- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569699530
作品紹介・あらすじ
仕事を休んでリハビリがてらに海外旅行や転職活動に励む「うつ病セレブ」、その穴埋めで必死に働きつづけて心の病になった「うつ病難民」。格差はうつ病にもおよんでいる。安易に診断書が出され、腫れ物に触るかのように右往左往する会社に、同僚たちはシラケぎみ。はたして本人にとっても、この風潮は望ましいことなのか?新しいタイプのうつ病が広がるなか、ほんとうに苦しんでいる患者には理解や援助の手が行き渡らず、一方でうつ病と言えばなんでも許される社会。その不自然な構造と心理を読み解く。
感想・レビュー・書評
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うつ病という言葉が膾炙した中で、意識的・無意識に、それを患うことによる疾病利得を求める人々がいる一方、組織や社会の中で、そうした病気への適切な治療をとることが許されず、追い込まれている人々がいる問題を扱う。一般的に言ううつ病というカテゴリに、様々な心理的状態が一緒くたにされてしまっていることが問題であり、例えば身体症状を明確に伴わないような気分の落ち込みについては、認知療法を行うことで改善の可能性があるにも関わらず、DSMの機械的な判断で、二週間以上の気分の落ち込みを即うつ病と診断してしまうことが、要因として挙がっている。ただ、全体として、うつ病でない人は病気ではないのだから、と斬るような内容ではなく,むしろ病気であるにせよそうでないにせよ、自身の精神的苦痛が何によってもたらされているのかを明確にし、正しい治療や自己努力をできるようになるべきである、としている。
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私の嫌いなタイプの人間がきっちり記されていてスッキリした。すぐ、「鬱だわ〜」とか「病む〜」と言う人、迷惑です。ちゃんとしっかり悩みなさい!・・・と自分にも戒める。
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“本当の”うつ病はすごく重い病気なだけに、
注意が必要なものなのだが、
診断基準の画一化によって、それまではうつ病とされて
こなかった、もしくは別の診断名がつけられていたような人も
「うつ病」と診断される傾向が強いことに警鐘を鳴らしている。
また、いわゆる「自称うつ病」の人たちの心理にも迫っている。
「うつ」と自分では言っているけれど、
どうもそうは見えないなぁ…という人が周囲にいる方や、
その人と付き合いを継続しなければならない方、お勧めします。 -
本は、自分で自分のことを「うつ病」と言いたがる人たちの話から始まります。仕事に行くと落ち込んだりするんだけれど、ハワイに遊びに行くと元気いっぱいでストレスが発散できる。「私はうつなの」と言って同情を集めたがったりする。「うつ病」であることを自分のアイデンティティにしたがる・・・・そういう感じの人たち。
本を読み進みながら、きっと「うつってそんなもんじゃない。ちゃんとした診断基準があり、それに合う人がうつ病であり、そういう人には薬を処方する。そうじゃない人は単なる甘え・・・」みたいなストーリー展開なのかな・・・と期待していたのですが、なんと、私の想像とはまったく異なり、うつ病の診断とは、次の症状のうち、5つ以上のものが2週間以上続いていれば「うつ病」である、といった、超シンプルなものでした。
1.ほぼ一日中の抑うつの気分
2.ほとんど一日中またはほとんど毎日の、すべての活動への興味、喜びの著しい減退
3.食事療法をしていないのに、著しい体重減少、または増加、または毎日の食欲の減退または増加
4.ほとんど毎日の不眠または過眠
5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止
6.ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7.ほとんど毎日の無価値観または過剰であるか不適切な罪責感
8.思考力や集中力の減退、または決断困難がほぼ毎日認められる
9.死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図または自殺するためのはっきりとした計画
昔は内因性、心因性、外因性などといって、その原因を探ってから診断していたものが、最近はこれで一律に診断しちゃうんだそうです。それゆえ、本当に重いうつ病で、1メートル先のものを取ることも大変なほど無気力になっている人であろうが、仕事をしている間は落ち込んでいるけれど、ハワイに行っている間は大丈夫だった・・というような人まで同じ病気に扱われちゃったりするから困るのよね・・・という議論が続いていました。
そして、最近、精神的な病気を理由に会社を休む人が増えているが、それは必ずしもストレスが昔より多くなっているからそういう人が増えているということではなく、本当に重い病気の人は昔と同じくらいしかいなくて、それ以上に単に今まで以上にそういう理由で休むことが簡単になっているから増えているんじゃないか・・・といったことが説明されていました。
それくらい、「診断書があれば休んでもいいって人事部が言ってましたから」といって診断書をせがみ、「うつ病」と言われたら喜ぶような人が増えている現状が臨床現場にあるということなんでしょう。
精神科医の中ではジョークとして「うつ病と診断されて喜ぶ人はうつ病ではなく、そう言われてショックを受ける人がうつ病である」といううつ病の診断基準がある・・・なんていう話も載っていました。
なるほど・・・
この本を読むまでに勝手に思っていた「うつ病」の定義と随分違いました。
本の感想はというと、確かに知らなかった情報を得ることは出来たので、目的は達成しましたが、中身は超書き下ろし的でした。こんなんで本にしちゃっていいんだ・・・と、中身の密度に関してはかなり疑問・・・。ま、読みやすかったので、1時間くらいで流し読みする分にはいいかも・・・です。 -
多方面の角度からうつを見ることができた。
精神エネルギーの低下の度合いを、本人の発言を聞いて医師が判断するという面で、精神科の治療だと感じた。
外科・内科にしてもなんらかの症状を機器を介してでも見ることができるのであり、この点で大きく異なる。
うつ病の人とそうでない人はやはり医師でないと分からないので、現実的ではないが、医師と当事者の周囲の者がなんらかのかたちで接触して説明を受けなければ、本書で挙げる問題は解決しないのではないか。 -
以前に比べて、「うつ病」という病気が市民権を得てきている今日において、
その弊害について述べられています。
問題点としては、うつ病を判断する判断基準が、
「二週間以上、気分の落ち込みが続いて意欲や集中力も激しく低下している」という点にあり、
そのため我慢や、悩むことを避け、安易にうつ病と診断されることで
現状の状況から逃げ出す人が増えているということです。
その点については納得できたのですが、
うつ病の人は自分がうつ病というアイデンティティを持ちたがっている
という点には正直、そうは思えませんでした。
また、うつ病と診断されて、
落ち込むのが本当のうつ病の人、喜ぶのがうつ病ではない人というのは
感覚的に分かる気がしました。 -
この本で言いたいことはとってもよくわかる。
なんでもかんでも精神の領域に持ち込んでいいのかい?って話だよな。
でも本当に辛い人もいるのもわかる。
ある人が言ってたけど、本当にいい精神科医っていうのは、
「私って心の病なのかも…」
って思った人が病院に行った時に
「あ、私って病気じゃなかったんだ」
って思って何事もなく帰らせることができる人らしいよ。なるほど。 -
内容紹介抜粋
「新しいタイプのうつ病が広がるなか、ほんとうに苦しんでいる患者には理解や援助の手が行き渡らず、一方でうつ病と言えばなんでも許される社会。
その不自然な構造と心理を読み解く。」
ネットの中にもいるな・・このタイプ。と思ってしまった本でした><
p.s同時に借りた岩波明氏著「心に狂いが生じるとき」では、上記の作家をやや懸念した1節もあり、安部首相のくだり、はこちらの方が納得・・
精神科医の中でも色々な考えがあるものですね。。
医師に振り回される患者が慢性化するはず・・・
3
無意識に うつであるという特許(守られる、真面目な人レッテル)を得ることが流
行っている
医者も治療法が確立してないから休養診断書をほいほいだす
一方で真にうつな人は社会的死と考えてうつ休養診断書をやめてという
二種類のうつなひとのジレンマ -
全ての社会人に読んでもらいたい本。
「うつ」とひとことで言っても、いろいろある。
うつ病セレブ
うつ病難民
わかっているようでわかってない
メンタルヘルスは奥深い。
でも、もう見て見ぬふりは絶対にいけない。 -
本書終章「ほんとうにうつ病でくるしんでいる人のために」で紹介される、自己を客観的に、7つに分けて問題を考える方法は、セルフコントロール以外にも使い道があるような気がする。例えば物語を作る時などだ。
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最近増えてきた「私はうつ」と言いたがる人たち。その人たちの心理とは?本当の鬱病とは?周りの人はどう対処すればいい?そんなことを書いた一冊。
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私が常々疑問に感じていた事を著者も疑問に思っていたらしい。
目に見える怪我や病気と違い、目に見えず本人の自己申告に基づいて治療するしかない病気だからこそ生まれる厄介な問題だと思う。
それにしても現場の人間にも線引きが難しいのに、一般人が線引きなどできるのか?
結局それぞれの主観で判断するしかないのだろうか? -
読んでいて呆れるお話。
かなり乱暴に要約してしまうと、
「うつ病」の診断書をずる〜く利用する人たちが増えてきていて、
もー、みんなモンスター化してるよ〜
本当に治療が必要な人が治療をうけられないような状況になっているよ〜
っていうお話。
朝青龍にしたって、
皇太子妃にしたって、
「心の病気」っていうだけで周りは腫れ物に触るような扱い。
「そうじゃないんだよ。うつ病って、”心の風邪”なんだよ。フツウの病気なんだよ。」
って筆者は言っています。
たしかにまぁー‥
香山リカの本って、
まとまらない、っていうか、
書きたいことつらつらーっと書いただけ感は否めないんですけど、
だけどお話の内容がおもしろいからいいんです。
「精神科ウラ話」的なお話、聞くの好きだからいいんです。
しかし何科であれ「本業:お医者さん」な人が書いた本が大好き。
あぁー‥あたしもお医者さんになりたいです‥ -
著名な精神科医、香山リカが、昨今のうつ病患者の増加について斬った本。
内容に目新しさはないけれど、専門家でありつつメディアにコメンテーターとして登場することも多い著者だけに、読みやすくてわかりやすい。
「セレブうつ」(うつの休暇を使って海外旅行に行っちゃうようなうつ病患者。最終的にこれは本物のうつ病患者ではない、と著者は断定している)と「うつ難民」など、うつ病にも格差があるのか・・・・・としみじみしてしまった。
確かに最近、多いよな。「自分、うつ病なんだ」ってうつがステイタスになっているような人。
(だいたいプチのつくうつってなんなんだよ、と思う)
こういう人が増長するから、本当の患者が大変な思いをするんだろうな、と考えさせられた。
「病因」は問わず、「症状」だけで即、うつ、と診断してしまう、という基準についても初めて知ってびっくりした。 -
うつという概念が社会に広まり、うつそのものの幅も広くなった。うつにも色々ある。
筆者は、社会に広まったうつ病概念を、本当のうつ病と言われる「大うつ病」、躁うつ病の一種と言われる「双極性障害II型」、そして「うつ病になりたがる人たち」の3つに分けている。(ほか、パーソナリティ障害をうつと誤診するケースもある)。
その中でも「うつ病になりたがる人たち」は、うつという診断を欲し、診断書を水戸黄門の印籠のように使う。アイデンティティを求め、それを「うつで可哀想な自分」とすることで安心を得る「平凡恐怖」や、病気を申告することで心配されたり異動や休職の許可が容易に出る「疾病利得」などが挙げられており、読んでいて自分が関わってきた人にも、そのような人がいたなと思い出す。
近年では発達障害が似たような状況になっていないだろうか。もちろん、実際に苦しんでいる方がおり、治療が必要な場合も多いが、発達障害はスペクトラムであり、凸凹である。大なり小なり、全ての人に得て不得手がある。本来はそれを周囲に相談したり、理解を得ながら生活をするが、最近は安易に、伝家の宝刀のように「私は発達障害だからできない」となることが多いように感じる。
著者が指摘するように、これでは本当に治療が必要な患者が困る。悩みを悩みとして、ゆっくり時間をかけて消化したり、周りに相談ができる環境づくりが必要な気がしている。
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うつ病アイデンティティ/無意識的利用/潜在的なニーズ
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精神的な病気は、どう診断されているのか?を知れました。具体的な事例も書いてあり、納得する内容が多かったです。本当の「うつ病」がどれほど辛い病気なのか?を知る手立てにもなりました。
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おそらく「鬱の力」の前書きにあった執筆中の本とはこれのこと。
『「心の傷」は言ったもん勝ち』と訴えたかったことは同じだが、語り口はより真摯的で優しい。たしかに"鬱"に対する理解が広まることの代償に鬱であることを言い訳やある種の権益にしている風潮がないとは言い切れない。
しかし、それは時代の気分を反映したものだし、『「悩み」の正体』で著者が説いているように、そういった時代に新たに生まれた「悩み」というのもある。
一昔前なら一時的な落ち込みで済んだハズの状態と精神科医の診断が必要な鬱との境目を引くのは難しいが、十把一絡げにあなたはこっち、あなたはそっちとするわけにもいくまい。・・・・・・生き難い時代であることは確かなのだが。 -
この本を手に取った理由は、部下に元うつ病
患者がいるから。
詳細は控えるが、彼に関してワタシが相当な
時間と労力をかけているのは紛れもない事実。
本書の中には、その彼にぴったり当てはまる
内容も述べられていて、「そうそう」と相づち
を打ちながら読み進めた。
どう対処したらよいのか、という問いへの答は
なかったが、少なくともワタシと同じような
ジレンマを抱えている人が少なくないこと、
そしてワタシの認識・考え方は香山さんの
指摘とかなり近いということは分かった。