すべては音楽から生まれる 脳とシューベルト (PHP新書)

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  • PHP研究所
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レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569696249

作品紹介・あらすじ

音楽はあらゆる芸術をつかさどる。そればかりではない。生命原理と創造性の本質にも通じているのだ。わたしたちはみな楽器であり、音楽家である。脳の中では、常に交響曲のような働きが起こっている。耳をすませば、世界を満たす豊饒な旋律が聴こえてくるだろう。そして人生とは、自分だけのハーモニーを奏でることなのだ。シューベルトをはじめ、モーツァルト、ベートーヴェン、ウェーバー、ワーグナーetc.かつて「未完成」との印象的な出会いをした脳科学者が自らの体験をもとに語り誘う、音楽の新たなる地平。

感想・レビュー・書評

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  •  音楽にも造詣が深い脳科学者による、刺激的な音楽論である。

     音楽が脳に与える影響を脳科学的見地から分析した本かな、と期待して読んだのだが、その面での記述はごく一部でしかなかった。
     とはいえ、期待外れだったわけではない。脳科学うんぬんはとりあえず脇に置いて、単純に音楽論として読んでも示唆に富んでいる。(本書にもその一部が何度か引用されている)小林秀雄の『モオツァルト』を彷彿とさせる部分もある。

     一言でいえば、これは脳科学者ならではの視点から綴られた音楽讃歌である。音楽という芸術がいかに素晴らしいものであるかを、著者は飽かず語っている。ちょっと大げさすぎるのではないかという表現までちりばめて。たとえば――。
     
    《本当の感動を知っている人は、強い。生きていく上で、迷わない。揺るがない。折れない。くじけない。
     音楽は、そんな座標軸になり得る。音楽の最上のものを知っているということは、他のなにものにも代えがたい強い基盤を自分に与えてくれるのだ》

     また、音楽にかぎらず、人生万般に通ずる真理を語る至言もちりばめられている。たとえば、シューベルトの音楽について語ったくだりには、こんな一節がある。
     
    《人間の感受性を深めるのは、優越感よりも劣等感ではないだろうか。
     優越感ほど人を油断させて、つまらなくするものはない》

     最後の章を丸ごと割いて、ルネ・マルタン(音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」のプロデューサー)と著者の対談が掲載されている。この対談もなかなかの読み応え。 メモしておきたいようないい言葉の連打なのだ。たとえば――。
     
    《私にとって音楽とは、最も美しい言語なのです(マルタン氏の発言)》
      
    《脳の中の神経細胞であるニューロンの働きは、交響曲を奏でているような全体像を持っているともいえます。つまりそれは、一千億のニューロンが、ある法則とともに微妙に変化しながらそれぞれのタイミングで活動しているので、たとえば、一つひとつの働きに音を与えたとしたら、その重なりはシンフォニーのようになるだろう、という意味です。
     ですから、脳の中に音楽が入ってくることによって、もともと脳内にある「音楽」と共鳴を起こし、いろんなものが鳴り響いてくる、といった感覚があるのでしょう。つまり、ある音楽を聴いても、それを自分の脳の中のシンフォニーとどれくらい共鳴させることができるかによって、感動の度合いが変わってくると私は考えています(むろん茂木氏の発言)》

     言及されている音楽の多くがクラシックなので、私は門外漢なのがちょっと残念。茂木氏はクラシック以外の音楽も幅広く聴くそうなので、次はロックやジャズについてがっちり論じた著作を出してほしい。 

  • 脳科学者による音楽哲学論と言ったところか。

    第5章はルネ・マルタン氏との対談
    ルネ・マルタンシしの言葉
    「ライブというのは、最も美しく、最もいい経験だと思います。なぜなら、アーティストとと言うのは不思議な存在で、これから演奏を始めようという時、自分の目の前にいる人たちを知ろうとするのですね。会場の聴衆を把握しようとする。・・・(中略)・・・。ですから、『音楽を聴く』ということは、非常に能動的な行為だと言えます。演奏家には演奏するというアクションがあり、観客には演奏を聞くというアクションがある。これこそが、生のコンサートの豊かさであり、力であると私は考えています。」

  • マッチングCDもとてもよかったです。

  • 音楽がいかに人にとって大切なものかということが書かれています。理論とか技術よりも、もっと音楽という不思議なものの本質を捉えている気がします。

  • 新書

  • 1章 音楽は微笑む(私の中に楽器がある―シューベルト/交響曲第八番「未完成」
    人生の絶対的な座標軸 ほか)
    第2章 音楽との出会い(あの静かな没我の様子―R.シュトラウス/歌劇「エレクトラ」
    「知りたい」という気持ち ほか)
    第3章 音楽と創造力(まるで一つの啓示のように
    モーツァルトとザルツブルク ほか)
    第4章 音楽のように生きる(日々と音楽―ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」
    知らない自分との対面 ほか)
    第5章 特別対談 「音楽の力」―ルネ・マルタン×茂木健一郎(ルネ・マルタン印象記―茂木健一郎
    本物の「美」と出会える場「ラ・フォル・ジュルネ」 ほか)

  • 音楽はすべての芸術をつかさどる、最も生命原理に近い根幹にかかわるものである。脳内の活動がシンフォニーのようなもの。シューベルトの温かさ。そんなことが書かれている。ラフォルジュルネなる音楽イベントを、その主催者と著者の対談を通してこの本で知った。

  • つまらなくて途中で挫折。脳科学者の本ということで音楽を脳科学で解説してくれるのかと思いきや、著者の個人的の好みや思い出ばなしでブログレベル。ファンなら楽しいのかもしれないが、初読ではつらい。しらんがな、という感想。この方の他の本もそんなレベルなら読まない、と思わせる本。と思ったら、レビューも全般低くて納得。

  • 音楽にはその場だけの衝動があるのは痛烈に感じたことがある。練習の最中に涙を流してしまったり、ステージの上で練習してきたこととは違うことを無意識にやったりした。
    あのときの興奮は忘れられない。

    臨界を超える音楽〜ウェーバー/歌劇《魔弾の射手》
    本番で彼女が起こしたハプニングが衝撃的だった。最終幕、悪魔の奸計に陥った主人公が危機を脱し、恋人アガーテとの結婚を許されるハッピーエンド。フィナーレである〈神をたたえよ〉のコーラスで、即興的に、譜面より一オクターヴ上の音で「ハァーーッ」と歌い切ったのだ。

    心清く、罪なく生きる者は、
    父なる神の、情けを受けん!

  • 茂木さんの音楽観をがっつり知ってしまった。シューベルトかぁ…と思っていたら(まったくなじみがない)、この本を読んでいる数日間、なぜかシューベルトを聴く事が多かった!人生ってこんな偶然重なるもの?シューベルトという新しいアンテナが生まれただけ?茂木さんならではのお話で面白かったな。マルタンとの対談も。

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著者プロフィール

脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)『脳を活かす勉強法』(PHP文庫)など、著書多数。1962年、東京生まれ。

「2021年 『10年後の世界を生き抜く教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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