったのか: 1983-2007 (PHP新書 462)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569692425

作品紹介・あらすじ

1983年、当時二〇代であった浅田彰の『構造と力』がベストセラーになり、フランス現代思想を源流にもつポストモダン思想が日本でもてはやされた。しかし、ニューアカデミズムと呼ばれたその思想は、相対主義の烙印を押され、まもなく世間一般から忘れられてしまう。ニューアカは一時の流行にすぎなかったのか?じつは、成熟した日本社会の見取図を描ける唯一の思想として、まったく古びていないのでは?浅田彰、柄谷行人、東浩紀、福田和也…日本におけるポストモダン思想の潮流を再検討する。

感想・レビュー・書評

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  • PHP新書って新書の中ではいまいち信用がおけないような気がしてあまり手に取ることがないのですが、これはタイトルが気に入って読みました。
    しかし著者紹介欄に書いてある経歴らしきものが学歴のみ、著者名で検索してもこの本しかヒットしないという、覆面作家なのか、PHP新書らしい(?)胡散臭さは担保されています。
    内容はマルクス、ニーチェ、フロイトを軸にラカンやハイデガーなどを中心に語るオーソドックスな解説で入門書らしい構成でした。

  • 主に日本におけるポストモダンの思想史について解説している。

    終盤は話題があちこちに飛んでやや散漫な印象があり、また心理学や統計に対する認識はそれほど単純なものではないと思う(もちろん著者は分かった上であえてそういう認識を示していると思うが)。

    ただ浅田彰をはじめ、主要な思想家は網羅されており、ポストモダンの思想史を知る上では参考になる。

  • ポストモダンなるものを深く理解しようとすれば、より専門的な(新書ではない)書物に当たる必要があろう。そもそも「ポストモダン」を言葉としてしか理解できていない者―すなわち自分のような者―が、まずポストモダンについて概観するには適当な内容である。
    ポストモダンが気になりだした端緒は、ポストモダンを代表する一人としての東浩紀が気になったことにある。宮台真司などとネット上で繰り広げた対談などを、しばしば興奮しつつむさぼり読んでいた。そこで絶えず登場する「ポストモダン」という言葉に自然と関心を持ったのも、当然だったかもしれない。しかし、ネットなどでポストモダンという言葉を調べてみても、どうもその実体はつかめず、深い霧の向こうにある言葉だと長らく思ってきた。
    この本は、その意味でタイトルに惹かれて読んだものである。いきなり専門書を読み、理解する自信などなかったからだ。結局深い理解には至っていないが、そこに到達するには新書一冊分の内容では到底無理であることは理解できた。そして、東浩紀が使った「動物的」や「郵便的」といった言葉の意味も、その概要は理解できたと思う。
    フランス現代思想を牽引してきた著名な哲学者を源流とし、ポストモダニズムを標榜してきた思想の流れをとりあえずつかんでおくには、手ごろな新書である。しばしば著者自身の考え方が入るので、ニュートラルな視点でポストモダンを概観するのはやや難しい印象があるが、入門書としての新書の役割を考えれば所与の目的は達していると考えられる。
    「人間は、言葉を受け入れる代わりに、存在を一部放棄し」ている、というのが人間の条件とあった。つまり言葉を媒介することが条件づけられた人間は、直接的にむき出しの現実と向き合えない。オタク社会が跳梁跋扈している現代を見ると、その主張にも頷ける。

  • フランス現代思想と、ニューアカデミズム以降の日本のポストモダン思想について、ざっくりとした解説をおこなうとともに、「消費社会のあだ花」に尽きないポストモダン思想の意義について論じている本です。

    柄谷行人の批評における「美学」の欠如の遠因を精神分析の「転移」を避けていることに求めたり、東浩紀のサブカルチャー論を批判して「悪しき意味でのポストモダン」を特徴づける「動物」を乗り越える可能性をさぐったりと、著者自身の独自の考えもある程度示されています。

    著者は本書の「はじめに」で、「わかりやすさ」には本質的なものがうしなわれる危険性があることに注意を向けていますが、基本的には新書らしい「わかりやすさ」がある程度実現されているといってよいと思います。ただ、新書一冊のなかでポストモダン思想を乱暴に概観し、著者独自の考察も展開するというのは、やはり無理があったのではないかという気がしないでもありません。消費社会というぬるま湯に浸ることに安住するような「悪しき意味でのポストモダン」から脱却する道を求めようとする著者の意図には共感できますが、残念ながらその議論が十分説得的に語られているようには思えませんでした。

  • 新書のカンタンさとニオイがデカめの文字からあふれ出す、ポストモダン――っつーか日本とフランスの現代思想をこき混ぜた感じでお手軽に読める。ポストモダンなるものをよく知らないのでそんな印象になるが、斜め読みするのには良い。

    ブックガイドも章末にあることだし、入門書らしいと言えば入門書らしいが、少しまじめに取り組みたいならばもう少し詳しい解説のあるものが良いか。少しく冗長、少しく著者の趣味が入りすぎている印象。とりあえず傍線を引くっつーよりも冗長で趣味成分多めの部分を網掛けしてもう少し内容を圧縮できそう。情報を取ると思って読めば自然斜めになる。

  • [ 内容 ]
    1983年、当時二〇代であった浅田彰の『構造と力』がベストセラーになり、フランス現代思想を源流にもつポストモダン思想が日本でもてはやされた。
    しかし、ニューアカデミズムと呼ばれたその思想は、相対主義の烙印を押され、まもなく世間一般から忘れられてしまう。
    ニューアカは一時の流行にすぎなかったのか?
    じつは、成熟した日本社会の見取図を描ける唯一の思想として、まったく古びていないのでは?
    浅田彰、柄谷行人、東浩紀、福田和也…日本におけるポストモダン思想の潮流を再検討する。

    [ 目次 ]
    第1章 回想する(一九八三年の思想;終焉をめぐって)
    第2章 摘要する(フランス現代史のおさらい;ファーストインパクトとしての浅田彰;柄谷行人とシトたち;セカンドインパクトとしての東浩紀)
    第3章 主体の壊乱(社会学と心理学の隆盛;ラカンはわからん?;ナショナリスト福田和也)
    第4章 結論(スキゾ対動物)
    現代思想をいまの視点から再チャート化する。

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ポストモダン批判本かと思いきや、日本ポストモダン回顧本でした。
    特定世代のすっごく狭い限定された嗜好へ一時期耽溺した人には、とても刺さる回顧本だとは、思います。

    筆者あとがき「昔NHK・FM『サウンドストリート』で坂本龍一の新しい曲を聴いた次の日の朝は、普段の何でもないアスファルトの通学路が鮮やかに輝いて見えていた…テープのウォークマンで坂本龍一の曲を聴きながら『構造と力』を読んでいた」人の共感を得るであろう、やたらニッチなガイドブック。

    まあ年寄り以外は読まなくてもいいと思います。

  • 日本でいうと浅田彰の『構造と力』以来のポストモダン思想の日本での受容と衰退を軸として、そこに影響を与えた海外の思想(マルクス、ハイデガー、フロイト、ニーチェからラカン、フーコー、デリダ、ジジェクといったところ)と、日本の主な登場人物(浅田彰、柄谷行人、東浩紀)についてごく簡単に解説しています。

    個別事項の感想では、柄谷行人への批判として、暴力の隠蔽と美学の欠如を挙げていますが、これは著者の期待とずれであって、批判として的を射たものであれかは疑問があります。

    東浩紀の初期の仕事への賞賛は少しおおげさなような気がしますが、フランス思想の専門家から見ると素晴らしい仕事なのかもしれません。ただ、浅田彰をファーストインパクトとして、それに対するセカンドインパクトと位置付けるのは肌感覚として正しくないように思います。なお東浩紀の最近のアニメやポップアートへの傾倒については批判的です。

    意外なところでは福田和也の評価も高いです。何となく食わずきらいでしたが、そこまで言うのであれば代表作から読んでみましょうかね、という気にはなります。

    全般的に読みやすいですが、著者自身も何度か言い訳しているように乱暴に要約しているところもあり、注意が必要かもしれません。ただ、あらためてポストモダンが現在に与える影響は少なく、「何だったのか」と思わず言ってしまう気分にはなりますね。個人の読書体験からは、フーコーや柄谷行人は今でも読む価値があると思っていますが。

  • 読みなおします

  • 20090301浦安中央図書館

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