- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569697734
作品紹介・あらすじ
世界でもっとも利用され、過去のどの会社とも比較にならない膨大な量の情報を扱っているグーグル社。検索連動型広告という新しいビジネスモデルによって、時価総額二六兆円の大企業となったグーグルは、世界中の情報を支配することで、世の常識とルールを破壊しつづけている。テレビ、CM業界、新聞、ケータイ、パソコン…。創業十年の一企業が日本型社会システムの根幹を大きく揺るがそうとしているのだ。私たちの身近な世界は一体どう変わるのか?創造的破壊の現場から新しい社会像を展望する。
感想・レビュー・書評
-
徳島大の工学部で学び松下電器やアップルでエンジニアとして働いた経験を持つ経営コンサルタントの竹内氏が、21世紀に入って急成長を続ける検索アプリの世界最大手「グーグル」のビジネスモデルとその野望について考察する。冒頭にもあるように、「検索」ではなく「広告」で儲けながら世界の情報を支配するグーグルが、日本型社会システムの根幹を揺るがしつつある現在の状況を読み解く。日本の広告産業を長年に渡り牛耳ってきた新聞社やテレビ局などのメディア、さらにはバブル後の不況にも関わらず高収益を上げ続ける電通や博報堂などの広告会社において、従来からの旧態然としたビジネスが崩壊すると危険視。さらには20世紀のITモンスターであるマイクロソフト社と比較して、「自社のソフトを使いたいなら金よこせ」と言うマイクロソフトとは対照的に「当社の検索サービス、どうぞタダでお使い下さい」と囁くグーグルの圧倒的な優位に戦慄が走る。グーグルの創立10年目の2008年に書かれた本だが、全く古さを感じさせない内容。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
旧来のメディアと新しいメディアの対立の構図と、その裏の情報が安易に扱えることの怖さについて述べた本。
目次
<blockquote>1章 グーグルはあなたをどう「操る」のか―グーグルvsプライバシー
2章 グーグルはいつ没落し始めるのか―グーグル像vsグーグルの現実
3章 つまらないテレビをグーグルは変えるか―グーグルvsテレビ
4章 高収入で独占的な業界ほど破滅が近い―グーグルvsCM業界
5章 携帯電話になにかが入りなにかが出ていく―グーグルvs携帯電話
6章 新聞社がつぎつぎ倒産する日―グーグルvs新聞
7章 「日本型企業」マイクロソフトの落日―グーグルvsマイクロソフト
8章 グーグル後に勝つ日本の技術―グーグルvs次世代</blockquote>
googleとは、この本では新しいメディアの代表として扱われている。無論、他にも新しいメディア、要はweb2.0と言われたメディアは多数あるのだが、特にgoogleがずば抜けているのだろう、多くの本で語られる企業でもある。
本屋でさーっと関連本を探すだけでgoogleに関する研究本や批評本や、解説本がたくさんある。日本で検索といえば、Yahoo!Japanがメジャーだが、一方でgoogleを使う人もおおい。「ググる」という言葉一つをとっても、浸透度は計り知れない。
最初はネット検索の一本槍だったgoogleだが、検索連動広告をはじめ、gmail、googleカレンダー、googleマップ、そして何かとお騒がせなストリートビュー。
利便性の高いサービスを打ち出しており、勢いは増す。
一方、旧来のメディアは、その勢いに広告という収入源を削られ、苦戦している。
TVは未だに日本では大きなメディアだ。それは電波法という日本を包む大きな守りがあるからだ。
<blockquote>日本では、電波法第四条で、テレビ局をつくろうとするものは総理大臣の認可を受けなければならないことになっている。
</blockquote>
しかし……。
<blockquote>番組をつくらない人が最高の給料を取り、実際の製作者は最低の給料に甘んじさせられている日本のテレビ業界のゆがんだ構造は、搾取と呼ぶべきだろう。搾取、捏造、劣悪な労働条件、巨額の広告費はすべてつながっている。
</blockquote>
よく統制されていたシステムも、影の部分が大きくなり、不信のきっかけとなっている。
それは崩壊のきっかけだろうか?
いや、前兆は昔からあった。表に出さなかっただけなのだ。
<blockquote>三〇分番組もCM時間を差し引くと、実質の番組内容は二五分もない。それをCM明けのシーンの繰り返しでさらに引き伸ばして「水増し三〇分」にしているのではないかと感じていたのは私だけではないはずだ。
</blockquote>
著者はこれを「番組のざるそば化」と呼ぶ。まさに今のTVがつまんないのはざるそばのような、実質量を少なくする代わりに見かけだけを増やしたものが溢れているからだろう。
とはいえ、自分、最近TV見てないですけどね……。
その時間あたりの情報量がすくなく、時間だけを浪費する事が嫌になってきたから……。
さて、新聞も同じように苦しい。
新聞の場合は、<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%8D%E8%B2%A9%E5%88%B6%E5%BA%A6" target="_blank">再販制度</a>で守られているし、配達のネットワークが各家庭までしっかりとはりめぐらされている。しかし、昨今は毎日・朝日ともに広告収入が減り、毎日の変態記事騒動の様に、同じようにネットから叩かれる。一時は危機ではないかとも言われたが、今のところはなんとかなっているようだ。
さらに、旧来のメディアとは言ってるが、要はweb2.0社会と相容れないもの、つまり、「<a href="http://mediamarker.net/u/kotaro/?asin=4480062858" target="_blank">ウェブ進化論</a>」で言われるあちら側の世界でないものが古くなっているのだ。
ウィンドウズOSとオフィスが屋台骨のマイクロソフトもその考えの中では旧来のメディアなのだ。
その「こちらvsあちら」の構図をバックに引くと、非常に今のメディアの変貌の全容が見えてくる。
しかし、この流れがそのまま旧来のメディアを絶滅させるほどでもなく……新しいメディアも左団扇とは言えない。
googleはすごい。だけど……
<blockquote>なのに二〇〇八年に入ってからも、グーグルの売上のほとんどは、検索連動広告からだ。投資家やアナリストはもちろん、世界中が「グーグルは検索以外で儲かる新製品が出せるのか」と凝視している。世界最高の頭脳が、自由な環境で、最高の待遇で働いている。あとは研究成果をお金に結びつけることができるかどうかだ。</blockquote>
しかし、営利企業の宿命、そこは利益を出さねばならぬこと。どんなに「邪悪でない」ことを主張しようとも、利益を出すことには背に腹は替えられぬ。マイクロソフトのアコギな売り方が正しいとも言えないが……。
<blockquote>EQリーダーの弱点は、部下が能力の手前で足踏みをすると、その状況に妥協してしまうことである。世にないものを生み出したり、独創的な製品をつくるのに必要なのは、共感や納得ではない。能力の限界の手前でうろついている部下をどなり散らして背中を蹴飛ばす鬼軍曹的リーダーだ。
</blockquote>
優秀な才能があっても、利益を生み出す仕組みが作れない企業はいつしかなくなってしまう。
しかし、この利益を生み出す仕組みは簡単に作れるものではない。
EQ、つまり心の知能を持って共感と納得で人をまとめあげることはできる。googleは知の最先端というイメージを作り上げた。優秀な技術者と共感し、働くことに納得できる環境を作った。
まさに「隗より始めよ」だろう。優秀な技術者にとっては、googleに行けばよりよい扱いをしてもらえる。そんな会社を作ってしまった。
もう一つ。最後に残っている根っこの問題がある。
<blockquote>インターネットには光と影の部分があり、その上で行われるサービスであるSNSやブログなども、やはり光と影を持つ。便利や楽しさを提供する光の部分がある一方で、弱い立場の人を無責任に誹謗中傷する影の部分も存在する。気に入らない意見というだけでたたきつぶそうとする影もある。</blockquote>
しかしこれは新しいメディアだけの問題ではない。
先ほどちらっと「日本は電波法でテレビ局には総理大臣の認可が必要」ということを抜き出したが、続きに、政府がテレビ局に対し、不都合な情報を統制する目的で「許認可カード」をちらつかせたくだりが出てきている。抜き出し部分は、その一部である。
<blockquote>田英夫氏は「テレビ局が問題を起こしたときに、とくに権力にとって都合の悪いこと、困ること、そうした報道などで問題を起こしたときには、総理大臣の権限で再免許を与えないことができるのです。これは世界の民主的先進国にありえない、たいへん恥ずかしいことだと思います」と問題を指摘している。</blockquote>
この問題そのものは、この本ではここまでに留まっているので、他の本で追加研究したいなと思う。
しかし、情報を大衆に知らせるという面の功罪、その複雑さは根っこにころがったままなのではないだろうか?
メディアがどのように変わるのか、予測はつかない。
けれども、個々人が情報に対して光と影の両面を知ることは大事だと思う。グーグルもTVも、あくまで情報を手に入れるためのツールにすぎない。使い方次第、システムの組み方次第で、光の面も出るし、影の面もでる。影が強ければ批判されて、使われなくなる。
特に日本は保守的な風土で、新しいメディアに対しての抵抗感が強い。
しかし、嫌うだけでは何も生み出さない。古いシステムが未来永劫そのままではありえないことは、この本にひとつの例えとして載っている。
<blockquote>あるトリが強風に導かれてたどり着いた小さな島で、環境に適応して驚くべき進化を遂げる。その島は天敵がいないうえ、食べ物が木の上ではなく地面にいくらでも落ちていたのだ。トリは飛ぶ必要がなくなって、羽は邪魔になり、小さく退化した。こうして最適化したトリは、快適な環境で繁殖していった。
しかしある日、島の外から捕食動物がやってきた。とたんにこのトリは絶滅する。飛んで逃げることができなかったのだ。</blockquote>
非常に胸に刺さる例えだと思う。実際、環境が変わったときにうまく適応するのは難しい。 -
Googleは引き続きwatchしていきたい。既存のサービスとの対比で書かれていて分かり易い。
-
刺激なタイトルほどの内容ではなかったが・・・
現状をかなり正確に捉えている。
後半が蛇足的で若干苦しい面もないではないのだが。
考えさせられるのは確かである。 -
タイトルは一種のイロニーで、グーグルの独創性が旧態依然とした日本の広告・新聞からジャーナリズム、メーカーを破壊させるだろう、というのが趣旨。大いに賛同するし、IT世界の趨勢を知る入門書としても大いに勉強になった。
-
ネット関連で5年前の本で今更ではあるのですが、今読んでみても事態がそんなに大きく変わっていないような気がするのである。
-
グーグルがそのビジネス範囲を広げていくことで衝突する問題やその対処を、グーグルVS○○という形で章を分けて説明している。
最も興味深かったのが、グーグルと中国政府との交渉である。
グーグルは「邪悪にならない」という理想を掲げているが、中国政府は言論の自由を認めないため、圧力による検閲に屈してしまった。
つまし、中国共産党により、政府に不利な発言やサイトは検索エンジンに引っかからないように人為的に操作されてしまったのである。
グーグルの理想と現実の問題はここにある。
中国政府に従わなければ、中国でのシェアを拡大できないため、自分達の「邪悪でない」という理想は死守できなかった。
しかし、いまや「グーグル八分」という言葉があるほど
ネット社会ではグーグルの権力はすさまじいものになっている。人類の叡智がどんどん入社してくるグーグルに果て無き理想の追求を期待したい。 -
グーグルによって何が変わったか?
→運用コストが安いネットというインフラを使い、媒体と広告主を直接結びつける中抜きにより、広告の低価格化と効果の最大化を実現
また、携帯業界のオープン化も進む -
つまらない。
決めつけ感がはんぱないし、そこに根拠もしめされてない。
読んでいて、ほんとか!?といらいらする。